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#81 #父親のモヤモヤ

母親ばかりのPTA、でも会長は…少数派の父親が感じた居心地の悪さ

PTA活動、父親の場合は「少数派」ということもモヤモヤの種に(写真はイメージです)
PTA活動、父親の場合は「少数派」ということもモヤモヤの種に(写真はイメージです) 出典: PIXTA

目次

#父親のモヤモヤ
※クリックすると特集ページ(朝日新聞デジタル)に移ります。

子どもが小学校へ入学すると、日々の子育て以外に関わりが出る一つがPTA活動です。学校とのつながりが増える一方、負担の大きさから敬遠されることもあり、父親の場合は「少数派」ということもモヤモヤの種となっています。広島県の会社員で40代の川内涼さんが小学校のPTA役員を引き受けた時は、15人のうち父親が会長以外おらず「初めは居心地が悪かったです」。「父親ももっと関わりたいのでは」と感じる場面もあったそうですが、翌年に会長を務め、次に引き継いだ時も、比率に変化は起きませんでした。「学校での子どもの様子を知れる貴重な機会でしたが、父親参加のハードルを感じました」と振り返ります。
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PTA会長は父親が「望ましい」

「本部役員に当選しました」

2018年春。5年生になる直前の長男が学校から持ち帰ってきた封筒を川内さんが開くと、次年度のPTA役員を依頼する文書が入っていました。ひとり息子の長男が通う学校では、役員希望者が定員に足りない場合、経験者などを除くPTA加入の家庭を対象としたくじ引きで選ばれる決まりです。

役員は保護者であれば、父親か母親かは問いません。「比較的スケジュールが立てやすい職場だったので、夜の会合なども参加しやすい私が役員になることにしました」と川内さん。それまで学校と関わりはありませんでしたが、幼稚園で「父親の会」に所属していたこともあり、親の活動に抵抗感はなく初めての会合に参加しました。

しかしその会合で、川内さんは驚きを隠せませんでした。役員は15人いましたが、父親が川内さんと会長だけで、ほか全員は母親だったからです。「父親の会のイメージがあったので、こんなに女性が多いとは思いませんでした」

会長になったもうひとりの父親は、前年度からの推薦でした。「会長は父親のほうが『望ましい』からだと聞きました」と川内さん。ほかの役員は同じようにくじ引きでしたが、父親の参加は川内さんだけでした。

「これから一緒に活動をするのに、ほかのメンバーからは『なんでお母さんが来ないんだろう』とはれ物に触る感じでした。『シングルファザーなのでは』という噂(うわさ)も出たようです。昼の会合など、私が行けない時はもちろん妻が参加したので、いまでは笑い話になっていますが、最初はめちゃめちゃ居心地が悪かったです」

2年間のPTA活動を振り返る川内涼さん
2年間のPTA活動を振り返る川内涼さん

お金には換えられない達成感も

初会合では、年間の担当決めも行われました。負担の軽いものから担当が決まっていき、気まずさから様子をうかがっていた川内さんは最後に残ったソフトボール大会の運営担当に。地区の小学校が輪番で受け持っており、秋の大会に向けて主催者として準備をするもので、負担が大きい役割でした。

実施計画書を作るところから始まり、参加チームや他校との交流など、活動は多岐に広がります。初めは、ほかの役員にも協力を求めた川内さんでしたが、「何で私たちも手伝わないといけないの」と反発が多かったそうです。「無理にお願いするよりは、自分ですべてやった方が早いと思いました」とその後は誰にも頼らず、仕事の合間を縫って取り組みを進めました。

それでも、PTA活動を続けるうちに打ち解ける役員が増え、準備を手伝う人も出てきました。そして迎えたソフトボール大会は、好天にも恵まれ成功。「仕事とは違う人のつながりができ、お金には換えられない達成感を味わいました」

父親たちも学校の手伝いをしたいと思ってる?

翌年、川内さんは要請を受けてPTA会長を引き受けました。今度も川内さん以外は全員母親でしたが、ソフトボール大会を運営したメンバーも残り、前年のような気まずさはありませんでした。

「父親も本当は学校の手伝いをしたいのでは」と思う出来事もあったと言います。それは、9月にあった運動会でのテント張りでした。

それまでは学校側が運動会前日の準備に合わせて、保護者が観覧するテントも設置していましたが、PTA主導で準備することに。全校児童の家庭に協力を呼びかけるプリントを配布すると、100人ほどが集まりました。そのうち、父親が6~7割でした。

「手伝いをした人たちから場所取りができるメリットはありましたが、準備は平日の午後。予定を調整してくれる人がこんなにも多いことに、校長先生も驚いていました。PTAの活動にも興味を持ってくれた人もいました」

しかし、川内さんがバトンを渡した次の代も、役員の担い手は会長ともう1人以外は母親でした。川内さんは2年間の活動を通じて、学校や地域の様子が身近になり、子育てにもプラスになったと振り返りますが、父親参加のハードルはいまだ高いと言います。

PTA会長退任後に贈られた感謝状
PTA会長退任後に贈られた感謝状

「やっぱり、少数派というイメージが大きな壁です。普段から関わってもらえれば、印象も変わると思うのですが、奥さんから『面倒なことに参加する必要ない』と言われた人もいました。PTAという名前だけで敬遠する人もいるんだと思います」

「私の代では実現しませんでしたが、他校には父親も積極的なPTAもありました。比率が増えれば、私が最初に感じたモヤモヤも少なくなると思いますし、活動の幅が広がります。最後は子どものためにもなると思うので、父親の参加が当たり前になる存在になってほしいと願っています」

「父親の参加が当たり前になるPTAになってほしい」と変わる川内さん
「父親の参加が当たり前になるPTAになってほしい」と変わる川内さん

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記事の感想や体験談を募ります。いずれも連絡先を明記のうえ、メール(seikatsu@asahi.com)で、朝日新聞文化くらし報道部「父親のモヤモヤ」係へお寄せください。
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共働き世帯が増え、家事や育児を分かち合うようになり、「父親」もまた、モヤモヤすることがあります。それらを語り、変えようとすることは、誰にとっても生きやすい社会づくりにつながると思い、この企画は始まりました。あなたのモヤモヤ、聞かせてください。
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