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2018年07月19日

クイーン映画予告で目覚めた「意外なファン」 世代を超え人気の理由

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映画「ボヘミアン・ラプソディ」の1シーン 日本は11月9日全国ロードショー 🄫 2018 Twentieth Century Fox

映画「ボヘミアン・ラプソディ」の1シーン 日本は11月9日全国ロードショー 🄫 2018 Twentieth Century Fox

 QUEEN(クイーン)って知っていますか? 1973年にデビューした伝説の世界的ロックバンド。今年5月に代表曲から名前をとった映画「ボヘミアン・ラプソディ」の予告編がYouTubeで公開されると全世界で1500万回を超える再生回数を記録しました。これをきっかけにApple Musicのストリーミングも上昇。その半分以上が18歳から34歳。7月17日にYouTubeに公開された予告編第2弾も高評価を得ています。アラフィフだけでなく若者もひきつける魅力とは? 世代を超えて愛されるクイーンの秘密を探りました。

5月15日にYouTubeに公開された映画『ボヘミアン・ラプソディ』の予告編第1弾

出典:20thFOXjp

LIVE AIDを再現

 映画「ボヘミアン・ラプソディ」の予告編は5月15日、YouTubeにある20世紀FOXのチャンネルやクイーンの公式チャンネルで公開されました。1分29秒の動画は、20世紀FOXのチャンネルだけでも、2カ月で再生回数が日本語版で50万回、英語版で1462万回に上りました。「高く評価」のボタンを押した人も、日本語版では900人を超えた程度ですが、英語版では35万人に達しています。

 ライブでフレディ・マーキュリーと聴衆が掛け合うコールアンドレスポンス、「Ay Oh!」で始まり、BGMとともにライブやスタジオ風景を早いカット割りで展開していく動画は、まぎれもなくクイーンです。

 ファンは2010年ごろから映画製作がスタートしていたことは知っていましたが、今年11月の公開が決まり、予告編が流れると予想を超える反応が起きているようです。

7月17日にYouTubeに公開された映画『ボヘミアン・ラプソディ』の予告編第2弾

出典:20thFOXjp

「ドンドンパッ」が心臓の鼓動のよう

 7月17日には「ボヘミアン・ラプソディ」の予告編第2弾がYouTubeで公開されました。20世紀FOXのチャンネルだけでも、日本時間で18日21時時点で、再生回数は英語版が300万回を超え、「高い評価」のボタンも2.7万人が押しています。

 英語版で2分30秒、日本語版で2分23秒の予告編第2弾は、本編を予感させる内容になっており、早くも、YouTubeのコメント欄には書き込みが相次いでいます。

 「若かりし頃のQueenを現代に蘇らせてくれてありがとう」

 「グッとくる。絶対泣けるね。最後の『ドンドンパッ』が心臓の鼓動のように聴こえるのも良い」

 「2:15でのRadio GAGAで手を掲げるシーン好き フレディからこんな風に見えてたんだろうなぁ」

 同じ動画はクイーンの公式チャンネル「Queen Official」でも同時公開されており、こちらも18日21時時点で再生回数が53万回を超え、「高い評価」のボタンを押した人はファンが見ているだけあり、3万人と高い数字を示しています。

映画で流れる曲もこだわりの作り込み

 日本での配給会社「20世紀フォックス映画」マーケティング本部長の星野有香さんも、アラフィフの「クイーン世代」です。映画に出てくる1985年のライブ・エイドのシーンは、「高校生の頃、テレビで興奮して見ていた記憶を思い出しました」といいます。

 今回公開される映画は、2時間強。「ライブ・エイド」までのクイーンが演じられ、日本に関連したエピソードもあるそうです。

 音楽総指揮は、今もクイーンとして活動するブライアン・メイとロジャー・テイラー。映画に挿入される曲数は約30曲あり、映画で流れる歌声は、フレディと、「Queen + Adam Lambert」でツアーを回っているアダム・ランバート、そして、この映画のフレディ役ラミ・マレックの3人の歌声をマッシュアップしており、映像とともに自然に耳に入ってくるように作り込みされているといいます。

映画「ボヘミアン・ラプソディ」の1シーン 日本は11月9日全国ロードショー 🄫 2018 Twentieth Century Fox

映画「ボヘミアン・ラプソディ」の1シーン 日本は11月9日全国ロードショー 🄫 2018 Twentieth Century Fox

伝記映画ではありません

 ウェンブリー・スタジアムなどのライブ映像なども、この映画のオリジナルとして撮影したそうです。

 「伝記映画といった報道もありますが、これはミュージック・エンターテイメントです。フレディ・マーキュリーという偉人のドキュメンタリーではありません」

 星野さんは、この映画の企画書の冒頭に書かれているフレディの言葉を紹介します。

僕はアリーナの最後列の人たち、入場できなかった人たち、シャイな人たちのために常に歌ってつながっているんだ。批評家やいじめっ子たちを飛び越えられることを見せるんだ。僕にそれが出来れば、誰にだってやりたいことは出来るはず

出典: 映画「ボヘミアン・ラプソディ」の企画書から引用

YouTubeの公式チャンネル「Queen Official」で公開されている「Bohemian Rhapsody」

出典:Queen Official

コアなファン以外に関心持たれる理由

 20世紀フォックス映画によると、Apple Musicでは、クイーンの曲が全世界で1日平均65万回ストリーミングされていますが、5月の予告編がYouTubeで公開されると、120万回に跳ね上がり、その後も1日平均95万~100万回が続いたそうです。その59%は18歳から34歳でした。全世界の都市別ストリーミング回数比較では、日本の東京が、ニューヨーク、ロンドンに次いで3位といいます。

 日本でも、コアなファン以外にも関心が持たれていると見ています。その理由について星野さんは、こう語ります。

 「フレディは孤独でした。当時のイギリスで、移民であり、様々なコンプレックスを抱えながらも、エンターテイナーになるという夢をかなえようとしました。社会の隅っこにいて、スタジアムに入れない人たちのために、クイーンは音楽を通じて、人々とつながろうとしたのです。今、世界では、人種差別や自分と違う人ものを排除しようという動きがあります」

 「まだ映画の予告編ですが、それでも多くの人に視聴されているのは、フレディが、音楽を通じて人々とつながっていったのだから、今、家にこもってスマートフォンの画像でユーチューブを見ている若い人たちも前に出てこられる、ひとりぼっちではない、自分がなりたいものになれる、というメッセージが伝わっているからではないでしょうか」

映画「ボヘミアン・ラプソディ」のちらしの一部

映画「ボヘミアン・ラプソディ」のちらしの一部

フレディを知らない世代は?

 東京都の大学生、末石美佐希さん(22)は、父親の影響で5歳ぐらいから家の中にクイーンの曲が流れていたそうです。ブライアン・メイのファンで、彼からの手紙を大切に持っています。

 「13歳の時、家にあったクイーンの特番を録画したDVDを見た時でした。曲作り、ライブ風景……。それからはまってしまいました」

 CDを買い集め、インターネットの検索でエピソードや画像を調べていき、どんどん引き込まれていったそうです。

 「メンバーがインタビューに応えている様子は、とても知的。尖っているロッカーは色々いると思いますが、不思議な知的さがありました。この人たちはすごく考えて音楽を作っていることが分かりました」

 ハンガリー・ブダペストでのライブを見ると、「圧倒された」と言います。

 「フレディのパフォーマンスが圧倒的にすごくて、なぜか目で追ってしまう」

 フレディは、1991年に亡くなりました。末石さんが見たクイーンのライブは、2013年のサマーソニックと2016年の武道館。ボーカルは、アダム・ランバートです。

 「みんな歳をとったけど、それでもクイーンの世界観を保っていました。フレディはもういないですが、ライブでは圧倒されました」

末石美佐希さんが、ブライアンからもらった手紙とサマソニのライブの時の銀テープ=末石さん提供

末石美佐希さんが、ブライアンからもらった手紙とサマソニのライブの時の銀テープ=末石さん提供

段ボールに詰め込まれたクイーンとの日々

 洋楽ブームだった1976年春、ラジオ番組を聴く中で、「ボヘミアン・ラプソディ」に出会ったという東京都に住む公務員の吉田仁志さん(56)。自宅には段ボール箱2つに、思い出のグッズや新聞、雑誌の記事が詰め込まれています。

 1985年に最後に4人で来日した時のチケットの半券。1991年11月25日のフレディの死去を報じる新聞。度々特集が組まれた雑誌「MUSIC LIFE」……。

 映画についてはブライアンが時々ツイッターで製作についてつぶやいていたのをチェックしていたという吉田さん。予告編を見た時は「やっとできたんだ」という安堵感があったといいます。

 吉田さんは「クイーンの魅力って、1曲の濃さかな」と表現します。

 ハーモニーやギターなど、色々な音を自分たちでテープがすり切れるぐらいに重ねる、作り込みだといいます。

 4人そろった日本でのライブは、1979年から1985年までに5回行き、フレディ亡き後も、クイーン関連の来日公演はほぼ駆け付けているそうです。

吉田仁志さんが大切にしている1979年に日本武道館で開かれたライブチケットの半券=吉田さん提供

吉田仁志さんが大切にしている1979年に日本武道館で開かれたライブチケットの半券=吉田さん提供

中学校の給食の時間に流れたクイーン

 フリージャーナリストの猪熊弘子さん(53)は1978年、中学1年生の時、放送委員の先輩が給食の時間に校内放送で流していた「Killer Queen」が耳に残ったそうです。

 「すごく変わった曲だな」

 猪熊さん自身、小学生から合唱をやっていたこともあり、特にクイーンのコーラスに引きつけられたと言います。

 「ピアノを習っていて、クラシックも好きだったので、オペラやオーケストラ的な要素があるクイーンのハモりがとても好きでした」

 高校では、親しい友だちはみんなロックが大好き。誰かが「Somebody to Love」を歌い出すと、自然とゴスペル風にみんながハモって歌い出す、そんな青春時代を過ごしたそうです。大学生になって東京で暮らすようになってからも、高校時代の友人と1985年の武道館コンサートに駆け付け、2階の最前列で観たことは一番の思い出です。

 フレディが亡くなった直後に、仕事でロンドンに行った時には、オックスフォード通りにあったHMVで関連本を買いあさり、今も大切に持っています。

フレディの死後、猪熊弘子さんがロンドンで買い集めた関連本

フレディの死後、猪熊弘子さんがロンドンで買い集めた関連本

マイノリティーと社会考えさせられた

 「当時は今と違い、フレディのような性的マイノリティーに対して、社会はまだまだ差別的に見ていたと思います」

 こう振り返る猪熊さんですが、今回の映画については「若い子が見るのでは……」という感触があるそうです。

 「私の息子も、マンガ『ジョジョの奇妙な冒険』の影響で、クイーンの曲を知っていて、よく聴いています。映画も観に行くと言っています。フレディをリアルに知らない世代も、曲をきっかけにしてこの映画を見るのではないでしょうか」

 「特に世界中のスポーツの表彰式でBGMに『We Are the Champions』が使われ、大リーグ中継でも『We will rock you』が流れてきます。ファンでなくても誰でも世界中の人が知っています。こういう使われ方を意図して作った曲ではありませんが、今でも愛され続けている秘訣の一つなのかもしれません」

 「クイーンはアナログ録音の時代に重ね録音をして曲を作り上げていました。アコースティックで芸術的だけど、ものすごくデジタル的でもあります」

フレディが亡くなったことを報じる1991年11月25日の朝日新聞夕刊

フレディが亡くなったことを報じる1991年11月25日の朝日新聞夕刊

世界中を追っかけできる時代に

 50代の吉田さんも、猪熊さんも、「この10年、ますますクイーンが好きになってきている」といいます。

 なぜでしょうか?

 特に大きいのは、ツイッターなどSNSの存在だと言います。

 「世界中のどこかでライブがあれば、知らない誰かが、ライブ・ストリーミングをしてくれています。ブライアンはツイッターやインスタグラムに投稿していて、ファンにメッセージを返してくれることもあります。インターネットのおかげで、今は世界をまたにかけて『追っかけ』をしています。ツアー中は、朝5時ぐらいからお弁当を作りながらライブ・ストリーミングを聴いたり見たりすることもあります」(猪熊さん)

 「一生クイーンでしょう!」(吉田さん)

ツイッターで世界のファンを通じて追っかけができるのは、今の時代ならでは

ツイッターで世界のファンを通じて追っかけができるのは、今の時代ならでは

日本語字幕 性格反映して

 今では、アラフィフの「クイーン世代」にも負けないくらいの「クイーン」ファンになった大学生の末石さん。

 ファンならではの心配もあるそうです。

 「日本語の字幕です。ブライアンは、一人称なら『ボク』でしょう。フレディとロジャーは『オレ』。ジョンも『ボク』かな。翻訳は気をつけて欲しいですね」

 「いくら本編が愛に満ちていて、妥協がなくても、翻訳一つで印象は変わってしまうこともあります。4人の性格を見極めて翻訳して欲しいです。それが難しいなら、英語のオリジナル版を見たいと思います」



出典:ブライアン・メイの公式ツイッター

応援上映も

 今回の映画では、「Bohemian Rhapsody」をライブの観客が一緒に歌うシーンに、声で参加できる企画も盛り込まれました。スマホやタブレットのアプリを通じて集められた観客の歌声も映画の一部になります。

 20世紀フォックス映画では、インド映画「バーフバリ 伝説誕生」のように映像と呼応して見ている人たちがかけ声をかけるような「応援上映」のような雰囲気になるのではないか、と期待しています。

 公開日はイギリスが10月24日、アメリカが11月2日、日本が11月9日。

みなさんの声を聞かせてください

 朝日新聞の「声」欄では、みなさんの投稿を募集しています。
 投稿はメール、FAX、手紙で500字以内。匿名は不可とします。
 住所、氏名、年齢、性別、職業、電話番号を明記してください。
 〒104-8661東京・晴海郵便局私書箱300号「声」係
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 FAX・0570・013579/03・3248・0355

1979年クイーン武道館ライブのチケット半券・フレディ死去の新聞
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1979年の武道館ライブのチケットの半券
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出典:吉田仁志さん提供
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