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連載

#2 テツのまちからこんにちは

瀬戸内海の日差しで拝む「メトロ車両」営団時代にはなかった最新設備

段差減らし防犯カメラ「都市交通の成熟」

「く」の字に角張った形の7000系と、丸みを帯びたデザインの10000系=東京メトロ提供
「く」の字に角張った形の7000系と、丸みを帯びたデザインの10000系=東京メトロ提供

できたての地下鉄車両が、地下に「潜る」前に行われるイベントが「甲種輸送」です。2020年11月6日、JR山陽線の下松駅には東京メトロの有楽町線と副都心線に2021年から投入される新型車両「17000系」の姿がありました。瀬戸内海の日差しの中で見る東京メトロの新車両。最新の設備が施された進化を感じながら、自分の思い出もよみがえってきます。なぜなら、有楽町線は私が毎日のように使っていた路線だったからです。鉄道ファンの記者(25)が、「鉄道のまち」で見聞きした出来事をレポートします。(朝日新聞山口総局記者・高橋豪)

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#テツのまちからこんにちは
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角張りから丸みへ

11月6日午後1時24分に下松駅を出た東京メトロ17000系車両は、山陽線、東海道線を一路東へ走っていきます。しかし、制限速度が決められていたり、途中で停車を繰り返したりとそう速くは進めません。神奈川県内で東海道線を外れ、武蔵野線、常磐線と回って、東京メトロと接続している目的地のJR綾瀬駅(東京都足立区)に8日の午前2時18分着くというダイヤが組まれていました。

綾瀬駅からは綾瀬車両基地(綾瀬検車区)にて受取検査(完成検査)を経て、千代田線霞ケ関駅と有楽町線桜田門駅間にある8-9号連絡線を経由して、有楽町線副都心線の車両基地(和光検車区もしくは新木場分室)へ移動します。

今回「甲種輸送」で出荷されたのが東京メトロ有楽町線に使われる新車両だったことは、個人的にも感慨深いものでした。

高校から大学にかけて、自宅の最寄り駅があり、通学やアルバイトで使っていた思い出深い路線だったからです。

山口県に昨春転勤で来た時は、あの有楽町線の新車両をいち早く拝むことができるとは思ってもいませんでした。

ここ数年の有楽町線は、営団地下鉄時代の1974年に登場した7000系、東京メトロに社名が変わった後の2006年から使われている10000系と、それに乗り入れをしている西武鉄道、東武鉄道の車両が入り交じっていました。

7000系=東京メトロ提供
7000系=東京メトロ提供
10000系=東京メトロ提供
10000系=東京メトロ提供

「都市交通の成熟を思わせるデザイン」

2021年2月から営業運転が始まる17000系は、つぶらな瞳のようなライトが新しさを感じさせるデザインです。

全車両に車いすやベビーカーが置けるフリースペースがあり、その位置を外からわかりやすくするために側面にマークで示しています。

床面の高さを低くしてホームとの段差を減らし、ドアの床部分の端に傾斜を付けることで、バリアフリーにも配慮。車内には防犯カメラも付きました。

「細かい工夫を積み重ね繊細で完成度が高く、都市交通の成熟を思わせるデザイン」と評価され、車体を作った日立製作所とともに2020年度のグッドデザイン賞にも選ばれました。

長年活躍してきた7000系は、17000系に徐々に置き換えられていき、近い将来引退することになります。

17000系=東京メトロ提供
17000系=東京メトロ提供

ホームドアができ、発車メロディーも

私がよく使っていたのは、有楽町線でも特にラッシュ時に混雑する区間。毎日ぎゅうぎゅう詰めの電車で通い、途中駅で時間調整のために停車することもざらにありました。

降りた後のことを考えて、エスカレーターの最寄りのドアをいつも使い、最初に降りるべくドアにへばりつくような体勢で乗る方法を極めたものです。

高校に上がる2011年春ごろから、通学ルートの駅には順次ホームドアが設けられ、発車メロディーが付くようになりました。東京メトロでは早いほうでした。

各駅はもちろん、ホームごとに違う曲になっているため、方向の乗り間違いや寝過ごしは回避できます。

遅刻しそうになったことも多々あったので、必然的に朝乗るホームの曲は焦燥感をかき立てられるようになりました。逆に帰宅時に降りるホームの音は、実家に帰る時に聞いても、ほっとした気持ちになります。

今度、有楽町線で17000系に乗った時には、遠く700キロ以上離れた山口県で新車両を見られた日のことをきっと思い出すでしょう。今から楽しみです。

今週のテツ語「ホームドア」
転落・接触事故防止を主な目的にホームと列車の間に設置された仕切り。国土交通省の統計によると、2020年3月末現在、全国858駅にあります。床から天井を全て覆う「フルスクリーン」や、高さ1メートル台でドアがスライドする「可動式ホーム柵」が一般的です。ドア数が違う路線が乗り入れる駅などでは、ロープを上下させる「昇降ロープ式ホーム柵」もあり、JR西日本はふすまの様に扉の開閉幅を調節できるタイプのドアを開発しています。

 

〈テツのまちからこんにちは(#テツこん)〉2021年5月でちょうど100周年を迎える、鉄道の全国最大級の生産拠点である山口県下松(くだまつ)市の日立製作所の笠戸事業所。山口に赴任した鉄道好きの記者が「鉄道のまち」で見聞きした出来事をレポートします。

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