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そういう現れ方!? 不思議なグラスに隠された国家レベルの製造技術

一度見たら、二度と忘れられない「いとおしさ」

グラスの中で、キャラクターが逆さまに浮かび上がっている……。ちょっと不思議な商品にまつわるお話です
グラスの中で、キャラクターが逆さまに浮かび上がっている……。ちょっと不思議な商品にまつわるお話です 出典: アイワ工業提供

目次

動物や季節を感じさせるモチーフを、巧みにあしらった「ガラスカップ」が、根強い人気を呼んでいます。可愛く、かつインパクト絶大な見た目に、SNS上でも話題が沸騰しているのです。海外で発展した技術を採り入れ、大きな成功を収めた、愛知県の企業を取材しました。(withnews編集部・神戸郁人)

愛くるしさとシュールさを両立

飲み物を注ぐと、ガラス製カップの内側で、天地逆さに浮かび上がるキャラクター。愛くるしさと、そこはかとないシュールさを、絶妙なバランスで兼ね備えた造形――。アイワ工業(愛知県半田市)が販売する「グッドグラス」は、見る人に忘れがたい印象を刻みます。

最大の特徴は、カップの中に、もう一枚ガラスをはめ込んだように見える「二重底」構造です。「ダブルウォールグラス」と呼ばれ、職人が手作業で作るため、ガラスの層の形状を自在に変えられます。そこで同社では、デザイン性を重視したラインナップを取りそろえてきました。

犬や猫、熊などの動物からクリスマスツリーまで、外観は実にさまざまです。2018年の発売以来、60種類近い製品を発表しています。「ハローキティ」「ミッフィー」といった人気者とコラボしたカップまで存在し、SNS上で関連画像が拡散されることもしばしば。「思わず笑顔になる」「そうやって現れるんだ……」と話題をさらってきました。

見た目が可愛いだけではありません。耐熱・耐冷性に優れたホウケイ酸ガラスを採用しており、零下20℃~120℃の環境下で使用できます。また持ち手から内層まで距離があるため、熱した液体を注ぎ入れ、そのまま手に持っても、やけどする心配がほとんどないのです。

実用性と華やかさを見事に両立した、グッドグラス。一体、どのような経緯で世に広がったのでしょうか?

「ハローキティ」のグッドグラス
「ハローキティ」のグッドグラス 出典: アイワ工業提供

台湾企業の技術協力受け大成功

1970年に創業した、アイワ工業。ガラス細工を作る会社と思いきや、実は工場などの配管工事が専門です。同社がカップを取り扱うきっかけとなったのは、海外進出を狙い、2018年に新部署を設立したことでした。

「その後、台湾経済の発展理由を知るため、社長が台湾の国際コーヒー展示会に参加しました。そこで偶然、グッドグラスのカップを見つけたんです。一目ぼれし、日本でも流通させたいという結論に至りました」。アイワ工業グッドグラスジャパン海外事業部の原山梨絵さんが振り返ります。

原山さんによると、グッドグラス(GOODGLAS)は、台湾の企業「紅琉璃(REDLIULI)」が立ち上げたブランドです。紅琉璃は1952年から、ガラスを使った伝統工芸品を製造。国内各地の職人とパイプを持ち、ダブルウォールグラス作りを一手に担ってきました。

デザイン付きダブルウォールグラスを手掛けるには、高い技術力が求められます。キャラクターの金型製作に始まり、1000℃を超える窯(かま)でのガラス溶融作業、ガラスに息を吹き込む整形など、複雑な工程を経るからです。加工の失敗時に備え、数千個単位で作る必要があるため、大量生産体制も欠かせません。

台湾には、政府がガラス産業を保護してきた歴史があり、必要なシステムが整っているといいます。そのため紅琉璃が製造、アイワ工業が日本での販売を担当する、との分業制を採っているのです。

「台湾で購入できるガラス製品は、ほぼ全て国産です。10年ほど同国に住んだのですが、外国製品を見かけたことは、ほとんどありません。そんな環境で産声を上げたのが、グッドグラスです。60種ものダブルウォールグラスを有するブランドは、他にないと思います」

ガラスの製造風景
ガラスの製造風景 出典: アイワ工業提供

割高でも根強いファンを獲得

では、どういった製品が人気なのでしょうか? 原山さんいわく、数あるカップの中でも、「しば犬シリーズ」は群を抜いているといいます。

ピンと立った両耳に、突き出た鼻。赤い首輪がチャームポイントのキャラクターは、まさに柴犬そのもの。2019年に1000個限定で売り出すと、たちまち完売しました。評判は海外にまで伝わり、米国の柴犬愛好団体から、製品を卸してほしいとの依頼が届いたそうです。

「戌(いぬ)年を迎えるのに合わせた取り組みだったのですが、想定以上の売れ行きでした。グッドグラスの知名度を高めてくれたデザインです」と原山さん。唐草模様のスカーフや、着物を身につけたものも開発し、これまで7回のバージョンアップを重ねています。

こうした意匠は、アイワ工業の担当者と、紅琉璃のデザイナーや職人が、二人三脚で決めていきます。製造時に金型から抜きやすい形状か、といった点を始め、細かく内容を検討するのです。そのため、納期が1年近くになる場合も少なくありません。

更に手仕事であることも相まって、単価は一般的なグラスよりも割高な、3千円~4千円台が主流です。しかし根強いファンが多く、過去に著名人がSNS上に製品画像をアップし、大量の注文につながったケースもありました。

「『牛乳嫌いな子どもが、グッドグラスに注いだら飲んでくれた』『食器洗い場に並べると華やぐ』と教えて下さるお客様もいらっしゃいます。背景にあるストーリーと合わせ、製品の魅力を理解して頂けているからこそと思っています」

「しば犬」のグッドグラス
「しば犬」のグッドグラス 出典: アイワ工業提供

「二重底カップの便利さ知って」

今年2月には、スウェーデンの陶芸家リサ・ラーソンさんの「猫」をプリントした新作を発売するなど、グッドグラスの人気は高まり続けています。更に今後、ガラス製のオリジナルストローなど、環境に配慮したアイテムの販売も予定しているそうです。

一連の製品に関心を持つ人々に対し、原山さんは、次のように語りました。

「二重底のカップを、まだ使ったことがない方は多いかもしれません。保温や保冷に優れ、飲み物のにおいがつきにくいなどの強みもあります。グッドグラスはもちろん、色々なブランドのものを手にとって、その便利さについて知って頂けたらうれしいですね」

グッドグラスシリーズは、首都圏の百貨店などのほか、グッドグラスジャパンのウェブサイトからも購入できます(詳しくはこちら)。
リサ・ラーソン「MIMI(ミンミ)」のグッドグラス((C)LISA LARSON)
リサ・ラーソン「MIMI(ミンミ)」のグッドグラス((C)LISA LARSON) 出典: アイワ工業提供
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