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連載

#95 #父親のモヤモヤ

“男性の育休”は「強い覚悟」が必要?意識が高い? 父親たちの思い

「3回取って6年昇給なし」の現状も……

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写真はイメージです 出典: PIXTA

目次

#父親のモヤモヤ
※クリックすると特集ページ(朝日新聞デジタル)に移ります。

男性育休の議論が進んだ2020年。少しずつではありますが、社会の意識も変わってきました。2020年を振り返る「#父親のモヤモヤ」オンラインオフ会では、参加した父親たちが自身の育休経験や職場の理解について語り合いました。
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<#父親のモヤモヤ取材班がオンラインイベントに出演します>
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法律で認められている育休

<日頃のモヤモヤや考えていることなどを自由に話す、「#父親のモヤモヤ」オンラインオフ会。ある父親は育休を検討したもののかなわず、育休取得について参加者に意見を求めました。>

Aさん:育休を年単位で取れる方がうらやましいです。育休を取られたみなさん、職場はどうだったのでしょうか。妻には申し訳ないことをしたと思っています。

<過去のオフ会にも参加し、2018年8月から第1子、第2子続けて育休を取っている中学校教諭のマサムネさんが答えました。>

マサムネさん:法律で会社員だろうと公務員だろうと育児休業は取っていいと決まっています。でも、風潮、雰囲気がある……。

<育児・介護休業法に定められている「育児休業制度」は、原則として子どもが1歳の誕生日前日まで、育児休業の取得が可能とされています。性別は関係なく、両親ともに育児休業を取得する場合は、子どもが1歳2カ月に達するまでの間の1人当たり1年間取得できる「パパ・ママ育休プラス」という制度もあります(要件あり)。事業主が育児休業の申請を拒否した場合は、法令違反に当たります。

また、厚生労働省によると、事業主が、法律で「1歳の誕生日前日」まで取れるとしている休業期間を下回る設定をしている場合も法令違反となります。違反した場合は行政指導が行われます。>
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写真はイメージです 出典: PIXTA
<同じく過去のオフ会に参加した父親で、1年4カ月ほど育休を取得したまさきさんはこう続けました。>

まさきさん:国の法律では1年取れるとありますが、会社や組織が従っているかは別の問題です。

マサムネさん:事務の担当者で理解していない人も多いと思います。私のときも、事務の人が全然知らなくて。自分で全部調べ、確認を取ってくださいと言ったらやってくれました。
でも、致し方ない部分もあります。制度を使う人がいなかったら知る由もありません。

Bさん:私の会社では、2019年に初めて取った人がいて、2020年は2人取っているようです。世の中で「男性の育休」という話が出てきたので、育休を取る人が多少出てきました。0だったのが1人、2人出てきたのは進歩だと思います。

まさきさん:僕の場合、すでに何人か育休を取った人はいましたが、長い期間取る人は少数でした。僕も会社の制度や国の制度を調べて行きました。仮に、上司が難色を示したとしたら、「会社は拒めないと法律に書いてありますよ」と言おうと思っていましたし、強い覚悟を持っていかないと取れないと思っていました。

そもそも、それはおかしいと思います。実際は周りの空気も変わってきていて、うちの会社も今では2、3ヶ月、1年取る人も増えています。僕はみんなが取るではなくて、取りたいと思った人が気軽に取れるようになってほしいと思います。

Cさん:私の会社だと育児休業を取った年は昇給対象から外されて、年をまたぐと2年間昇給対象ではなくなります。私は子どもが3人いて、今3人目の育休中ですが、6年間昇給が全くない状態でモヤモヤしています。
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写真はイメージです 出典: PIXTA

生活のメインは仕事?子育て?

<参加者の一人は、会社に育休を取るメリットを説明しないといけない社会になっていないかと問題提起しました。>

Cさん:男性が育児休業を取るメリットがありますということを探す必要がある気がしています。会社に育児をするメリットを言う必要はあるのでしょうか。子どもを育てたいから育児をしているのであって、仕事のスキルアップのために育児をしているわけではありません。

会社が生活のメインになっている気がしています。本当のメインは子育てなんじゃないかなと思うんですけど。

Bさん:会社というか社会を作っていくのは、経済と次世代が基盤にあると思います。

それを、みんな経済のことしか考えていないんですよ。1人が育休を取って会社にメリットがあるのかではなくて、会社の働き方そのものがいろんな人を入れて、いろんなアイデアを出し合って協力して作る必要がある。

その人その人の単独のメリットではなく、全体で変わっていかないといけないと上の世代を中心とした会社に伝えたいんだけど、どうしたらいいのか悩んでいます。

Aさん:一番上の上司には子どもがいなくて、真ん中の上司は奥さんが専業主婦。僕は共働き。日頃から育児のことを理解してもらえません。

コロナで在宅勤務の時間ができましたが、オンライン会議に子どもが入ってきてしまうと怒られました。会議の時間はわかっているんだから、子どもをなんとかしておけよと。

いろいろ頑張ってはみたんですけど、なかなか組織を変えることは難しい。男性が育児にコミットするのは上の世代が経験していない。そこを理解してもらうのは難しいんだろうなと。正直、今は転職も視野に入れながらやっている状況です。
 
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写真はイメージです 出典: PIXTA

母親の気持ちがわかってきた、モヤモヤしている父親たち

<オフ会の終わりには、参加者それぞれが考えていることを共有しました。>

Bさん:私の子どもは11歳です。今回、コロナで5ヶ月休校したこともあって子どもが教育を受けられなくなっても、自分は全然助けることができない。俺は一体何をしているんだ、となってしまったんですね。

父親が社会にできることはもっとあると思います。女性が仕事をしづらいと言っても、男と女のかち合いになりがちですが、母親の気持ちがわかってきた、モヤモヤしている父親たちが仲介できる立場になるのではないでしょうか。

奥さんが大変な気持ちもわかるし、会社の上の人がわからない気持ちもまあまあわかる。そこでうまく橋渡ししたいという気持ちが強くなりました。

Cさん:2021年にやりたいことが2つあります。

一つ目は、3回育休を取った経験をブログやツイッターで発信しているので、これからも続けていく。二つ目は、これからも妻と同じ時間、育児と家事を続けていきたい。

日本社会も夫婦で育児をしましょうという流れになってきていますが、育児をしていると定時で上がったり、時短勤務になったり、昇給もできない状況になってしまいます。夫婦で育児をするけども、責任ある仕事を任せてもらえるような社会になるといいなと思います。

Aさん:2020年は激動で、家族もコロナも含めいろいろあった年でした。悪いことばかりではなく、一度、家族のあり方や育児のあり方を見直せ、家庭の基盤はある程度できた年かなと思います。2021年もその部分は大事にしていきたい。

仕事面では、ずっと仕事に全力をかけてきた人と同じにはできないと思います。パフォーマンスは発揮できないかもしれないけど、育児をしたことで得たものもあると思うので、自分なりのキャリアをもう一度考えて積み重ねていきたいと思います。

まさきさん:自分が育児に関わることを「意識が高い」と思ったことはありませんが、そう思われてしまう状況が今後変わって、当たり前を作っていける当事者の一人になれるといいなと思います。

10年後15年後、みんなの生活が変化し、育児や介護だけではなくいろんな人がいる中で、いかに受け入れてチームを作ってやっていけるか。挑戦していきたいなと思いました。

マサムネさん:教育の功罪って、めちゃくちゃ重いと思うんです。教育を受けたことの価値観がベースとなって生きていくと思いますが、一番変化が遅くて、残念ながら世界でも遅れていると言われている日本の公教育に、育休を取ったという経験を軸にして少しアクセントを加えられたらと思います。

みなさんの大事なお子さんをお預かりするにあたって、社会と乖離した学校でいいんかなと思うので、よかったらみなさんも学校に言ってもらえたらと思います。外力が加わることによって変われることもありますし、内から外から協力してやっていけたら。宜しくお願いします。
 
【オフ会前編】コロナ禍だけど家族の時間は増えた 一家のだんらんを阻んでいたのは
オフ会の終わりには毎回記念撮影をしています。
オフ会の終わりには毎回記念撮影をしています。

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共働き世帯が増え、家事や育児を分かち合うようになり、「父親」もまた、モヤモヤすることがあります。それらを語り、変えようとすることは、誰にとっても生きやすい社会づくりにつながると思い、この企画は始まりました。あなたのモヤモヤ、聞かせてください。
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