連載
#5 「きょうも回してる?」
全国浴場組合公認のガチャガチャ、ギミックが効いた「文化継承」の姿
いかにアカデミックな要素をフィギュアにいれていくか
日本の文化と言えば、何を思い浮かべますか?
お城、和食、アニメなど人によっては様々な答えが出てきます。この日本の文化に知る機会は、学校で日本史を勉強するとき、あるいは旅行に行ったときに文化に触れることが多いです。
今回は、ガチャガチャに「日本文化を学べる」という価値を創出した「銭湯ミニチュアコレクション」を紹介します。なんと、全国浴場組合公認の商品です。
作っているのは、大人向けのガチャガチャを作っている株式会社ケンエレファント(東京・千代田区)です。
【ケンエレファント…2012年から「ガチャガチャにミニチュアフィギュアを使った新しいジャンルを作っていこう」というコンセプトで、大手フィギュアメーカーの海洋堂とコラボ。大人向けのガチャガチャを中心に展開し、2017年からはオリジナル路線で商品を発信。】
銭湯と言えば、江戸時代から続く日本文化のひとつです。銭湯は憩いの場として、または地域のふれあいの場として、日本独自の生活文化を築いてきました。しかし、自家風呂の普及に伴う入浴者の減少や後継者問題など銭湯の数も減少しています。
厚生労働省の公衆浴場の概要によると、平成27年3月末現在の公衆浴場の営業許可施設数は2万6221施設。そのうち、公営と私営の普通浴場を合計した、いわゆる一般公衆浴場は4293施設となり、減少の一途をたどっています。
ガチャガチャを通じて、若い世代に銭湯を行くきっかけや、日本文化の銭湯を学ぶ機会を作ったのが、この商品だと言えます。
商品が9月28日に発売されて以来、銭湯でも販売されミニチュア事業部部長の青山雄二さんは「いろいろな銭湯さんがツイッターに挙げてくれています」と話します。
特徴は、なんと言っても造形のデザイン性と精巧さが秀逸な点。銭湯に行けば、おなじみの商品が忠実に再現されています。
フィギュアと違いガチャガチャだからといって妥協はしていません。
銭湯絵はもちろん、コーヒー牛乳ひとつとっても造形がしっかりしており、ギミックが効いた商品でテンションが上がります。
ちなみに、銭湯絵はやわらかなお湯から眺める富士山。
これは、日本に3人しかいないペンキ絵師の中島盛夫氏による銭湯絵を再現しています。さらに、大黒湯については、手に取ってみるとわかりますが、唐破風の屋根や入り口の暖簾(のれん)、中庭までも忠実に再現してあるんです。
この商品について青山さんは、「海洋堂さんとともに商品を作った経験が今役に立っており、本当に海洋堂さんに育ててもらいました。いかにアカデミックな要素をフィギュアにいれていくかを大事にしています」とこだわりを話します。
また、もうひとつ、この商品へのこだわりが感じられるのは、カプセルにラッピングがしてあることです。一般的なガチャガチャは、カプセルにセロハンテープが貼ってあります。しかし、今回はカプセルにラッピングをして、「カプセルギフト」として販売しました。
「コストがかかると心配されましたが、ラッピングがあるのとないとでは、『買った感』が違いますし、ギフトとしてガチャガチャをプレゼントすることもできます」(青山さん)と、ラッピングの意義を話します。
商品のラッピングひとつとっても、商品へのストーリーが浮かんでくる仕上がりになっています。
今回取材に応じてくれた青山さんは、今でも自社の売り場に行ってガチャガチャを回すほどのガチャガチャ好き。
「僕は駄菓子屋でガチャガチャを回してた世代。日常生活に当たり前のようにガチャガチャがありました。もし子どものころの僕に、大人の僕が今ガチャガチャを作っていると言ったら、嬉しすぎて泣くと思います」と話します。今後も青山さんは「『朽ちない、果てない、飽きがこない』をテーマに、10年後販売してもお客様に好かれる商品を作っていきたい」と笑っていました。
◇
「銭湯ミニチュアコレクション」のラインナップは「大黒湯(東京都足立区)」、「体重計と脱衣籠」、「マッサージ機とコーヒー牛乳」、「銭湯と銭湯湯(富士山)」、「銭湯5点セット」の全5種類。価格は1回500円。
1/7枚