連載
#14 #withyou 悩み相談
「恋バナに合わせるのがつらい」その悩みが、社会を生きやすくする
「恋愛話で盛りあげようとする飲み会がつらい」。戸籍上の性と、心の性に違和感がある大学生のお悩みに、「虹色ダイバーシティ」代表の村木さんは。
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#14 #withyou 悩み相談
「恋愛話で盛りあげようとする飲み会がつらい」。戸籍上の性と、心の性に違和感がある大学生のお悩みに、「虹色ダイバーシティ」代表の村木さんは。
LGBTQのような性的マイノリティーへの理解は少しずつ進んできているとはいえ、当事者、特に若い人が周囲の偏見を心配してしまうことは少なくありません。「恋バナがしんどい」という22歳の大学生の相談に、自身も性的マイノリティーでNPO法人「虹色ダイバーシティ」代表の村木真紀さん(44)は「ジェンダーの意識に敏感なのは今の時代に合う強み」と答えます。社会が多様化し、色々な考え、価値観の人と一緒に生きていかなければならない時代。当事者だけにとどまらない、性的マイノリティーの「サバイブ」について聞きました。(聞き手・朝日新聞大阪本社社会部 松尾由紀)
戸籍は男性ですが、心の性は完全な男性ではなく、女性的な部分もあるなと感じています。小学生の時から違和感はありました。高校で恋愛が話題になることが出てくると苦痛になってきました。男性の友達に「わかるだろ」といった感じで言われても共感できないし、だからといって女性の気持ちが完全に理解できるわけでもない。今は、恋愛話で盛りあげようとする飲み会がつらい。恋愛対象が男性だなんて言えません。社会に出ると、こういう場が増えるのかと思うと不安です。(京都府・大学生・22歳)
しんどいですよね。私は大学卒業後に入ったのがビール会社で、基本的にお酒好きな人が集まっているから飲み会はたくさんありました。彼女がいることを言わずにいるうち、仲の良い人やお世話になっている人にうそをつくのが心苦しくなって、飲み会どころかランチにさえも行かなくなりました。壁を作ってしまったんです。
でも、性的マイノリティーの働きやすさを目指す団体を立ち上げて思うのは、意外と応援してくれる人はいるということ。あのころの私も含めて、当事者は「わかってもらえない」と思いがちだけど、親身になってくれる人はいます。
親しい人を亡くしたり、障害のある人が身近にいたり、世の中って、思った以上にみんな色々な事情を抱えています。
LGBTに限らず、恋愛の話が苦手な人はいます。理由には触れずに「恋愛話は苦手」と言ってもいいのではないでしょうか。「心を開く」ということは、開く開かないの二択じゃなくて、ちょっと開くという道もあります。恋愛以外で夢中になって楽しく話せるものを用意する、というサバイブ(生き残り)術もよいかもしれません。学校や会社などの組織の外に「そうだよね、いやだったね」と共感してくれる友人を見つけておくのもおすすめです。
男性にも女性にも共感できないというけれど、ジェンダーの意識に敏感なのは今の時代に合う強み。ハラスメントに敏感になって、社会をよくする力にさえなりえます。
「男性とは」「女性とは」と話す人と接するとき、私は心の中で「平均値や中央値の話をしているんだな」と思いながら聞いています。一般に力が強いと思われる男性でも、女性より握力がない男性もいる、逆にすごく力が強い女性だっていますよね。
「男性とは」「女性とは」を「平均値の話」と思いながら聞くと、私は心がやや、やすらぎます。なんとかサバイブしていきましょう。
それでも嫌な学校や職場は、変わりましょう。今は人材不足。いつでも転職できるぞ、と思えばちょっと気が楽になるかもしれません。
時代とともに変わってきている面もあります。これから社会に出て行くときに、自分に向いているワークスタイルを模索することもできます。リモートワークだったり、組織に属さないフリーランスだったり。
ちなみに私が楽だったのはコンサルタントの仕事です。数カ月ごとに変わるお客さんのところに行って仕事をするから、ぐっと深い仲にはなりにくいんです。仕事の内容は大変でしたが、気は楽でした。
育児支援などのダイバーシティ施策に力を入れている会社も増えてきて、いろいろなデータも公開されています。そういった企業はLGBTを含めた多様性に理解があることが多いし、会社としてLGBT施策に取り組む企業も増えています。
LGBTなどへの理解をすすめるという仕事を始めるときに、「食べていけないかも」と心配していました。でも、必要とされ、団体として6年もやっていけています。「世の中の理解は進んでも、自分の周りはまだまだだよ」と落ち込むこともあるかもしれません。でも、わかってもらえなさそうな人、意外な人がひょいっといいこと言ってくれること、ありますよ。
<むらき・まき>
NPO法人「虹色ダイバーシティ」(大阪市)代表。LGBTなどの性的マイノリティーがいきいきと働くことができる職場作りを目指し、調査・講演などの活動を続ける。
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