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連載

#4 すみっコ先生のススメ

「ふつう」って?今こそわかり合いたい、すみっコ先生の「際問い本」

とうとう最終回です。

すみっコ図書館の「際問い本」=湯川康宏撮影
すみっコ図書館の「際問い本」=湯川康宏撮影

目次

新型コロナウイルスの影響で、まだ学校に行けない人が多くいますね。すみっコ図書館にも生徒が来ないのでとても寂しいです。こんにちは、埼玉県立飯能高校すみっコ図書館司書の湯川康宏と申します。前回はとてつもなく強力なライバルの登場で心が折れそうになりましたが、今回が最終回なので気を取り直して「すみっコ図書館の秘密」と「埼玉の高校図書館司書がおススメする本」をご紹介します。最後までおつきあいください。

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今回のテーマ:わかりあいたい
夜も眠れないくらいに、自分ではすごく悩んでいることが、ほかの人にわかってもらえない時って、すごくつらくて悲しいよね。
私、花粉症で『のどかいかい』の人なのね、。電車の中でがまんできずに「コホ!」って咳をすると、まわりから「コロナかっ!」って『コロナ撃退光線』が発射されてめっちゃ痛いです。『わたし、のどかいかいです光線』を発射したいけど、まだうまくできないの。わかってもらえなくて、つらーい(>_<)

そこで、今回は「わかりあいたい」というテーマで本を紹介します。

自分と違うから「普通じゃない」?

少し前まで、すみっコ図書館には「きわどいマンガコーナー」という本棚があって、自称「腐女子」たちに選んでもらったガールズラブやボーイズラブのマンガを置いていたの。

「夢の国だー」なんていう生徒もいて、大人気だったんだけど、たぶんそういうのが好きだって友達にも言えなかったのに、図書館が「さあ、どうぞ!」ってマンガを並べたから、「ああ、正々堂々と見ていいんだ」って思ってくれたんじゃないかな。

おとなはよく「ふつう」っていうけれど、何が「ふつう」なのかは人によって感じ方が違うと思うの。
多くの人が「ふつう」って思ってることが正しいわけじゃないし、自分と違う考えや性質だから「ふつうじゃない」と決めつけるのはおかしいよね。
 
すみっコ図書館はどんな人とも仲良くできる図書館だから、少数しかいないせいで理解されない人たちや、差別されている人たちをテーマにしている本を、もっと知ってもらいたくて、その本棚に集めました。

いろんな個性や悩みや病気があるだけで差別されたり非難されたりされないように、そのコーナーを「ふつう」と「ふつうじゃない」境界線なんて誰にも引けないという意味で「際問い本(きわどいほん)」と名付けました。

今回はそのコーナーにある本から紹介します。
 

スラックスで通学する女子


(『さよならミニスカート』牧野 あおい著)
 
 あのマンガ雑誌「りぼん」に連載(2019年7月号から休止)されているのに、内容を説明するのがとても難しいマンガ。
スラックスで通学するボーイッシュな女子の秘密は、元人気アイドルグループ不動のセンターだったこと。
毎日ミニスカートの衣装を着ていた彼女は、ある事件を境にスカートがはけなくなってしまったの。今もなお彼女を苦しめるその犯人はいったい誰なのか・・・うーん、これは本当に小学生が読む漫画なのか?めっちゃ深いぞ!
 

14歳に男女が決まる…SFラブストーリー漫画


(『性別モナリザの君へ。』吉村旋 著)
もう一冊はこちら。
12歳を迎える頃に自分がなりたい性へと身体が変化していき、14歳になる頃には男性か女性へと姿が変わってゆく世界での話。
主人公は性別がはっきりしないまま、18度目の春を迎えたある日、幼なじみの男子と女子それぞれから告白されて…うらやましい…いや、とにかく衝撃的なSFラブストーリーマンガ。
 

主人公が女性の本

続いては、埼玉の高校図書館司書がおススメする本からご紹介。
今回紹介するのはすべて女性が主人公の本です。女性であるというだけで差別や不公平な扱いをうけることがまだまだ多い世界です。でも、精神的には男性より女性の方がはるかに強いんじゃないかな。すみっコ先生のところは、おくさんの方が何もかも強いよー・・・しまった!また禁断の秘密をもらしてしまった、ヒェーッ・・・

マララさんのパワーはどこから

『ぼくたちはなぜ、学校へ行くのか。:マララ・ユスフザイさんの国連演説から考える』石井 光太 著 ポプラ社

                
 

マララさんの国連演説から学校と教育について考える写真絵本です。16歳の少女のまっすぐな言葉は世界中で共感を呼び、勇気を与えてくれました。戦争・ 貧困・差別をなくすために必要なのは学校だと訴えます。「学校へ行くな!」と武装グループによって銃撃されましたが、一命をとりとめました。その経験が逆に、彼女にパワーをもたらしました。(対象:小学生以上)
出典:「新・高校生のための読書案内2020」(埼玉県高等学校図書館研究会読書案内委員会)

まとわりつくジェンダー

『パンツ・プロジェクト』 キャット・クラーク著 三辺 律子 訳 あすなろ書房

                  

主人公のリヴは中学校へ行くのが嫌でした。理由は制服です。規則で女子生徒はスカートを履かなくてはいけませんでした。女子として生きることに違和感があるリヴは、まとわり付くジェンダーを否定するため戦うことを決めます。名付けて、 "パンツ・プロジェクト"。
 自分らしく、誰にも強制されない生き方を模索していく青春小説です。(対象:中学生以上)

出典:「新・高校生のための読書案内2020」(埼玉県高等学校図書館研究会読書案内委員会)

絶品の粒あん炊く女性への偏見描く

『あん』ドリアン 助川 著 ポプラ文庫

                
どら焼き店の求人を知り、店長の千太郎を訪ねてきたのは、76歳の手の不自由な女性・徳江でした。小豆の言葉を聞いて、徳江が丁寧に炊きあげる粒あんは絶品で、店は次第に繁盛していきますが、あるうわさが流れて・・・。
読者に突きつけられるハンセン病の悲しい歴史と根強い偏見。徳江の問いかける「生きる意味」が心に残ります。切なくも心温まる物語。映画化されました。(対象:高校生以上)

出典:「新・高校生のための読書案内2020」(埼玉県高等学校図書館研究会読書案内委員会)

「無意識な言葉」で追い詰めているのに

『82年生まれ、キム・ジヨン』チョ・ナムジュ著 斎藤 真理子 訳 筑摩書房

                

キム・ジヨンとは、1982年に生れた韓国人女性でもっとも多い名前のこと。
受験、就職、結婚、育児…男尊女卑の世界で普通の女性が送る人生を淡々と描いたこの作品は、女性の絶大な共感を呼び、韓国で100万部を突破した大ベストセラー小説です。
周囲の人間が無意識に発する言葉が主人公を追い詰めていることに誰も気づかない現実。男性にこそ読んでもらいたい本です。
協力:「埼玉県の高校図書館司書が選んだイチオシ本2019」(同実行委員会)
 

これまで4回にわたりお付き合いいただきありがとう。ズキュンされてしまいそうな本に出会えたかな?
ズキュンは本の中だけじゃなくて、身の回りのいろいろなところにいます。きっとあなたの友達や学校の図書館にもたくさんのズキュンがいます。これからも、毎日の生活の中で新たなズキュンとの出会いを楽しんでくださいね。それでは、またどこかでお会いしましょう!

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withnewsでは、独自の図書館作りで知られる埼玉県立飯能高校の主任司書・湯川康宏さんのコラムを不定期で掲載いたしました。

湯川さんの図書館運営についてはこちら。伝説の高校図書館つくった名物司書「情報源は本じゃなくてもいい」
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