MENU CLOSE

連載

#24 「見た目問題」どう向き合う?

「普通の顔になれるなら手術受ける?」見た目問題当事者と真剣トーク

イベント「ミタメトーク!」で中高生と交流した当事者たち
イベント「ミタメトーク!」で中高生と交流した当事者たち

目次

 顔の変形やあざ、まひ……。人とは違う外見のため学校でいじめられ、就職や結婚で苦労する「見た目問題」。当事者のリアルな体験は、多感な中高生の悩みを解決するためのヒントになるかもしれません。「手術で普通の外見になれるとしたらどうするか」「過去の自分に何と声をかけるか」……。当事者3人が中高生と交流したイベントでは、たくさんの質問が寄せられました。3人が出した答えとは。

【PR】「あの時、学校でR-1飲んでたね」

中高生と「ミタメトーク!」

 23日に東京・渋谷で開かれたイベント「ミタメトーク!」で中高生と交流したのは、この3人です。

 

アルビノの神原由佳さん(25)
生まれつき髪や肌が白く、弱視。ずっと外見に違和感があったが少しずつ誇りに思えるようになった。福祉施設勤務。

 

トリーチャーコリンズ症候群の石田祐貴さん(26)
顔の骨が未発達で生まれ、聴覚障害もある。中学時代、引きこもりを体験した。筑波大大学院生。

 

単純性血管腫の三橋雅史さん(37)
顔の左側に大きなあざ。高校時代は友だちがいなくて孤独だった。自転車の旅を転機に前向きになれた。公務員。
【ミタメトーク! イベントレポート】
(前編)顔の変形やあざ… 悩んだ3人が中高生に伝えた生きるヒント
(左から)三橋さん、神原さん、石田さん
(左から)三橋さん、神原さん、石田さん

 

中高生からたくさんの「?」

 イベントでは、当事者の話を聞いた後、中高生から質問を募りました。見た目問題の解決に取り組むNPO法人「マイフェイス・マイスタイル」のアドバイザーを務める朴基浩さんが寄せられた質問を読み上げ、当事者3人が答えていきました。

 
質問
これだけは絶対に曲げないという信念はありますか?

 

神原さん

白い髪を染めない!

 即答した神原さんに、会場からは「おー」という歓声とともに拍手が起こりました。

 

神原さん

この姿でいたいから。髪を染めると、自分自身を否定することになるので。
 
質問
仕事の面接で見た目で断られたことはありますか?

 

神原さん

大学1年生のとき、アパレルやスーパーのアルバイトの面接で、カラーコードにひっかかりました。規定内の髪色に染めるなら採用すると言われたけど、私から断りました。
 
質問
自分を受け入れることで変化したことは何ですか?

 

三橋さん

外と関わるのが怖くなくなった。いろんな人とつながる中で、今の自分で大丈夫だと気づけました。
 
質問
世の中に症状を知ってもらいたいですか?

 

石田さん

そう思って、メディアの取材を受けています。
僕の見た目に慣れてもらいたい。トリーチャーコリンズ症候群の後輩たちが過ごしやすい社会になってほしいので。

 

神原さん

今は外見が目立ってしまうけど、私は「ただの人」になりたい。「そういう人もいるよね」ととらえてもらえたら。そのためにはアルビノを知ってもらわないと。

 

「うっとうしい善意」もある

 司会者の朴さんが「僕からの質問」として、「うっとうしいと感じる善意はある?」と尋ねました。

 

三橋さん

「あざを隠せる化粧品があるよ」と言ってくる人。

この症状を知ってもらいたくて、意図的にあざを隠さないでいます。そういう僕の思いをくまずに、「隠すことが正義だ」と押しつけられるのは迷惑です。

 

神原さん

「きれいだからいいじゃん」と言われること。私は気にしちゃう。私の気持ちをくんでほしい。

 

石田さん

「大変だね」と、僕にすごく共感を寄せてくる人がいる。悪意はないし、励ましてくれるつもりで言ってくれているとは思うけど、「僕の気持ちはわからないよね」と感じてしまいます。

 安易な共感に疑問を呈した石田さん。司会の朴さんは「きれいごとばかりじゃない、生の声です。どう接すればいいのか、わからなくなってしまいますよね。中高生のみなさんにはモヤモヤしてほしい。答えはありません。悩んでほしい」と訴えかけました。


 

「普通の外見になれる手術があったら受けますか?」

 中高生が手を上げて直接質問をする時間もありました。

 

参加者

SNSで「死ね」とか誹謗中傷を書く人がいるけど、どう思いますか?

 

石田さん

僕のインタビュー記事に、心ないコメントを書く人がいました。僕はそう書かれることも覚悟してメディアに出ているので、気にしません。

日常生活もたぶん同じ。友達になろうと僕から声をかけても、拒否する人もいます。そういう人がいることを覚悟しないと、僕は社会に出られなくなってしまいます。

 

参加者

そもそも「自分を受け入れる」ってどういうことですか?

 

神原さん

自分の気持ちに素直になれて、自分をいたわれるようになること。

 

石田さん

このままの自分でいいんだと感じること。

そのためには、成功体験や僕は頑張ったと思えることを積み上げることが大事だと思います。ゴールはないと思います。

 

参加者

100%普通の外見になれる手術があったら受けますか?

 

石田さん

今の生活に満足しているし、自分をまぁまぁいいなと思えているので、受けません。

顔が変わることで、今までの自分を受けて入れてくれていた親や友達がどう思うのかなという気持ちもあります。

ただ、小学生の時のように、すごい苦しい時だったら普通の顔を選択していたかもしれません。

 

三橋さん

すぐに受けますね。あざがない人生ってどんなんだろうと興味があります。

 

「逃げてもいいよ」

 

参加者

中高生時代の自分にかけてあげたい言葉は?

 

三橋さん

今は色々あって大変だろうけど、逃げてもいいよ。

 

石田さん

とことん納得するまで、すっきりするまで考え抜け。考えた末に光りが見えるから。

 

神原さん

親に「かわいい」と言われて育てられてきた。でも、「私はかわいくないもん」と素直に受け取れず、おしつけがましく感じてきた。

そう感じる自分を親不孝だととらえてきたけど、うれしくないのは私の中で自然に生まれた気持ち。だから、「その感情は間違っていないよ、素直でいいよ」と言ってあげたいです。

 

「差別」って何?原因は?

 テーマは「差別とは何か」にまで広がりました。

 

参加者

心ない言葉をかけられたとき、その人がなぜ、そんなことを言うのか考えますか?

 

神原さん

単純に、(アルビノを)よく知らないから。知らないから怖い。

 

石田さん

知らないからだと思うし、相手にも事情があると考えるようにしています。「何かトラウマがあるのではないか」とか。そう考えることで、自分の怒りを抑えることができるので。

 

三橋さん

差別対象になる人がいれば、自分が攻撃されずにすむ。誰を選ぶかとなったとき、人と違う外見の人が標的にされやすいんでしょうね。

 「知らないこと」が差別の原因と、神原さんと石田さんは指摘しました。

 一方で、司会の朴さんは「本当ですか? 知った上で差別的発言をする人っていますよ?」と疑問を投げかけ、会場はモヤモヤした雰囲気に。中高生たちも考え込みます。


 

「接し方、自分流で考えて」

 最後に、当事者3人が中高生にメッセージを送りました。

 

三橋さん

見た目に症状がある人への接し方に決まったやり方はないので、自分流で考えてもらえたらなって思います。

 

神原さん

自分がつらいと感じたら、つらいと言っていい。その感情を認めてあげてください。

 

石田さん

中高生のみんなにも人間関係の悩みやコンプレックスがあると思う。3人の話を、みんなの生活に生かしてもらえたらうれしいです。

 

中高生が感じたこと

 3人の言葉は中高生の心にも響いたようです。彼ら・彼女らが会場で語った感想を紹介します。

 

参加者

私も3人を最初見たとき、「アッ」と驚きました。でも、理解すればそういう偏見もなくなると思う。

芸能人に外見に症状がある人がいれば、世の中が変わるんじゃないでしょうか。

 

参加者

自分も外見に症状があって、いじめられたことがある。

確かに見た目が普通とは違って、人間っぽくないところもあるかもしれない。でも、「僕たちも人間なんだ」と訴えていく必要があります。

 

参加者

関わり方がわからないから遠ざけてしまうのではなくて、見た目の症状も「個性だよね」って軽く感じられるような世の中になってほしい。

 

参加者

「簡単には共感してほしくない」って意見もあって、人間の心理ってよくわからないなって思いました。

 

参加者

三橋さんが「自分最高!」と言っているのを聞いて、そういえば私、自分を好きじゃないなと気づいた。自分を受け入れて、好きになりたいなと思うことができました。
【ミタメトーク! イベントレポート】
(前編)顔の変形やあざ… 悩んだ3人が中高生に伝えた生きるヒント
(後編)「普通の顔になれるなら手術受ける?」見た目問題当事者と真剣トーク

共催:withnews、NPO法人「マイフェイス・マイスタイル」
協力:朝日中高生新聞
撮影:岩井建樹、神戸郁人

連載 「見た目問題」どう向き合う?

その他の連載コンテンツ その他の連載コンテンツ

全連載一覧から探す。 全連載一覧から探す。

PICKUP PR

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます