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新型コロナ治療の最前線、医療従事者をカメラに にじむ誇りや緊張感

東京メトロ表参道駅のコンコースに展示された医療従事者のポートレート写真(宮本直孝さん提供)
東京メトロ表参道駅のコンコースに展示された医療従事者のポートレート写真(宮本直孝さん提供)

目次

新型コロナウイルス感染症の治療にかかわる医師や看護師らへの感謝を示すポートレート写真展が、東京メトロ表参道駅で開かれています。展示写真を見ると、治療の最前線に立つ医療スタッフたちの緊張感が伝わってきます。企画した写真家の宮本直孝さん(59)は「実は拍子抜けするほど簡単に、よい表情が撮影できた」と語ります。写真展の狙いや、撮影の裏側について、宮本さんに尋ねました。写真展は21日まで。

写真通し「ありがとう。」

宮本さんは広告や雑誌など商業写真の撮影を仕事とする一方、アザや顔の変形など外見に症状がある夫婦、ダウン症のある子とその母親、日本で暮らす難民といったマイノリティや社会問題にかかわる写真展を開催してきました。

写真家の宮本直孝さん。昨年11月には外見に症状がある夫婦の写真展を開いた
写真家の宮本直孝さん。昨年11月には外見に症状がある夫婦の写真展を開いた

今回のテーマは「ありがとう。がんばろう。」。コロナ禍で、多くの人たちが不安に陥っている今、写真家としてできることは何かと、宮本さんは考えました。

「医療従事者の頑張りが、コロナ禍にある社会を支えてくれています。『彼らに感謝を示そう』とよく耳にしますが、抽象的な言葉だけではなかなか実感がわきません。写真を通し、リアルな存在として医療従事者を感じてもらえれば、感謝の気持ちも自然にわきでるのではないかと思いました」

「カメラマンとしての興味もありました。私は『顔ににじみ出る内面』をカメラに収めたい。治療に邁進している医療従事者は、きっと『いい顔』をしているのではないかとの期待がありました」

撮影時の風景(宮本さん提供)
撮影時の風景(宮本さん提供)

治療現場の緊張感そのままに

撮影は、今月1日から2日間にわたり、東京・新宿の国立国際医療研究センターで行われました。同センターは全国4カ所の特定感染症指定医療機関の一つで、新型コロナ感染症の治療にあたっています。職員は業務の合間をぬって、一人あたり15分ほどの撮影に参加しました。

「限られた時間の中でどこまで内面が引き出せるのか不安でした。これまでのポートレート写真展では、私が納得できる表情を撮るため、コミュニケーションを取りながら数時間をかけることもあったので」

「ところが始めて、びっくり。すぐに『よい顔』が撮れました。普通、カメラの前に立つと、『格好よく撮ってもらおう』『素敵な笑顔で映りたい』といった欲が出ます。それによって秘められた内面や感情が隠れてしまう。でも、今回協力してくれた方々には、そういった欲がなかった。自分がどう見られるかということよりも、病院の代表、そして医療従事者としての誇りや責任感のほうが強い。命を守る医療現場を支える人たちは、さすがに違うなと思いました」

「ある看護師の女性が撮影場所に現れたとき、看護現場の緊張感をそのまま持ってこられたと思うほどでした。こういった方がカメラの前に立つと、表情や目の力が違います」

医療従事者らの誇りや緊張感が伝わるポートレート写真(宮本さん提供)
医療従事者らの誇りや緊張感が伝わるポートレート写真(宮本さん提供)
医療従事者らの誇りや緊張感が伝わるポートレート写真(宮本さん提供)
医療従事者らの誇りや緊張感が伝わるポートレート写真(宮本さん提供)

撮影スタッフの募集に苦労

撮影にあたったのは、宮本さんとアシスタント、ヘアメイクの計3人。撮影スタッフを集めることに、宮本さんは苦労したそうです。

「今回、撮影スタッフに加わるように依頼した数人に、『万が一、病院に行って新型コロナに感染したら仕事に差し障りが出てしまう』と断られました。医療従事者の子が保育所への通園を拒否されたとのニュースもありましたが、そうした不安や考え方は根強いんだと実感しました」

「私は当初、医療従事者の方々も『感染への恐怖』や『差別されることへの不安』を抱いているのではないか。そして、そういった感情もカメラに収めたいと考えていました。でも、それは私の思い込みでした。彼らの表情からは、そういった不安よりも、医療を担う責任感のほうが勝っていると感じました」

撮影した写真を確認する宮本さん(右)(宮本さん提供)
撮影した写真を確認する宮本さん(右)(宮本さん提供)

「事務も含め、病院あげて治療」

モデルとなった21人は医師や看護師だけでなく、検査技師、事務職員、管理職など幅広い役職の方々。撮影に協力した、感染管理認定看護師の杦木(すぎき)優子さんは院内感染のリスクを減らすことに日々取り組んでいます。

「新型コロナウイルスには不明な点が多く、院内感染予防はゼロからのスタート。ほぼ手探り状態で、マニュアル作成も苦労しました。医療スタッフの防護服の着脱から、部屋の清掃や病院食の食器洗いに至るまで、隅々まで対策を行き渡らせる必要があります。たとえば、パソコンやスマートデバイスを使った手で目や鼻を触るのはリスクなので、キーボードの清掃が必要ですし、何より手指消毒を習慣化することが大切です」

「今回、写真を撮ってもらえたことは素直にうれしかったです。医師や看護師ばかりに目がいきますが、事務の方も含め、病院をあげて治療に当たっています。そういったことも、この写真展を通して伝わるといいなと思っています」

東京メトロ表参道駅のコンコースで開かれている写真展(宮本さん提供)
東京メトロ表参道駅のコンコースで開かれている写真展(宮本さん提供)

自分ができることを精いっぱい

宮本さんは、写真を見た人を勇気づけられたら、と言います

「新型コロナの感染が終息したあとも、様々な困難が予想されます。第二波の懸念もある。そんな状況の中でも、私たちは自分ができることを精いっぱいするしかありません。写真を通し、身の危険も顧みず責任感をもって働く医療従事者の貴さを感じてもらい、『私も頑張ろう』と思ってもらえたらと考えています」

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