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あの個性派俳優が泣いた… 「ストイックでぶれない」清原果耶の魅力

女優の清原果耶さん
女優の清原果耶さん

目次

 「あの山田孝之が泣いた」。しかも17歳。取材場所に現れた彼女は、凜(りん)としたオーラをまとっていました。その女優の名は清原果耶。山田さんがプロデューサーに徹した映画「デイアンドナイト」(藤井道人監督)でヒロイン「奈々」を演じています。オーディションのたったワンシーンで評価を決めた清原さん。「演じることは、問答無用で全部楽しめます」。いったいどんな人なのか? 山田さんや「RADWIMPS」の野田洋次郎さんから受けた刺激、演技への思いを聞きました。

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清原果耶さん演じる「奈々」。映画「デイアンドナイト」より ©2019「デイアンドナイト」製作委員会
清原果耶さん演じる「奈々」。映画「デイアンドナイト」より ©2019「デイアンドナイト」製作委員会

4年がかりでできた脚本

 「デイアンドナイト」は、人間の善と悪や二面性がテーマ。主演の阿部進之介さんが企画と原案を手がけた完全なオリジナル作品です。

 清原さんが演じるのは、過酷な運命を背負い、養護施設で暮らす少女の奈々。父の自殺をきっかけに故郷に戻った明石(阿部)と微妙な距離感で支えあう少女です。

 脚本づくりでは、できたばかりのセリフを、主人公の明石は阿部さん、それ以外の登場人物は、奈々を含めてすべて山田さんが声に出して実際に演じ、藤井監督らとその場で改稿していくというユニークな方法をとりました。完成まで4年がかり、28稿まで改稿を重ねたそうです。奈々もこうして山田さん自身が演じて生まれました。

阿部進之介さん演じる「明石」。映画「デイアンドナイト」より ©2019「デイアンドナイト」製作委員会
阿部進之介さん演じる「明石」。映画「デイアンドナイト」より ©2019「デイアンドナイト」製作委員会

500人から選ばれた「圧倒的」な演技

 奈々は唯一、オーディションで決まった主要キャストです。「事前に1枚だけの台本をいただいて、最初はそこから奈々がどんな女の子かくみ取るしかありませんでした」。どこからかみ砕いたらいいのか、手の付けどころも分からずに、「私ならこう演じるという思いでつくったものをオーディションに持っていきました」。

 約500人が応募し、書類選考後のオーディション会場にきた参加者だけでも100人を超えました。山田さんは清原さんの演技を見た時、「圧倒的に奈々だった」と完成報告会見で振り返りました。

 「奈々を見つけたという喜びと、ワンシーンだけなのに、奈々をくみ取ってくれたという喜びで、まさかの泣くという。最初から奈々だった」

映画「デイアンドナイト」をプロデュースした山田孝之さん(右) ©2019「デイアンドナイト」製作委員会
映画「デイアンドナイト」をプロデュースした山田孝之さん(右) ©2019「デイアンドナイト」製作委員会


 当時、清原さんは15歳。「自分が演じる奈々はこうだ」という思いはしっかり持ちながらも、どうすれば奈々になるのか、ずっと迷いながら撮影に入っていたそうです。そんな時、山田さんと対談する機会がありました。

 「山田さんが『清原さん自身が奈々に見えた』と言ってくださった。奈々を生み出したスタッフの皆さんや藤井監督の目には、私の迷いは一切伝わっておらず、見えてもいない雰囲気を山田さんが教えてくださった。私が、ここでくよくよしていても仕方ないと、割り切って自分が思う奈々を演じました」

 「奈々は、優しくて、大人っぽい部分や小悪魔的な部分もあるけれど、ちゃんと子ども心も持っている、という説明はできます。でも、それ以上、奈々の人生を言葉で表すのは難しい。最後まで、明確な答えが見つかったわけではありませんでした」

舞台挨拶に登場した清原さん
舞台挨拶に登場した清原さん

実力派に支えられ「勉強になった」

 キャストは、阿部さんや、孤児たちを児童養護施設で父親のように養う北村役の安藤政信さん、明石の父を自殺に追い込んだ三宅役の田中哲司さんら、実力派の俳優陣が固めています。

 「現場での過ごし方や役へのアプローチの仕方で、勉強になることがたくさんありました。阿部さんはシリアスなシーンを撮る前に、相手役に会わないように距離をとられます。そういう行動をとる方は初めて。私とのシーンでもすごく助かった部分がありましたし、とても新鮮な気持ちで奈々として現場に入ることができました。私もこれからそういった気遣いや配慮ができる女優になれたらと思います」

俳優の田中哲司さん。映画「デイアンドナイト」より ©2019「デイアンドナイト」製作委員会
俳優の田中哲司さん。映画「デイアンドナイト」より ©2019「デイアンドナイト」製作委員会

デビューは朝ドラ

 清原さんは、2014年、「アミューズオーディションフェス2014」で3万2千人を超える応募者の中からグランプリに選ばれました。

 「もともと歌ったり踊ったりすることが好きで、小学生から、ミュージカルスクールに通っていました。中学1年生の夏に、たまたまアミューズのオーディションがありました。家族全員が好きなPerfumeさんがいる事務所がオーディションをやっていると母から聞いて、行ってみようかなって応募しました」

 その審査が進むなかで、女優への思いが形になっていきました。

 2015年、NHK連続テレビ小説「あさが来た」で女優デビューし、主人公の姉に仕える女中を演じた時は中学2年生でした。

 一昨年の映画「3月のライオン前編/後編」で、孤独な将棋のプロ棋士、桐山を支える三姉妹の正義感の強い次女を好演。昨年のNHKのドラマ「透明なゆりかご」では、産婦人科病院で生と死や人間の愛に向き合う看護師見習い役で注目を集めました。やはり公開中の映画「愛唄―約束のナクヒトー」では、ヒロインで病を抱えた天才詩人を演じています。

映画「デイアンドナイト」より ©2019「デイアンドナイト」製作委員会
映画「デイアンドナイト」より ©2019「デイアンドナイト」製作委員会

主題歌に込めた「奈々の感性」

 「デイアンドナイト」では、大野奈々の役名で主題歌「気まぐれ雲」のボーカルにも挑戦しています。ロックバンド「RADWIMPS」の野田洋次郎さんが、親交のある山田さんの依頼で書き下ろしたバラードです。

 山田さんは「『デイアンドナイト』の物語は奈々で終わります。しかし奈々の人生はこれからも続きます。これを表現するため、洋次郎に『奈々の気持ちになって歌詞を書いてほしい』と伝えました」とコメント。清原さんの起用については、野田さんから「ヒロインの子に歌ってもらうのはどう?」と、「素晴らしい提案をもらいました。これ以外に無いと思いました」。

 清原さんは、野田さんから「気まぐれ雲」の入った音源を渡された時、それぞれの登場人物や、奈々のこれからの願いが詰まっている歌詞だと伝えられました。

 「レコーディングでは、覚えている奈々の感性や感覚を頼りに歌いました」という清原さん。「葛藤もたくさんありました。今は、あの時の私にしか出せない声だったり歌だったり、そういったものとして見送るしかないと思っています」

映画「デイアンドナイト」より ©2019「デイアンドナイト」製作委員会
映画「デイアンドナイト」より ©2019「デイアンドナイト」製作委員会


 清原さんは「私の音楽の世界観や技術だけでは、通用しない部分も見えました」と語ります。ですが、藤井監督は「奈々としての清原さんの声を聞いて、映画の中の救いになってくれたような感覚がしました」と語っています。

 映画では、清原さんの透明な歌声がスクリーンのエンドロールを包むように流れます。

 「映画を見た方がどう感じ取ってくださるか、うまく寄り添って映画の一部になることができればいいと願っています」

藤井道人監督(左) ©2019「デイアンドナイト」製作委員会
藤井道人監督(左) ©2019「デイアンドナイト」製作委員会

「役を演じ、向き合う時間が楽しい」

 清原さんにとって女優の醍醐味(だいごみ)とは何なのでしょうか。

 「お芝居が楽しいという思いが、私の中の最前列にあります。役を演じ、役に向き合う時間が楽しい。例えば、悔しいとか、つらい役であっても、演じることについては、問答無用で全部楽しめます。いろんな役者の方々のお芝居を見て、好きだったり、勉強になったり。思うことはたくさんあります。でも、自分の人生を生きるのは自分しかいない。自分のなかでもがいて生きてきたものが自分のすべてになればいい。何事にも必死で挑戦していけたらいいと思っています」

取材を終えて

 取材で清原さんは、「どう演じれば奈々になるのか、最後まで全くつかめませんでした」と語っていました。この言葉に、清原さんのすごさがあると感じました。プロデューサーの山田さんが「最初から奈々だった」と言ってくれても、共演者がどんなに演技を評価しても、周囲の評価とは別に自分自身のぶれない視点をきちんと持っています。

 私の質問の一つひとつに、自分の言葉を選んで丁寧に答えてくれる姿も印象的でした。

 先日は、かつて堀北真希さんや新垣結衣さんらも務めた全国高校サッカー選手権大会の応援マネージャーとして応援ダンスにも挑戦。活動の幅を広げています。「気まぐれ雲」のボーカルでは、「映画の主題歌とは何か」から考え抜いたというストイックさも。
 
 さらなる飛躍が楽しみな17歳です。

映画「デイアンドナイト」公式ページはこちら

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