MENU CLOSE

連載

#3 キャラクターの世界

男性向け「すみっコぐらし」上映会の全貌は? 観客のほぼ全員が笑顔

トークショーではぬいぐるみを持参した人も多かった=小原智恵撮影
トークショーではぬいぐるみを持参した人も多かった=小原智恵撮影

目次

11月8日の公開から人気が高まっている「映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」。上映前にひっそりと企画が決まっていた男性向けの上映会があります。取材に行ってみると、席は満席。上映会後のトークショーでは、登壇する全員がすみっコのキャラを抱えての登場という珍しい光景でした。脚本家の角田貴志さんと公式が「すみっコ仕込み記者」と名付けた謎の同僚・影山遼のやりとりを全て紹介します。(朝日新聞デジタル編集部・小原智恵)

【PR】「あの時、学校でR-1飲んでたね」
【「すみっコぐらし」シリーズ】
①後ろ向きキャラ勢ぞろい…なぜ人気?「すみっコぐらし」作者が語る
②逆詐欺映画?「すみっコぐらし」がトレンド ゆるめキャラに一体何が
③「すみっコ」を誇れる時代が到来? 満席の男性イベントで見えた人気
④男性向け「すみっコぐらし」上映会の全貌は? 観客のほぼ全員が笑顔
⑤井ノ原快彦さん「すみっこにいていい」 大人に刺さる子どもへの言葉
⑥「はつらつとしていない」キャラが魅力?サンエックスにはまった人々
⑦「たれぱんだ」変えた、サンエックスの価値観 すみっコ作者にも伝承
⑧「すみっコぐらし」の快進撃 控えめなキャラ、ビビアン・スーも感激
⑨「このときがずっと続けばいいのに」が叶わない親子、英会話本に共感
⑩評判呼んだ映画すみっコぐらし 第2作、注目すべきは「目」と「夢」
⑪スター・ウォーズ狙った映画すみっコぐらし 監督と脚本家語る舞台裏
⑫ネガティブでも人生は大丈夫 すみっコぐらし・よこみぞゆりさん諭す
⑬映画すみっコぐらし、登場する謎のキャラ すみっこにいない人が騒ぐ
【作者に聞く】すみっコぐらし原点は落書き かわいそうなかわいさ共感

公開6日目で4回目の鑑賞も

 

司会

今日はおかげさまで満員御礼。他の映画で男性100%はないんじゃないかと。お客さんに聞いていきますね。すみっコ好きですか?(はいという声)。人形を持ってきています。すごい光景ですね。

今日初めて映画をご覧になった方は?(ほとんどの観客が挙手)。この上映会、企画して良かったです。2回目の方。結構いらっしゃる。5回目とか?(試写会も合わせて4回との声)。惜しい。

待望の男性試写会と言うことでお話を聞いていこうと思います。すみっコとの出会いは?

 

角田

僕はこのお話をいただくまで全然知らなくて、今回初めて知りました。リラックマとか、他のサンエックスのキャラクターは知っていたんですけれど、すみっコについては全く知りませんでした。

 

司会

オファーがあった時は?

 

角田

最初に(作者の)よこみぞ(ゆり)さんが描かれた4コマ漫画を参考資料としていただいたのですが、「4コマを映画にするのか、どうなんだろうなと」。(どういう映画にするのかの)話も全然なかったので。一から。どうしたらいいんだろうかと思っていました。

 

影山

私が出会ったのは2014年に社会人になってから。新聞記者として、事件とかあんまり得意ではなくて、心がすり減っている時に名古屋のロフトに行って。よっぽどすり減っていたのか、普段は行かないキャラコーナーに行ったら、このぺんぎん?を見つけて。目が死んでいるのが、自分と似ているなと。ぺんぎん?を持っている方は分かると思うんですけど。

家に帰って調べてみたら「自分探し中」みたいな話が書いてあって。同じ境遇だなと思って、頭から離れなくなって、(ぬいぐるみを)すぐに買ってしまいました。5年間愛用しすぎて、お尻がすこしたるんでいます。

 

司会

自宅のどこに置いています?

 

影山

天井近くまである本棚の、天井との隙間に。いつもうつろな目で上の方を見ています。

 

司会

これまでの(すみっコについて書いた)記事、どういったところをポイントに?

 

影山

ちょうど今年うちの(会社)主催のイベント「恐竜博」で、(すみっコとの)コラボがあって、趣味を仕事にできないかという考えで、よこみぞさんにインタビュー申し込んだところOKで。すみっコへの愛が伝わったのか、今は打算抜きで記事にしています。記者としてはどうなのか分かりませんが、とにかく書いています。
ぺんぎん?はトートバッグに入ってもらって自宅から会場入り
ぺんぎん?はトートバッグに入ってもらって自宅から会場入り

「主役、自分から動かない」

 

司会

今回の映画の感想は?

 

影山

ちょっと大量にあって。(持参したすみっコのノートを)読みながらで大丈夫ですか?映画はすみっコの魅力が出ていて。すみっコが主役なのに、キャラたちが最初は全然自分から動こうとしていなくて、みにっコたちによって無理やり動かされて、物語が進んでいくのをほほえましくみていました。おしつけがましい可愛さでもなく、意外と機敏に動くんだなと。

見る前にどうしてもどういう映画なのか分からないので、キャラたちが饒舌にしゃべりだしたら困るなと思っていました。(角田さんに向けて)よこみぞさんの意向があったんですか?

 

角田

そうですね。最初の方からすみっコたちの声が想像できないとよこみぞさんがおっしゃって、しゃべらせない方向でいきましょうと。それは方針としてありました。

 

影山

難しくありませんでしたか?

 

角田

正直、監督もアニメーションをつくるチームの人たちも、しゃべった方がやりやすいけどなと思っていたけれど、よこみぞさんの強い意志を押し通していただいて、結果良かったなと。一番思い入れのある人がそうだというので、従ったのは正解でした。

 

司会

今回は、映画の感想を見ると、すみっコの可愛さはもちろん、意外なほどのドラマ性に共感があるようです。どんな狙いがあったのでしょうか?

 

角田

よこみぞさんと監督とアニメーションを制作する人たちと、色んな人たちが集まってみんなで作りました。最初のアイデアから。僕が脚本を書くんですけれど、みんなに集まってもらって足していく感じだったので、みんなの思いが形を作った感じです。

 

司会

脚本はスタッフのみなさんで練り上げた?

 

角田

本当にそうで、最初のプロット、あらすじはみんなで出しました。よこみぞさんが三つぐらいの案を考えてくださって、すみっコと童話でなんかできないか、迷子の誰かと会えないかとか。絵本と決まってからも、絵本はどのようにしようか。CGをつくる部署が、飛び出す絵本ですごいのがある、それいいですねと。みんなが賛同して取り入れましょうかと。本当にみんなでつくった感じ。
えびふらいのしっぽ(左)ととんかつ
えびふらいのしっぽ(左)ととんかつ 出典: (C)2019 日本すみっコぐらし協会映画部

敵を作ろうということはなかった

 

司会

すみっコと絵本の世界観はどうでしたでしょうか?

 

影山

すみっコたちができうる最大限の冒険でした。絵本の中にも敵がいない。みんなが優しい。今日来ている方も優しそうな方々だなと。見に来ている方も悪意のある方はいない。

敵というか、悪意を持ったキャラを出さないようにというのはあったのでしょうか?

 

角田

特別気をつけたことはないですね。鬼は(もともと)怖い存在。でも、別に怖くしようと言うことにはならなかった。すみっコぐらしがもっている何かが影響している。そもそも敵を作ろうということはなかったです。

 

影山

このイベントいただいて、1人でポツンと会議室で見て、まさか最後に泣くとは。

 

角田

けっこうすさんでらっしゃったんですね。

 

影山

会社が悪いのでしょうか…。

 

角田

そこまで泣かそうとは思っていませんでした。ひよこ?をどうしようというのを一生懸命考えてつくった結果。

 

影山

最初にひよこ?というキャラクターがいて、物語が作られたのでしょうか?

 

角田

新しいキャラを一つは出したいな。何が良いかなとアイデアがあり、迷子って言うのもあったので、小さい子がいいねって。そっからですかね。

 

司会

よこみぞさんの世界観が最初に強固に設定されていて、という感じですね。
人魚になったとかげ(とかげ魚?)
人魚になったとかげ(とかげ魚?) 出典: (C)2019 日本すみっコぐらし協会映画部

ファンに向けてが第一

 

司会

本日男性限定、異例のイベント。そのあたりを掘り下げていきます。子どもも大人も楽しめると評価が集まっています。男性に響くポイントは?

 

影山

かわいいというか、癒やしというのが、昔のステレオタイプのように女性や子どものものだけでなく、性別・年齢を問わなくなっているのではないでしょうか。以前書いた記事(後ろ向きキャラ勢ぞろい…なぜ人気?「すみっコぐらし」作者が語る)を分析してみても、読者の46%は男性でした。みんなが疲れています。

全員が中心いる必要はなくて、すみにいる人生でも楽しくて、みんなで協力できる部分はあるのに、これまでは中心にいることを求められていました。改めてすみの存在が重要だと認識されて、1人でも見に行けるようになって。

今回、つれだっていらした方はいらっしゃるんですかね?

 

司会

今日友達と来た方は(挙手は1割ほど)。少ないですね。1人では(残り9割挙手)。多いですね。

2人の周りにすみっコ好きの男性はいるのでしょうか?

 

角田

僕は劇団に属しているんですが、楽屋に入ったらメンバーはやっぱり鏡の前のすみから(席が)埋まっていく。隠れすみっコ好きはたくさんいると思います。

 

影山

記事を出すまでは、周りにはいないと思っていたんですが、記事を出したら「実は好きなんだ」と言われたことはあります。

 

司会

男性でかわいいもの好きは言いにくいのでしょうか?

 

角田

LINEのスタンプ(かわいいものは使いにくく)どれにしようというのはあります。

 

司会

すみっコ好きを(周りに)アピールしている人は(3分の2ほど手をあげる)。結構いる。なんとなく気恥ずかしく、秘密にしている人は(ほぼいない)。あ、特に秘密にはしていないけれど、アピールはしないっていうノリなんですかね。

脚本書くときに男性や女性といったターゲットは意識しましたか?

 

角田

男性や女性ってのは、そこまで気にしてなかった。小さいお子さんに分かるようには意識しました。

 

司会

ネットの評判は子ども向けと思いきや大人向けという。

 

角田

すみっコファンに(向けて)というのが第一。

ここまでのヒットは予想せず

 

司会

みんながすみっコを愛する本質にひもづいた内容が受けているところなのかなと。

制作の秘話、実際このお話がどうつくられていったか。踏み込んでいきます。

 

影山

映画になるって聞いた時に、短編をつなぐのかと思っていました。

絵本の中では短編をつなぎあわせたというのはありますが、最初から長編を意識していました?

 

角田

自分では4コマ漫画のエピソードを拾ってつなげるのかなと思ったのですが、最初から長編にしようという話だったと思います。最初は45分くらいかなと。途中から壮大になりそうだなと言う感じだった。

 

影山

シーンがめまぐるしく変わりますが。

 

角田

監督も(飽きることを)心配されていました。お子さんが見るので、シーンはコロコロ変わって、背景も変わった方が飽きないよねと。

 

司会

上映時間66分。子ども向けには長く、大人には短い。絶妙な尺でした。

 

角田

どうでした、見ていただいて?

 

影山

あれ以上長いと、ちょっと…

 

角田

そうですよね。やっぱりお子さんが集中できて、大人も満足できる時間と迷ったんですが、それが決まってそこに向かってみんなで、となりました。

 

司会

子どもの集中力が切れちゃうかなと思ったのですが、集中しているようです。怒濤のシーン展開でという感じでした。

 

影山

知らない人向けという要素もあるのでしょうか?

 

角田

知らない人も見られるように、紹介のパートもあります。それでも、すみっコファンに受け入れてもらおうと、監督も強く意識していました。僕もそう思って書いていました。まずはすみっこファンに喜んでもらえるように、と。

 

影山

今日いらっしゃった方の中にも、元から知っている人、初めて来た方もいると思います。元からの人は順当に楽しめて、新しく来た方も意外性を感じて。みんなにうまい具合にはまったんだなと感じます。

こんなにヒットすると思いましたか?

 

角田

全く思っていませんでした。それこそセリフがないので、これ、話ちゃんと伝わるかなと心配をするぐらいでした。大丈夫か、これで理解できるか、って。ここまで見に来て、理解してもらえるとは思いませんでした。
楽しげに話をする角田貴志さん(左)
楽しげに話をする角田貴志さん(左)

好きなシーンは?

 

司会

ツイッターのトレンドに「すみっコぐらし」とともに「逆詐欺映画」が。すみっコを知らない人からしても、深いと驚いたのでは。すみっコの設定込みで愛されているようです。

 

影山

みんなすみにいるので誰が主要キャラなのか分からないのも面白い。一応メインっぽい5キャラはいますが。みんな影を抱えている。

 

角田

ぺんぎん?が好きなのは設定が好き?

 

影山

設定込みでフォルムも。マイペースで、相対的に協調性がない。自分に似ているなと。すみっコの良いところは、好きなキャラをめぐって争いがないところ。「ああ、あなたはそのキャラのそこにひかれたんだ、うんうん、良いね」という感じ。

 

司会

最後に2人のお気に入りのシーンは?

 

影山

ぺんぎん?が「きゅうりましましで」といったシーン。「ひらけー!きゅうり?」も。ベタかもしれませんが、最後のひよこ?が残る時に、目には涙を浮かべているけれど顔は笑っているところにわーっとなって、すごいなと思いながら見た。記者なのに語彙力がなくてすみません。

 

角田

タピオカのそれぞれのシーン。画面の端で好きなことやっている。「Choo Choo TRAIN」とか。ネタは僕も書いたし、監督も書いた。それは見ていて楽しいところです。

 

司会

船のところにもタイタニックが。あ、もうお時間ですね。ありがとうございました。最後に全員で写真撮影をしましょう。
写真撮影で笑顔を浮かべる観客ら
写真撮影で笑顔を浮かべる観客ら

連載 キャラクターの世界

その他の連載コンテンツ その他の連載コンテンツ

全連載一覧から探す。 全連載一覧から探す。

PICKUP PR

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます