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連載

#233 #withyou ~きみとともに~

先生に押しつけられた「思いやり」 障害がある同級生との秘密

「自分でできるよ」

イラスト・しろやぎ秋吾
イラスト・しろやぎ秋吾

目次

優しさってなんだろう?小学生のときに押しつけられた、大人目線の「思いやり」に納得できなかったという思い出を語る女性がいます。イラストレーターのしろやぎ秋吾さんがマンガにしたエピソードについて、語ってくれた女性に話を聞きました。

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この企画は、インスタグラムやツイッターを中心に作品を発表している、イラストレーターのしろやぎ秋吾さん(@siroyagishugo)との共同企画です。「10代のときにしんどかったこと、どう乗り越えましたか?」とSNSでエピソードを募り、しろやぎさんがマンガ化したエピソードの中から記者が取材を進めています。
※エピソードは現在も募集中
《マンガ全編はフォトギャラリーで読むことができます》

Aくんはあくまで他の同級生と同じ

女性は会社員のしおりさん(32歳、仮名)。小学3年生のときに同じクラスになった、Aくんという男の子との忘れられない思い出があります。

右半身にまひのあったAくんは、「誰に対しても分け隔てなく話したりする、すごく優しい子」で、ボール遊びや鬼ごっこもみんなと一緒にするくらい、活発な子だったといいます。

「歩き方や日常の動作に動きづらさがあるように見えた」というAくんですが、「私も周りのみんなも、Aくんを『障害がある同級生』という捉え方はあまりしていませんでした。私にとってAくんは、あくまでも他のクラスメートと同じ存在でした」

イラスト・しろやぎ秋吾
イラスト・しろやぎ秋吾

「牛乳瓶のフタ、開けてあげて」先生からのお願い

そんなしおりさんには、Aくんとの学校生活でどうしても忘れられない出来事があります。

クラスで席替えをしたときのこと。Aくんの隣の席になったしおりさんは、担任の先生から「Aくんは牛乳瓶のフタが開けづらいから、開けてあげてね」とお願いされたといいます。
「それまでの生活を通して、正直、Aくんにそういうお手伝いが必要だという認識は先生からそう言われるまでありませんでした」

ただ、先生からのお願いを受けたことで、「開けづらいのなら手伝おう」と「先生から依頼された言葉をそのまま受け取ってしまいました」。

給食の時間になり、しおりさんはAくんに「先生から頼まれたから、牛乳瓶のフタ開けるよ」といってAくんを手伝いました。
ところがAくんは、「自分でできるよ」と一言。

「ちょっと申し訳そうに、はにかんだような表情をしていたのを覚えています。『自分でもできるのに』という感じで、ちょっと寂しそうでした」

その表情をみたとき、しおりさんは「あ、Aくんが求めているものはこれじゃなかったんだ」と思ったといいます。
「いくら友だちといっても、自分ができることを手伝われるのはイヤだったと思います。プライドが傷つくというか…」。「いま思えば、先生に頼まれたあと、Aくんに一言手伝いが必要かどうか、確認しておけばよかったなと思います」

そして2人は、次からは手伝わないこと、でも必要な手伝いはすることを約束しました。

その約束の通り、次の給食からは、しおりさんはAくんを手伝うことはしませんでした。「いらない心配とはわかりつつ、様子を見るようなことはしました」でも、Aくんは自分でフタをあけられていたため、しおりさんは「私の手伝いはいらないな」と判断していました。

イラスト・しろやぎ秋吾
イラスト・しろやぎ秋吾

「気が利かない」と叱責されたけど

そんなある日のことです。
担任の先生が、しおりさんがAくんを手伝っていないことに気付きました。すると、先生はこんな言葉でしおりさんを叱責してきたといいます。

「Aくんへの思いやりはないの?」

「気が利かない」――。

「私の記憶では、怒鳴られたという印象です。周りの子たちもこちらに注目していまししたし、私に向けられた視線を覚えています」

当時のしおりさんは「怒鳴られたショックと、私の中での優しさとはAくんの気持ちに寄り添うことだと思っていたのに…ということ、そしてAくんを巻き込んしまった、という気持ちが一気に押し寄せ、なんともいえない気分になりました」。

その様子を見ていたAくんは、しおりさんに「ごめんね」と謝ったといいます。

「Aくんも私も、何も悪くなかったのに、お互い謝りました」

ただ、そんな出来事があってからも、しおりさんは、牛乳瓶のフタは開けませんでした。「私の小さな意地と反抗だったと思います」
Aくんには「もしも先生に見つかったら、私が忘れたんだって先生に言ってね」とお願いしました。

イラスト・しろやぎ秋吾
イラスト・しろやぎ秋吾

評価下がっても納得して貫いた

一方、しおりさんの成績表には、それ以降「他者への配慮に欠ける」「周りが見えない」などといった言葉が記され、「先生には嫌われていたと思います」と振り返ります。

「でも、先生からの評価が下がったとしても、自分がしていることは間違ったことではないと思っていたので、納得して貫いていました」

「先生から見たら、Aくんは『障害のあるAくん』だったかもしれないけど、私にとってAくんは『友だちのAくん』でした。そこに認識の差があったのかもしれません」

しおりさんはこの出来事を通じて、「優しさとはなにか」を考え続けています。

「この出来事は、私の中で『本当の優しさってなんだろう?』と考えた思い出として印象に残っていて、『障害に関する出来事』としての記憶ではないんです」

ただ、障害者への配慮という点については、いまはこのように考えているといいます。
「『障害=かわいそう』だから優しくしましょうというのは聞こえがよくて、一見思いやりのようですが、時としてそれはすごく厚かましく身勝手な優しさだと思います」

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