連載
#27 「見た目問題」どう向き合う?
髪がなくても、私はアイドル ウィッグかぶり気づいた「弱みは個性」
女性にとって髪は命――。そんな価値観に、髪を失った女性たちが苦しんでいます。アイドルで、髪を失ったpippi(ぴっぴ)さんもその一人でした。pippiさんを救ったのは、ウィッグ(おしゃれ用かつら)。若者に人気のユーチューバーのよききさんが、pippiさんの思いに耳を傾け、ウィッグを一緒に楽しみました。(朝日新聞記者・岩井建樹)
pippiさんは、4人組グループ「エレクトリックリボン」のメンバーです。キャラ設定はpippi星からやってきた15歳。実際は島根県出身で、実年齢が15歳でないことは公然の秘密です。
pippiさんは、2017年12月から突然、髪の毛が抜け始め、8カ月後に全身の毛が抜けました。免疫の異常で毛髪の組織が攻撃されて起きる「脱毛症」です。当初は落ち込みましたが、ウィッグのおかげで、今は「毎日違う自分を表現できる。髪がないのは個性の一つ」と前向きにとらえています。今年2月には、twitterで脱毛症をカミングアウトし、大きな反響を呼びました。
一方のよききさんは、メイク技術が「すごい」と話題のユーチューバーです。メイクをとると顔の印象ががらりと変わり、芸人の小峠英二さんに似ているとも言われています。
今回、よききさんとpippiさんが顔をあわせたのは、YouTubeのwithnewsチャンネル「withよきき」の収録です。ハイテンションのぴっぴさんに圧倒されながら、よききさんは「普通の髪に見えるけど、ウィッグなんですか」と尋ねました。
pippiさんはウィッグをかきあげ、ネット姿の頭の一部を披露。病気について説明した上で、「髪は女の命って言うくらいだから、ものすごく葛藤しました。アイドルも続けられるか不安でした」と当時の心境を明かしました。それでも「髪の毛がないだけで夢をあきらめるのは嫌だ」と思ったそうです。支えてくれたのが、カラフルなウィッグでした。
「ウィッグなら、気分によっていろいろな色が楽しめるからいいですよね」とよききさん。すると、pippiさんが「私のウィッグを、よききさんにかぶってもらってイメチェンしてもらいましょう!」と提案しました。
pippiさんは清楚系の黒髪に。そして、よききさんは明るい色のツインテール姿に変身。観覧席から、「よきき、かわいい!」と歓声があがりました。
変身した後も、2人のトークは続きました。
pippiさん
「髪の毛がなくなった当初は、女の人としての自信もなくなっていました。もし、よききさんの好きな女性が脱毛症を告白したら、どう思いますか」
よききさん
「性格の部分を好きになるわけじゃないですか。ウィッグだろうと、整形だろうと、メイクだろうと、その瞬間かわいいと思えれば、それが正義です」
pippiさん
「そういってもらえると、私も気持ちが楽になります。最近、(コンプレックスを)言いやすい世の中にはなっていますよね。個性的な人が増えているから、なんでもかんでも個性ととらえてもらえます」
ユーチューバーとして人気者のよききさんに、どうしても聞きたい質問が、ぴっぴさんにはありました。
pippiさん「アイドルをやっているんですが、人気がなかなか……。人気ってどうやったら出ますか」
よきき
「さらけ出すことだと思います。自分の場合は、『おれはブサイクだ』ってのを発信しまくった。本当はブサイクと言われるのは嫌だったけど、自分の自信がない部分を発信している人間って、すごい魅力的。自分の弱い部分を武器と思って、いかにプラスに見せられるかが大事だと思います」
pippiさん
「私も脱毛症は弱さだった。落ち込んでいたのを、カミングアウトしたら、みんな受け入れてくれました。世の中、いい人が多いですよね」
終始、笑顔で、脱毛症の悩みや、ウィッグの魅力について語ってくれたpippiさん。これからもアイドルとしての活動を通し、外見にコンプレックスを抱えた人やファンに勇気を与えてくれるでしょう。
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