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母親が「教祖」になる恐怖…石田ひかり、元ギャルモデルと育児を語る

2人娘を育てる俳優・石田ひかりさん(左)と、3児の母で元ギャルママモデルの日菜あこさん。育児に関する本音をぶつけ合いました。
2人娘を育てる俳優・石田ひかりさん(左)と、3児の母で元ギャルママモデルの日菜あこさん。育児に関する本音をぶつけ合いました。

目次

 ギャルママモデルを経て、3児の母になった日菜あこさんと、中学生の2人娘を育てる俳優・石田ひかりさん。ともに「ワンオペ」育児を経験しました。モヤモヤとした思いを抱きながら、周囲にSOSが出せない母親を、どう笑顔にできるのか? 母親が「教祖」になる瞬間と恐怖。ママ友とのちょうどいい距離感。仕事をしながら子育てをする2人が、本音で語り合いました。(編集・構成=withnews編集部・神戸郁人)

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◆石田ひかりさん
1972年、東京都出身。中学時代に芸能界デビュー。大林宣彦監督の映画「ふたり」などで主演を務める。現在はテレビ番組の司会など各方面で活動。中学生の2人娘を育てる。


 

◆日菜あこさん
1984年、福岡県出身。ギャルママ向けファッション雑誌「I LOVE mama」(休刊)で、2009~14年に専属モデルを務めた。現在は「心育児研究家」として講演などを行う。

どうして、ママが制服を?

 日菜さんは20歳の時に長男を、20代半ばで長女と次女を出産しました。現在は子どもたちとの日常をブログで発信し、広く支持を集めています。

 そんな経験から、孤立しがちな若い母親を対象に、育児について学べるセミナーを開催したそうです。どうやら、ちょっと変わった趣向なようで……。

 

石田さん

今は子育て支援のプロジェクトを進めているそうですね。何でも、昨年はセミナーを開いたとか。

 

日菜さん

若いママたち向けの「ママ高」ですね。出席者には、高校生風の制服を身につけてもらいました。

 ママ高は昨年9月~同年末まで、毎月1回開かれ、26~36歳の10人が参加しました。講義以外にも、観光地へ遠足に行ったり、子育ての悩みを共有できる場を設けたりしたそうです。

日菜さんが主宰する育児セミナー「ママ高」メンバーの母親たち。毎回、学校の制服を着て参加した。後列中央が日菜さん。
日菜さんが主宰する育児セミナー「ママ高」メンバーの母親たち。毎回、学校の制服を着て参加した。後列中央が日菜さん。 出典: sinKA提供

 それにしても、なぜ制服を着るのでしょうか?実は、深い理由があるといいます。

 

日菜さん

私は「子育てアドバイザー」という民間資格を持っていて、育児のやり方や心構えを研究しています。講演会で、子どもとの関わり方などについて語ることもあります。

 

日菜さん

同時にママたちから、子育てに関する相談を受けることも、少なくありません。彼女たちは、とてもまじめで一生懸命です。

 

日菜さん

だからこそ疲れ切っていて、いくら知識を詰め込んでも意味がないと、あるとき気づいたんです。

 参加者の中には、10代や20代前半で子どもを授かり、年相応の楽しみを経験出来なかったという人も。そこで日菜さんは「制服を着ることで、ママではない自分を解放して欲しい」と考えたのだそうです。

 

 

石田さん

 
日菜さんも、早くに子どもを産んでいますね。自分の経験が生かされている部分はありますか?

 

日菜さん

はい!実は昔、「子どもが子どもを産んで」などと批判されたことがあるんです。すごくショックで、誰かに子どもを預け、買い物や遊びに出かけるなど、とても出来ませんでした。

 

日菜さん

「自分は楽しんではいけないんだ」という思いが強く、息が詰まってしまうこともありました。だからこそ、先輩ママとして力になれるのでは、と思ったんです。

 月に一度の集まりで元気になれるなら、人の手を借りたっていい――。日菜さんが、ママ高で伝えてきたことです。どんどん服装がおしゃれになるなど、目に見えて明るさを取り戻すお母さんも多かったといいます。

「子育てはほめられないもの」

 日菜さんの言葉に触発され、石田さんも自身の育児体験を語り出します。

 

石田さん

私は31歳の時に長女を産みました。初めての経験で、当然分からないことだらけです。

 

石田さん

母からは「あせもができたら大変よ」と言われていたので、娘が起きるまでずっと側にいました。目を覚ますと、夜中であってもお風呂に入れるなど、毎日必死でしたね。

 

石田さん

ただ、夫は仕事の関係で生活が不規則なため、あまり頼れなかった。母に手伝ってもらうなどして、何とか乗り切れたものの、精神的にきつい時期もありました。
出典: PIXTA

 一方の日菜さん。夫と育児に関する考え方が異なり、やはり1人で子どもと向き合う時間を、多く過ごしていました。モデル時代は3人の子どもと、地元の福岡から上京し、撮影に臨んだといいます。

 

日菜さん

育児は「やって当たり前でしょ」と思われがちで、他人に認められないことが多いんです。

 

日菜さん

でも撮影の時だけは、「可愛いね、すてきだね」とほめてもらえた。石田さん同様、仕事が息抜きになっていましたね。

 

石田さん

分かります!それに、子どもと自分だけの世界って、すごく狭い。小さいうちは口答えもしないので、母親が絶対的な権力を持ってしまう瞬間があります。

 

石田さん

いわば「教祖」みたいなもの。その状況が怖いのもあり、徐々に仕事を再開し、社会とつながるようにしました。

 

日菜さん

子どもと離れる時間を持った方が、逆に優しくなれますもんね。

「ママ友」をつくる意義

 ともに「ワンオペ」状態の育児を経験した2人。行き詰まった時に救いとなったのは、「ママ友」の存在だと口をそろえます。

 石田さんは、娘たちが幼稚園に通っていた頃、よくママ友の手を借りていました。

 仕事で家を空けている間、園への送り迎えを頼んだり、一緒に遊んでもらったり。他のお母さんたちと触れあう機会にもなり、心身両面で助けられたそうです。

 

石田さん

仲の良いお母さんの中には、子どもがパンツをはき忘れてきても、おおらかに笑って済ませてしまう人もいたんです。

 

石田さん

私なら気が気でなくなるだろうから、すごくうらやましかった(笑)。全く違う性格のお母さんと知り合えたのは、とても良かったですね。
出典: PIXTA

 

日菜さん

すてきな話……!私も、育児に苦労している人と話して、共感してもらえた時は本当にうれしかったです。悩みが解消しなくても、分かってもらえるだけで良いんですよね。

 

日菜さん

ママ友がたくさんいると、子どもとの向き合い方について、学べる機会も増えますし。

 

日菜さん

一方で、距離感も大事だと思います。「ママ高」のメンバーたちは、元々私が契約していた雑誌のファンでした。

 

日菜さん

居住地が違うため、幼稚園の事情や、互いの夫の年収といった生々しい話をする必要がありません。だから、楽しい時間だけ共有する関係が築けたんです。

 日々言葉を交わす人、限られた時間しか会わない人。それぞれの立場に応じて、打ち明けられることがあります。選択肢があることで、お母さんの気持ちは楽になるのでしょう。

「ママ高」最終回を迎えた昨年12月、メンバーたちはレンタル品の着物を身につけ、東京・浅草を観光した。雷門の前で満面の笑顔を見せる。
「ママ高」最終回を迎えた昨年12月、メンバーたちはレンタル品の着物を身につけ、東京・浅草を観光した。雷門の前で満面の笑顔を見せる。 出典: sinKA提供

「早く終わらないかな」を「いつか終わってしまう」に

 対談終盤、話題は育児の方法論に。日菜さんは「心でする育児」というスタンスを大事にしている、と語りました。

 

 

日菜さん

 
私は育児をする時、必ず「大好きだよ」という気持ちを込めています。そうすると、「作業」になりがちなおむつ替えも、優しく出来るようになりました。

 

 

日菜さん

 
これを「心でする育児」と呼んでいます。

 

石田さん

その言葉について、別のインタビューで「子どもに優しく出来ない時は『この子を一番大切にするんだった』と思い直している」という趣旨のことをおっしゃっていましたよね?

 

石田さん

私自身、その発想は頭になかったので、すごく響きました!

 

日菜さん

ありがとうございます!一番手っ取り早く改められるのは、やはり自分の構え方なんですよね。

 

日菜さん

子どもが泣きやまない時、その顔をじっくり見て、意外と面白い表情をしているのに気づけた時もあります(笑)。気持ちが変わると、楽に生きられることもあるんです。

 

石田さん

気持ちと言えば、「早く子育てが終わらないかな」ではなく、「この時間はいつか終わってしまう」と思えたら、もっと楽に過ごせたのに……とよく考えます。

 

日菜さん

とてもよく分かります!私の息子は明るい性格で、小さい頃は騒がしい時もあり大変でした。

 

日菜さん

でも当時の動画を見ると、声が高くて可愛い(笑)。今は声変わりしているから、なおさら。いつか聞けなくなると意識していたら、うるさいなんて思わなかったです。

 

石田さん

その気持ちを社会全体で共有できると、もっと良いですね!

 

日菜さん

おっしゃる通りですね。電車の中で泣いている子どもを見て、「今しかない、成長中の姿なんですね」と感じてくれる人が増えたら、すてきだと思います!
出典: PIXTA

安心して命をつなぐために

 育児中のお母さんが置かれる状況は、生やさしいものではありません。一人でわが子と向き合う中で追い込まれ、虐待につながるなど、悲しいニュースもあふれています。

 2人の会話には、お母さん自身の暮らしに役立つヒントが詰まっていると感じました。同時に、当事者たちを取り囲む人々の眼差しこそが変わっていくべきとも思います。

 早い段階で親となったり、人混みで乳飲み子を抱えていたりする男女に、たくさんの温かい手が差し伸べられる。そんな社会でこそ、安心して命をつなぐことが出来るのではないでしょうか。

 子育ての負担や喜びを、多くの人々と分かち合う環境をつくるには、何が必要か。私自身、しっかり考えたいと思わせてくれる対談でした。

(神戸郁人)

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