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連載

#61 #withyou ~きみとともに~

COACH…じゃなくて「高知の財布」注文殺到 不登校の才能開花

よく見ると「高知」の財布
よく見ると「高知」の財布

目次

 米ブランド「COACH」ならぬ「高知」の財布? ユニークな財布が今、SNSで話題になっています。デザインしたのは高知県出身のアーティスト・中島匠一さん(24)。学校になじめずフリースクールに通っていた時、先生の一言が後押しとなりアートの世界に入りました。「決められた人生じゃなくていいと、不登校の人に知ってほしい」。中島さんに「高知の財布」への思いを聞きました。(朝日新聞高知総局記者・森岡みづほ)

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COACHや思ったら……

 「COACHや思ったら高知やった」。11日朝、お笑い芸人「ノンスタイル」の石田明さんのツイートは瞬く間に拡散され、現在約18万いいね、3万リツイートされています。

 丸みを帯びてデフォルメされた「高知」の文字がエレガントな財布。ブランド「高知の財布」が販売しています。販売を始めた8月当初は3日に1個売れるか売れないかだったのが、石田さんのツイートをきっかけに全国から注文が殺到。現在受け付けているだけで6千個の注文が来て、今は入荷待ちの状態です。

 「高知県は『どんな生き方をしてもいいんだ』と思わせてくれたところ。高知県を盛り上げて、恩返しがしたい」とデザインした中島さんは話します。



自分はこのままでいい

 中島さんは転勤族の父に連れられ、全国を転々としていました。小学校から高校まで、高知県で過ごします。

 小学校のころから、団体行動ができず、周りになじめなかった中島さん。体も弱く、学校を休みがちでした。中学のころ、不登校になります。高校からは、市内のフリースクールに通い始めました。

 そこで出会った先生が「アートをしたい」という夢を後押ししてくれました。周りになじめないことも肯定してくれ、初めて「自分はこのままでいいんだ」と思えたといいます。

 大阪芸術大学に進学し、お客さんも体験する形の芸術「インスタレーションアート」を学んだ中島さん。卒業後、高知県に帰ったとき、過疎化が進む高知県の存在感を上げたいと思いました。

 「高知県のブランドを立ち上げて、知名度を上げよう」と思いつきます。お客さんが商品を買うことで、ブランドの価値がどんどん上がる。そこがアートだと考えたのです。

デザインした中島匠一さん
デザインした中島匠一さん

ヨーロピアンでエレガントに

 2017年8月から、自宅で「高知」の文字のデザインを始めました。ブランドとして付加価値をつけられるよう「ヨーロピアンでエレガント」なデザインを考えました。

 完成したデザインを知人に見てもらったところ、「(米ブランドの)COACHじゃないんだ」と言われ、初めて「高知」と「COACH」が似ていることに気づいたといいます。

 今年7月、商品化するため、中島さんは単身中国の広州に渡り、工場を手配します。完成した財布約200個を持って、帰国。8月から販売を始めました。

 販売やホームページの立ち上げ、発送の手配をしたのは高知工科大学で経営マネジメントを学ぶ海斗さん(19)。小学生のころから体の弱い兄を見て、「兄の夢を支えたい」と思っていたといいます。コンサルタントの相談をあおぎながら、流通網をつくっていきました。

中島さん(右)と弟の海斗さん
中島さん(右)と弟の海斗さん

転機はよさこい祭り

 はじめは知名度が低かった「高知の財布」。転機は8月9~12日に開かれた「よさこい祭り」です。地元テレビのゲストとしてノンスタイルの石田さんが訪れていました。高知市中心部の高知大丸で財布を売っていた中島さんにフリースクール時代の友人が「今近くに石田さんがいる。石田さんに財布を渡そうよ」と誘います。

 CMの間の1分30秒間に財布を手渡しました。「え、くれるん」と石田さんはよろこんでくれました。そして翌日、財布のツイートをしてくれました。

 「石田フィーバー」に、中島さんも海斗さんも驚きを隠せません。2人でやっているので、問い合わせの返信が遅れていることが申し訳なく、予定通りに発送できるかも不安だといいます。

 それでも、「高知の縁でここまで知ってもらえた。広まっていくのがうれしい」。ブランドは財布のほか、靴、折りたたみ傘、スマホケースなどがありますが、今は財布の発注に集中している状態です。

様々な「高知」グッズ
様々な「高知」グッズ

決められた人生じゃなくていい

 高知県のPRとともに伝えたいことがもう一つ。

 「学校に行って、仕事をして、という決められた人生じゃなくていい。自分もブランドをつくりたいと思ったらつくれるんだって、不登校の人に知ってほしい」。

 これからもブランドの法人化や、高知県産の鹿皮を使った財布の作製など、夢はふくらみます。

 

 withnewsは4月から、生きづらさを抱える10代への企画「#withyou」を始めました。日本の若い人たちに届いてほしいと、「#きみとともに」もつけて発信していきます。以下のツイートボタンで、みなさんの生きづらさも聞かせてください。


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・24時間こどもSOSダイヤル 0120-0-78310(なやみ言おう)
・こどものSOS相談窓口(文部科学省サイト
・いのち支える窓口一覧(自殺総合対策推進センターサイト

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