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2019年01月09日

「ボヘミアン・ラプソディ」100億円突破へ「史実と違う」でもいい!

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 映画「ボヘミアン・ラプソディ」のライブシーン=(C) 2018 Twentieth Century Fox

映画「ボヘミアン・ラプソディ」のライブシーン=(C) 2018 Twentieth Century Fox

 Queen(クイーン)の軌跡を描いた映画「ボヘミアン・ラプソディ」の興行収入100億円、2018年の国内トップが確実な情勢となりました。ゴールデン・グローブ賞で作品賞と主演男優賞を受賞し、アカデミー賞の最有力候補にも躍り出ました。「史実と違う」という意見もありますが、長年のファンには、架空の場面に心を揺さぶられた人も少なくありません。様々な人をひきつける魅力を「俺が何者かは俺が決める」というセリフから読み解きます。

『ボヘミアン・ラプソディ』© 2018 Twentieth Century Fox 上映中 配給:20世紀フォックス映画

『ボヘミアン・ラプソディ』© 2018 Twentieth Century Fox 上映中 配給:20世紀フォックス映画

受賞に「What a night! WOW!」

 2019年1月7日(日本時間)、アメリカの第76回ゴールデン・グローブ賞のドラマ部門で、作品賞と主演男優賞を受賞しました。

 授賞式に出席した、クイーンのメンバーであり、この映画の音楽総指揮をつとめたロジャー・テイラーさんとブライアン・メイさんも、それぞれ自身のインスタグラムに興奮した様子を書き込んでいます。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

What a night! WOW! . . @bohemianrhapsodymovie #goldenglobes2019

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Insane !!! Bri

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「日本映画、NO,1も見えてきました」

 「20世紀フォックス映画」によると、2019年1月6日現在、累計興行収入が84億5716万2480円、累計動員612万3160人です。

 お正月の三が日は、観客動員数と興行収入ともに冬休みシーズンに公開された映画を上回る数字、つまりランキング1位だったそうです。

 同社マーケティング本部長の星野有香さんは、こう見ています。

「興行収入100億円は確実で、2018年に日本で公開された映画のNO,1も見えてきました」

 1970年代や80年代に活躍したロックバンドを描いた映画が、山下智久さん、新垣結衣さんらが出演した「コード・ブルー」や、「名探偵コナン」を上回るということです。

 星野さんは、「ゴールデン・グローブ賞の作品賞を取れた意味は大きいと思います」と語ります。

 公開当初は、批評家の中でも、評価が割れていました。いわばファンの人たちに評価されてきた映画でした。だからこそ、「作品の評価をひっくり返してくれました」と感慨深く話してくれました。

映画「ボヘミアン・ラプソディ」の1シーン

映画「ボヘミアン・ラプソディ」の1シーン

出典: 『ボヘミアン・ラプソディ』 (C) 2018 Twentieth Century Fox 公開中 配給:20世紀フォックス映画

「ファンが見て時系列が違っていても許せちゃう」

 コアなクイーンファンの受け止めを聞きました。

 東京都の大学生、末石美佐希さん(22)は、父親の影響で家の中にクイーンの曲が流れていました。ブライアン・メイのファンで、彼からの手紙を大切に持っています。

 末石さんが見たクイーンのライブは、2013年のサマーソニックと2016年の武道館で、ボーカルは、アダム・ランバートです。リアルなフレディを知らない世代です。

 この映画、14回見に行ったそうです。

 「まずは史実に忠実でないにもかかわらず、それを押しのけるエンターテイメント性があって、ファンが見て時系列が違っていても許せちゃうぐらいの感じでした」

 フレディを演じたラミ・マレックさんについては、こう見ていました。

 「ラミ・マレックが、フレディ本人のまねをしなかったことが、ミソだと思います。フレディの人生から作り出した共同作品ということだと思います」

ゴールデン・グローブ賞の主演男優賞を受賞したラミ・マレックさん。公開前の来日記者会見では、フレディやクイーンへの敬意の言葉が印象的だった

ゴールデン・グローブ賞の主演男優賞を受賞したラミ・マレックさん。公開前の来日記者会見では、フレディやクイーンへの敬意の言葉が印象的だった

出典: 朝日新聞社

フレディの「俺」って

 実は、末石さん、結果的にこの映画製作に少し加わっています。

 2018年7月にwithnewsで配信された記事「クイーン映画予告で目覚めた『意外なファン』 世代を超え人気の理由」の中で語っていた内容が、「20世紀フォックス映画」の目にとまったからです。

 「日本語の字幕です。ブライアンは、一人称なら『ボク』でしょう。フレディとロジャーは『オレ』。ジョンも『ボク』かな。翻訳は気をつけて欲しいですね」

 クイーンファンを軸にしたプロモーション戦略を考えていた「20世紀フォックス映画」の星野さんは、日本語字幕監修をした増田勇一さんに相談し、それ以降の予告編や宣伝、本編の表現を、「フレディを俺、ブライアンを僕」に統一していったそうです。

「クイーンと我々日本人の40数年に渡る親密な関係の集大成」

 1970年代から来日公演に通ってきた東京都の吉田仁志さん(56)は「観る人それぞれが、いろんな観方ができる作品だからだと思います」と語ります。

 「長いファンは、自分がこれまでクイーンと過ごした日々を作品に重ねて観ることができたと思います。今までクイーンをよく知らなかった人は、フレディやバンドの生き様から新鮮な驚きを受けたと思います」

 ただ、前提として、日本ではどの世代にもクイーンの曲が刷り込まれていたということがあったからだとも。

 「この大ヒットは、いわば、クイーンと我々日本人の、40数年に渡る親密な関係の集大成なのかなと感じています」と見ています。

ブライアン・メイ役を演じたグウィリム・リーさん

ブライアン・メイ役を演じたグウィリム・リーさん

出典: 朝日新聞社

「何度行ってもみんな周りの人が泣いています」

 中高生の頃からファンのフリージャーナリスト猪熊弘子さん(53)は、すでに9回見に行っています。

 「誰もがみんな『世界の中に居場所がない』と感じていて、クイーンとフレディの生き方を観て、自分に投影するんだろうなぁと思います」

 劇場での周囲の様子についても、このような見方をしていました。

 「何度行っても、みんな周りの人が泣いています。そして口々に『観るたびに泣いちゃうんだよね』ってみんな言っています。こんなことは、自分の人生で、過去に一度もありませんでした」

HIVのカミングアウトに胸打たれる

 どのシーンが印象に残ったのかを聞くと、史実ではないと言われているシーンが挙がりました。

 猪熊さんは、ライブ・エイドのためのリハーサルで、フレディが、HIVであることを3人に告白するシーンです。猪熊さんは、英語でのセリフが心に刺さったと言います。日本語字幕だとこのようなシーンです。

 「残された時間で音楽をつくる。これが俺の望みだ」
 
 「俺が何者かは俺が決める」

 フレディのとても重い言葉です。

 3人も、涙ぐみながら、声をかけます。

 「お前は伝説だ。俺たち全員のね……」

 4人は肩や腰に手を回して抱き合います。

 「ファンからすると、救いようがないくらいの悲しみです。でも、きっとああいう会話があったんだろう、とも思うし、ああいう会話であってほしい、と思います」

ジョン・ディーコン役のジョー・マッゼロさん

ジョン・ディーコン役のジョー・マッゼロさん

出典: 朝日新聞社

電気スタンドのスイッチをカチャカチャ

 吉田さんは、「フレディが、隣のアパートに住むメアリーに電話してもいなくて、それでも諦め切れずに電気スタンドをカチカチやって光らせて窓を見上げるところかな」と言います。

 「フレディの抱えていた苦悩は、孤独感にしてもマイノリティにしても病気にしても、並みのものではなかったと思います」

 「その一方では、ステージにしてもレコードセールスにしても、それこそとんでもない賞賛を受けていた訳で、それこそ自分は何者なのかを自問自答し続けた人生だったのではないでしょうか」

閲覧回数トップ20の3分の2がクイーン関連

 クイーンを日本に紹介したロック専門誌「MUSIC LIFE」(休刊)を発行していたシンコーミュージック・エンタテイメント。

 同社の阿部裕行さんによると、2018年4月にスタートしたweb「MUSIC LIFE CLUB」(ミュージック・ライフ・クラブ)のニュース記事閲覧回数のトップ20のうち、3分の2ほどがクイーン関連記事だったそうです。

 「メルマガ会員も、4~5倍に増えました。みなさん、クイーンに関する記事や映像を探しているんです」

 同社では、2月14日に『クイーン詩集 完全版』を、15日に『クイーン ライヴ・ツアー・イン・ジャパン 1975-1985』を発売します。

「MUSIC LIFE CLUB」のニュースサイトには、クイーンの記事があふれている

スタンディングOKのライブスタイル上映始まる

 映画上映も変化が出ています。

 年末年始に、千葉県成田市の「成田HUMAXシネマズ」で行われた「応援上映」の一部では、「スタンディングOK」に。観客は、IMAXの巨大スクリーンで、ライブ・エイドのシーンの臨場感を味わいました。

 東京都立川市の「シネマシティ」でも、1月12日夜の上映に限定し、極上音響での「ライブスタイル上映」を行います。8日午前0時に会員向けの先行予約を開始したところ、5分で売り切れました。映画館へ、今後の「ライブスタイル上映」への問い合わせが多く、来週以降の開催の検討を始めています。

 番組担当の椿原敦一郎さんは、こう話します。

 「これまでフルライブ作品での『ライブスタイル上映』はやってきましたが、劇映画では始めてです。これだけ大きくなったので、やらないわけにはいきません」

 ロードショー上映を行わない鹿児島県奄美市にある映画館「シネマパニック」でも2月9日から3月17日の土日と祝日に原則1日2回上映することが決まりました。1スクリーンしなない映画館。座席数は54席。前売りや予約はありません。

 映画担当の武原正明さんは、こう話します。

 「『鹿児島までボヘミアン・ラプソディを見に行ってきました』という話しも聞いていました。どうしても1スクリーンしかないので、取捨選択をしなくてはいけません。鹿児島でもお客が入っているということで、3カ月遅れですが、奄美でも上映することになりました」

立川「シネマシティー」の極恩での「ライブスタイル上映」は5分で予約が埋まってしまった。多様な見方が広まっている

立川「シネマシティー」の極恩での「ライブスタイル上映」は5分で予約が埋まってしまった。多様な見方が広まっている

「辺野古」巡りブライアンがつぶやく

 ゴールデン・グローブ賞の発表があった1月6日(アメリカ時間)、ブライアン・メイさんがツイッターでつぶやいたことが話題になりました。


 「美しい珊瑚礁とかけがえのない生態系を守るため、サインしてください」(https://twitter.com/DrBrianMay/status/1081962521819398144?s=07)などとつぶやいています。他の人のツイートを見つけ、コメントを付けてリツイートしたものです。

 短文のため、詳しくは分かりませんが、自然保護の立場からのようです。
 
 サインは、アメリカ海兵隊が使用する普天間飛行場を移設するため、日本政府によって沖縄県名護市辺野古の沿岸部で行われている埋め立てを、使用する予定のアメリカ大統領に、2月24日に投開票が行われる県民投票まで中止するように求める請願のことです。

 1月8日午前0時現在、1万4209件のリツイートと1万8547件のいいねボタンが押され、拡散されています。

 ブライアン・メイさんは、天体物理学者でもあります。過去にも自然保護に関わるテーマについて発言したことがありました。

 そのためか、クイーンのファンからは「信念の人なのですね」という声も聞こえてきますが、クイーンファンたちは静かに見守る人が多いようです。

 映画「ボヘミアン・ラプソディ」自体も、フレディを通して、移民、LGBT、宗教、容姿などによる差別、マイノリティの苦悩を色濃く描き出しています。

 それとともに、メアリーとの愛、そして友情、クイーンのメンバーによる包摂といった、とても現代的な解答を示してくれているとも言えます。

 クイーンの母国イギリスでは今、EU離脱のためのブレグジット協定を巡り、議会での承認が得られず、協定なき離脱を迎えようとしています。離脱の原因の一つが、難民受け入れでした。

 この映画で一番の興行収入を上げたアメリカでも、中米からの移民流入阻止や、国内に在留する不法移民について、厳しい政策がとられています。LGBTにも保守的な風がふいています。

 分断社会。

 不寛容な社会。

 その危惧が、映画から伝わるメッセージと私たちの実社会が重なる、それこそが、社会の空気感とマッチしていいるということではないでしょうか。

 「俺が何者かは俺が決める」

 映画で出てきたフレディのとても重い言葉です。ゴールデン・グローブ賞の知らせを聞き、私たちも、そう言えるようにありたいとあらためて思いました。

「多様性に寛容な社会」について、みなさんの意見、経験をお寄せください

 フレディが抱えていた、移民やLGBT、容姿、宗教といったことによる偏見や差別といった問題は、今もニュースをにぎわせているようにホットな話題です。多様性に寛容な社会への道のりは容易ではなく、揺り戻しもあるでしょう。

 こういった問題や多様性に寛容な社会、外国人との共生について、どう考えますか。皆さんの経験、意見、提案を投稿してください。

 投稿はメール、FAX、手紙で500字以内。匿名は不可とします。住所、氏名、年齢、性別、職業、電話番号を明記してください。

     ◇

〒104・8661
東京・晴海郵便局私書箱300号
「声・多様性社会」係
メール koe@asahi.com
FAX 0570・013579/03・3248・0355

レア中のレアアイテム フレディ追悼コンサートのチケット
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フレディ追悼コンサートのチケット。写真の「お宝」は、すべてファンの吉田仁志さん所蔵のもの。
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出典:朝日新聞社
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