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2018年11月03日

見た目はマンボウ、謎の「世界一重い硬骨魚」漁獲されたのは「千葉」

  • 140127

「世界最重量の硬骨魚」は「マンボウ」ではなく……。

「世界最重量の硬骨魚」は「マンボウ」ではなく……。

出典: 鴨川シーワールド提供

 千葉県のみなさん、聞いてください。ネットでネタにされやすいくせに、生態が謎だらけのマンボウ。そんなマンボウの仲間である「ウシマンボウ」が、このたび、ギネス世界記録TM で「世界一重い硬骨魚」に認定されました。認定されたのは、「1996年に漁獲された千葉県の個体」とのこと。マンボウを長年研究してきた研究者は「マンボウ界にとっては大ニュース」と語ります。どういうことなのでしょうか。

「世界一重い硬骨魚」は千葉県で漁獲されていた

 丸みを帯びた形とゆったり泳ぐ姿で、水族館でも人気の魚、マンボウ。大きいものだと3メートルにも成長するといわれています。

 そんなマンボウの仲間である「ウシマンボウ」が、2018年9月にギネス世界記録のホームページ上で「世界最重量の硬骨魚」に認定されました。

2018年9月に更新されたギネス世界記録「Heaviest bony fish(=世界最重量の硬骨魚)」のページ(2018年11月時点)

2018年9月に更新されたギネス世界記録「Heaviest bony fish(=世界最重量の硬骨魚)」のページ(2018年11月時点)

出典:ギネス世界記録

 硬骨魚とは、エイやサメなどを除いた硬い骨格を持つ魚のこと。ウシマンボウは、マンボウと同じマンボウ属に属する魚です。ウシマンボウは一般的な魚の尾びれにあたる「舵びれ」が丸みを帯びており、波打つ形状のマンボウとは異なります。他にも、ウシマンボウには頭部や下あごの下がでっぱるという独特の特徴があります。

 このたび世界一に認定された個体の重さは2.3トン。1996年8月、千葉県鴨川市沖で漁獲されました。鴨川シーワールド(千葉県鴨川市)の職員が、定置網に紛れ込んでいた個体を調査した記録が、「世界一」として認定されたのです。

発見当時「巨大マンボウと呼んでいました」

 鴨川シーワールドに勤める魚類展示課の大澤彰久さんによると、「20年以上前のことで、記憶が薄れている部分もありますが」と言いながらも、当時のことを教えてくれました。

 「漁協から連絡があり漁港に行ってみると、そこにいたのはとても大きなマンボウ。クレーンで持ち上げるのも大変だったのが印象的です」

「世界最重量の硬骨魚」と認定された2.3トンのウシマンボウ

「世界最重量の硬骨魚」と認定された2.3トンのウシマンボウ

出典: 鴨川シーワールド提供

 鴨川シーワールドは、もともと鴨川市の漁業協同組合と関係が深く、漁協の方から珍しい魚の情報や水族館で展示する魚を提供してもらったりしてきました。大澤さんは「記録が残せたのは、漁協の協力が大きい」と話します。

 水族館と漁協が身近なポイントは、定置網漁という漁法にあります。海流にのって流れてきた魚をゆっくり船上に上げるため、魚へのダメージも少なく、スムーズな展示につながっているそうです。

 大澤さんによると、通常、鴨川市周辺の海では秋から春にかけて、1m程度のマンボウが回遊しているといいます。ところが、1996年の夏は特別で、今回のウシマンボウ(2.72m)が漁獲された日の前後にも、大きな個体がよく見つかっていたそうです。

鴨川沖の定置網漁のようす=鴨川シーワールドの説明パネルより

鴨川沖の定置網漁のようす=鴨川シーワールドの説明パネルより

出典: 鴨川シーワールド提供

 「形からマンボウなのは歴然でした、しかしこの時期の大きなマンボウはおでこの部分がふくらんでいて、舵びれも特徴的でした。同僚とは『巨大マンボウ』なんて呼んでいましたね」

 実はこの個体、ギネスには「ウシマンボウ」として認定されていますが、1996年に漁獲された時点では、「マンボウ」だったのです。

 一体、どういうことでしょうか。

「マンボウ」と勘違いされてきた「ウシマンボウ」

 マンボウは知名度が高い一方、生態は謎だらけです。繁殖や産卵についての知見はほとんどなく、分類についてわかってきたのもごく最近です。
 
 現在「マンボウ属」には、全部で3種の魚が属することがわかっています。水族館でよく見られ、最も有名な「マンボウ(Mola mola)」。今回の主役である「ウシマンボウ(Mola alexandrini)」。最後の「カクレマンボウ(Mola tecta)」が新種として発表されたのは、2017年になってからでした。

マンボウ属3種の成魚の見分け方

マンボウ属3種の成魚の見分け方

出典: 澤井悦郎さん提供

 「ウシマンボウ」が標準和名として提唱されたのは2010年。つまり1996年の時点では、ウシマンボウがマンボウの別種として認識されていなかたったため、必然的に鴨川の個体は「マンボウ」とされていたのです。

 マンボウ属を研究している「マンボウのひみつ」の著者、澤井悦郎さん(マンボウなんでも博物館)は、「鴨川の個体を『ウシマンボウ』と同定し、かつてのギネス世界記録を超えていたことを、2017年に出した論文を根拠にギネス世界記録に修正依頼を出した」と話します。

 鴨川の個体が認定されるまで、「世界一重い硬骨魚」とされていたのは「オーストラリアのマンボウ」でした。しかし、澤井さんによると、「この個体も調べてみると、実は『ウシマンボウ』でした」。

 分類が再検討されたのが最近のため、マンボウ属の魚は世界中で今も混同され続けているといいます。

マンボウ属の魅力や正しい知識、知って

 今回、「ウシマンボウ」がギネス世界記録に認定されたことについて、澤井さんはこう話します。

 「ギネス世界記録が『ウシマンボウ』を認知したことで、マンボウにも仲間がいることが一般の人々にも伝わりやすく、将来的に種の混同を減らすことにつながります。マンボウ界にとって大きなニュースです。また鴨川シーワールドは、マンボウの飼育日数2,993日という、世界最長の記録を持っており、千葉県はマンボウの象徴的な場所になりそうです」

 また鴨川シーワールドの大澤さんは、「魚類の飼育に携わる者としても、わからないことが解明されていくのはうれしいことです。それと同時に水族館に来てくれたお客様にも、魅力を伝えていきたい。鴨川シーワールドにいるのは『マンボウ』ですが、ぜひ泳いでいる姿を生で見に来てほしいです」。

マンボウの水槽の前に設置されているパネル

マンボウの水槽の前に設置されているパネル

出典: 鴨川シーワールド提供

 鴨川シーワールドのマンボウの水槽の前には、巨大なウシマンボウの写真も展示されているそうです。足を運んだ際に探してみてはいかがでしょうか。謎の多いマンボウの世界、これからも新しい発見がありそうです。

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