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「生きる意味なんて、ほぼない。でも……」生きづらさに向き合う答え

600人以上の悩める人たちに向き合ってきたカリスマ相談者のモカさん=モカさん提供
600人以上の悩める人たちに向き合ってきたカリスマ相談者のモカさん=モカさん提供

目次

令和となり20日になりました。お祭りムードも一段落し、慌ただしい日々が戻っています。時には「なんでこんなに働いているのだ」「生きる意味とは?」と、考え込んでしまう人もいるかもしれません。これまで600人以上の悩み相談にのってきたカリスマ相談者のモカさん(33)は温かい口調で「生きる意味ですか? ほぼないですね」。そして、こう続けます。「でも、生きる価値はあるんです」(朝日新聞記者・高野真吾)

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お金、仕事、人間関係、恋愛などに限らず、「生きる限界」のような悩みにも答えてきた=モカさん提供
お金、仕事、人間関係、恋愛などに限らず、「生きる限界」のような悩みにも答えてきた=モカさん提供
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〈令和に悩む、システムエンジニア 佐藤学さん(32)〉(モカさんに寄せられた複数の相談者の事例を組み合わせています。記事の最後に相談窓口の案内があります)

佐藤さんは今日も終電帰りです。こんな日が続くと体にこたえます。

大学院卒業後、1人暮らしを楽しんできましたが、最近の週末は寝て過ごすことが多くなりました。たまの楽しみは、部屋で飲む一人酒ぐらい。アルコール度数の高いチューハイがお気に入りです。

仕事はきついけど、ある程度のやりがいは感じていて、衣食住は足りています。この2年間、彼女はいませんが、友人からは定期的に女性を紹介されます。元来、付き合いが悪くなく、安定的な収入があるためでしょう。

それでも、お酒が入る度、「何のために働いているのだ」との疑問が沸くようになりました。最近は、「生きる意味って何だっけ」との問いも生じます。

昨年、話題になった漫画『君たちはどう生きるか』を読んでみようかと迷っています。本屋で手にしたいのですが、時間が取れずにいます。

イベントに登壇する機会も多い。たくさんの人々がモカさんの言葉に引き込まれる=モカさん提供
イベントに登壇する機会も多い。たくさんの人々がモカさんの言葉に引き込まれる=モカさん提供

モカさんの回答は……

こんな疑問を感じている人は多いです。忙しい合間にふと考える人だけでなく、時間に比較的余裕がある人でも同じ思いを抱いています。

私が思うには、生きる意味は、あるっちゃあるけど、ないっちゃない。もっと、正直に言うと、ほぼない。

突き放した回答になるので、分かるように説明していきます。

モカさんが経営する会社のHP。お悩み相談を続ける一方、経営者としても成功している
モカさんが経営する会社のHP。お悩み相談を続ける一方、経営者としても成功している

全くの0%ではないけど

「ほぼない」としたのは、物理的な世界で捉えた上での回答です。

この社会に対して、自分の存在意義があるのか考えてみます。そして社会から、世界、宇宙へと広げてみると、どうでしょう?

宇宙となると、ものすごく広い対象と自分を比較することになりますよね。地球すらちっぽけなのに、私たちのような1個人は、微生物みたいな存在になります。

その私たちが、ピュッと生まれて、ピュッと死ぬ、みたいなのが人の一生になります。そうすると、意味など、ほぼない。「ほぼ」としたのは、この現実世界に存在している以上、全くの0%ではないからです。

0.00000……1%ぐらいの存在理由はあるでしょうから、「ほぼ」としました。

『迷いうさこの感じる哲学漫画』を出版した頃=モカさん提供
『迷いうさこの感じる哲学漫画』を出版した頃=モカさん提供

生まれながらに幸福求める

「生きる意味がほぼない」から「生きている価値」がないのかというと、そうではありません。

そもそも、生きる意味があろうが、なかろうが、私はその意味の有無と生きること自体には関係がないと考えます。

一番重要なのは、私たちがいま生きているという事実です。

そして人間は生まれながらに、幸福を求める存在であるという事実です。

この二つの事実を併せると、生き方が見つかってきます。幸福になることに直結する、したいことをひたすらすればいいのだと。

人生は好きなことを徹底してやっていく、壮大な暇つぶしと考えてしまうのです。

写真を撮られるのは好きだ。モデル役をしたこともある=モカさん提供
写真を撮られるのは好きだ。モデル役をしたこともある=モカさん提供

あるベテラン刑事の指摘

こうした考えに行き着くまでに、私は随分、回り道をしました。

私は29歳の時、ある衝撃的な行動を取りました。20代で患っていた躁鬱病が悪化し、ついに決断してしまったのです。

私が入院中、警察官が両親の立ち会いのもとで、私の自室に入ってきました。私がケガした背景に事件性がないか、念のためチェックすることが目的です。

そのうちの一人、最も年上のいかにもベテラン刑事が、次のように母親に言ったそうです。

「娘さんは生き急いでいたのですね」

衝撃的な行動の結果、しばらく松葉杖生活となった=モカさん提供
衝撃的な行動の結果、しばらく松葉杖生活となった=モカさん提供

暇つぶしぐらいで、ちょうどいい

自室には個性が出ます。部屋にある色々なものを見て、人間観察のプロであるベテラン刑事は、そう判断したのでしょう。

私は幸い命を取り留めましたが、生き急いで人生に絶望したことは間違いありません。

だからこそ、人生はしたいことをひたすらやる、暇つぶしぐらいのスタンスで生きて、ちょうどいいと考えるようになりました。

しっかりと心身を休める時間を大切にしている=モカさん提供
しっかりと心身を休める時間を大切にしている=モカさん提供

その気持ちは一時的

「生きる意味があるのか」と考える人の中には、かなり切羽詰まった人もいることでしょう。その人たちには、経験者の立場から言います。

今は死にたい気持ちがあるかもしれないけど、それは一時的なものです。私はそれが分からずに実行し、その後、病院で痛みと対峙する壮絶な体験をしました。

今は元気だから、生きる意味なんて考えないです。したいこと、しなければいけないことをするのみ。

このお悩み相談に回答した後は、ゲームでもやろうかな、なんて考えています。これぐらいの生き方でいいんじゃないでしょうか。

     ◇
モカ、1986年3月、東京生まれの元男性。トランスジェンダーとして、東京・新宿2丁目を中心に複数の飲食店などを経営する。29歳の時、自殺しようとマンション屋上から飛び降りたものの、奇跡的に生還。現在は、電話や対面で生きづらい人やLGBT当事者の人生相談に乗る活動を続けている。自身の半生を題材に、描き下ろし漫画を含む書籍『12階から飛び降りて一度死んだ私が伝えたいこと』(光文社新書)を4月に発売。

モカさんが4月に出版した『12階から飛び降りて一度死んだ私が伝えたいこと』
モカさんが4月に出版した『12階から飛び降りて一度死んだ私が伝えたいこと』

4月に発売された、モカさんの半生を描いた『12階から飛び降りて一度死んだ私が伝えたいこと』(光文社新書)

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■24時間こどもSOSダイヤル
0120-0-78310

     ◇

■こどものSOS相談窓口(文部科学省サイト)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06112210.htm

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■いのち支える窓口一覧
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