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2018年03月26日

銭湯、なぜ今ブーム? サービス重視と昭和萌え 無類のマニアが激論

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銭湯で対談するヨッピーさん(右)と小野美由紀さん

銭湯で対談するヨッピーさん(右)と小野美由紀さん

出典: 朝日新聞

 最近、「銭湯が好き」という若者をよく見聞きします。もはや昭和の遺物にあらず。一体なにが若者をひきつけるのか。自らを「銭湯神」と名乗るライターのヨッピーさんと、銭湯への愛があふれる小説を書いた作家の小野美由紀さんに対談してもらいました。毎日のように通う理由は「サービス重視」か「昭和萌え」か……見事に正反対の「銭湯愛」とは。(朝日新聞東京社会部・原田朱美)

銭湯神VS銭湯小説

 せっかくなので、対談の舞台も銭湯です。ご協力いただいたのは、東京・田端で人気の「梅の湯」さん。


「男湯」「女湯」の入り口

「男湯」「女湯」の入り口

出典: 朝日新聞

 レトロモダンな内装がすてきです。これだけでもう女子受けしそう。インスタに投稿されそう。1951年創業の老舗ですが、2016年にリニューアルしたばかりです。

壁には大きな「かるた」

壁には大きな「かるた」

出典: 朝日新聞

 ここは、作家・小野美由紀さんのお気に入りの銭湯のひとつです。小野さんは、今年2月9日に銭湯を舞台にした小説「メゾン刻の湯」(ポプラ社)を発売したばかり。もともと銭湯が好きで、小説の題材に選んだそうです。

 小野「銭湯への愛をめっちゃ込めました。銭湯好きに届いてほしいです!」

 ヨッピーさんは、なんとケロリン桶(おけ)を持参。

 記者が写真を撮ろうとすると、小野さんの小説をそっとケロリンの中に入れてPRするあたり、オトナの優しさを感じます。

「裸になったら何の肩書もない」

――おふたりとも、銭湯好きを公言しておられますが、はまったきっかけを教えてください。

小野「私はフリーライターになりたての頃に、風呂無しアパートに住んでいて、近所の銭湯を利用していました。当時は仕事もお金も人脈も何もなくて。社会との接点がなかった。1週間誰とも口をきかない、なんてことも普通にあって。SNSを眺めて、自分は何者なのか、なんてことばかり考えていた。でも、そういう時に銭湯に行くと、みんな裸になったら何の肩書もないじゃないですか。子どもも老人も、ただの裸。それが気持ちよかったんですよね」

ヨッピー「あー、めっちゃわかる!」

小野「私が通っていた代々木八幡の『八幡湯』は、地域コミュニティの場所でもあって。地元のおばちゃんが、いきなり怒って入ってくる、みたいなこともあったんですね。でもその感じがすごく良くて。大人になると、知らない人と関わることって、なくなるじゃないですか」

「地元のおばちゃんが、いきなり怒って入ってくる、みたいなこともあったんですね」

「地元のおばちゃんが、いきなり怒って入ってくる、みたいなこともあったんですね」

「どんだけカッコつけたって……」

ヨッピー「肩書みたいなものが嫌いなのは僕も同じなんですよ!僕、インターネットでずっと六本木とか西麻布の会員制バーの悪口を言ってるんですよね」

——肩書き?

ヨッピー「出した本にも書いたくらいですけど。ああいう所って要は肩書と金でジャンケンをする場所じゃないですか。こっちはVIP席だ!じゃあこっちはシャンパンだ!なにくそ!こっちは総合商社だぞ!みたいな!僕、ああいうのがすごく嫌いなんですよ!」

小野「ああ、わかります。連れてる女でポケモンやっている感じのね。『行け!俺のピカチュウ!』みたいな」

ヨッピー「あっはっは。そうそうそう。ほんとそう!銭湯って、それと真逆じゃないですか。全員裸で、肩書もなくて。どんだけカッコつけたってチ◯チ◯出てますからね。ロレックスの時計つけても◯ン◯ン出ちゃってますから。それがなんかいいんですよ」

「ロレックスの時計つけても◯ン◯ン出ちゃってますから。それがなんかいいんですよ」

「ロレックスの時計つけても◯ン◯ン出ちゃってますから。それがなんかいいんですよ」

「悪魔がいます!!」

小野「『八幡湯』には、認知症っぽいおばあちゃんが毎日来ていて。言動が少しおかしくても、みんな拒否せずに受け入れてたんですよね。で、ある日わたし、脱衣所でウン◯を踏んじゃったんです。『あ!踏んだ!』って思ったら、そのおばあちゃんが目の前にいて、多分その人が漏らしたんだと思うんですけど、その途端に『悪魔がいます!!』って言われて」


――そ、それは……

小野「『ウンコ踏んだ上に悪魔かよ』って思ったんですけど、でもなんか、それがうれしかったんです。『わあ!他人と関わった!』って」

ヨッピー「あっはっはっは」

小野「素足で他人の◯ンコ踏むことなんて人生でそうそうないですからね。小説の中でもそのエピソードは使っていて、主人公がウ◯コを踏んでうなだれているシーンがあるんですけど、私はそういうところで救われた感じがあって。そこからですね、銭湯愛は」

「『ウンコ踏んだ上に悪魔かよ』って」「あっはっはっは」

「『ウンコ踏んだ上に悪魔かよ』って」「あっはっはっは」

「集まってみんなで銭湯に行くのがうらやましかった」

――まさかウン◯が銭湯愛のきっかけにあったとは。ヨッピーさんは、小さい頃からよく近所の銭湯に通われていたんですよね?

ヨッピー「そうそう。僕は大阪の下町の生まれなので、実家に風呂のないやつがけっこう周りにいたんです。そういう連中が夜になると集まってみんなで銭湯に行くのがうらやましかったんですよ」


――ちょっとした夜更かしですね。

ヨッピー「子どもって家に帰る門限は5時なのに、銭湯に行くやつらは7時とか8時に出かけるわけじゃないですか。あいつらは遅くまで遊んでずるいなーって。それで親に頼んで、週1回だけ500円もらってみんなで銭湯に行くっていう。その経験から『銭湯は楽しいもの』っていうイメージがありますよね」

小野「じゃあヨッピーさんにとって、銭湯って一人になる場所じゃなくて、みんなでいくものだったんですね」

ヨッピー「最初はそうでしたね。ただ、こんなに通うようになったのは大人になって、東京に来てからですよ。25歳くらいの時にアトピーを発症して、いろいろネットで調べたら『サウナがいい』と言っている人がいて。本当かどうかは知りませんけどじゃあ行ってみようか、って」


――アトピーがきっかけとは……。

ヨッピー「アトピーって風呂上がりがつらいんですよ。乾燥して肌がかゆくなって。でも銭湯に行ったら、風呂上がりにぴりぴりしなかったんですよね。家のお風呂に入るよりこっちの方がマシだなと思って、通うようになりました」

「梅の湯」で見つけたマスコット

「梅の湯」で見つけたマスコット

「文化には興味が無い」「私は萌えです」

――じゃあ、最初は必要に迫られて、だったんですね。

ヨッピー「そうそう。アトピーはその後お医者さん変えて無事に治ったんですが、上野の『寿湯』(東京都台東区)で本格的に中毒になりました。家と職場の間に寿湯があったんです。仕事が終わって、そのままスーツ姿でどっかでご飯食べて、そのまんま寿湯でお風呂入って帰って寝るというルーティンを毎日していました」

ヨッピー「ただ僕、いわゆる『銭湯文化』にはあんまり興味が無いんですよ。『この欄間がいい』とか『味のある下足箱が良い』みたいな、そういう『古き良き銭湯文化』が良いって言う人もいるんですけど、僕は単純に、機能としての銭湯を愛しているんです」


――機能性?

ヨッピー「だからなるべく設備が新しくて整ってる方が良いんですよね。よく『ヨッピーさん、いい銭湯を見つけましたよ』って教えてもらうんですけど、行ってみて『古き良き』っていうタイプの銭湯だと『僕が求めてるのはこうじゃないんだよなー』ってなる。小野さんの小説の舞台は、どっちかと言うと『古き良き』ですよね」

小野「そうですね、萌えです。銭湯にまつわるコミュニティとか」

銭湯の魅力は……「設備」か「萌え」か

銭湯の魅力は……「設備」か「萌え」か

「僕は機能」「私は建物が好き」

――じゃあ、おふたりの銭湯が好きなポイントって、違うんでしょうか。

ヨッピー「僕はやっぱり機能ですね。お湯が熱めで水風呂があるとか、炭酸泉もあるし露天もあるよ、とか。サービスが行き届いているとか」

小野「そうなんですね~。私は古い木造の建物が好きで。六角形のタイルとか、傘立てとか、細かいところの雰囲気も好きです」


――同じ「銭湯好き」でも、ぜんっぜん方向性が違うんですね。

「梅の湯」にあるおなじみの牛乳、ジュース

「梅の湯」にあるおなじみの牛乳、ジュース

「だいぶかぶっていました」

――梅の湯を経営する栗田尚史さんによると、まさに男女の好みは、おふたりのような感じで分かれるんだそうです。男性は理屈っぽくて、「家の風呂より体にいいから、好き」。女性はもう少し情緒的で、「建物や雰囲気も含めて、好き」。ちなみに、梅の湯にやってくるお客さんは、男女半々だそうです。

小野「でも、ヨッピーさんのオススメ銭湯の記事を読んだら、私の好きな銭湯とだいぶかぶっていました。神田の『江戸遊』とか」

ヨッピー「あ、やっぱりそうですよね」

梅の湯を経営する栗田尚史さん

梅の湯を経営する栗田尚史さん

「+αを求められているんですよね。たぶん」

――好きなポイントは違うのに、好きな銭湯は同じ。不思議です。

小野「私たちって、銭湯に通う中では若い方だと思いますけど、やっぱり若いファンが求めるものって、かぶっているところもあると思うんです。人気の『小杉湯』(東京都杉並区)だって、レトロで情緒があるだけじゃないですもん」

ヨッピー「小杉湯はイベントをうったり企業とコラボしたり、いろいろ頑張ってますもんね」

小野「梅の湯さんも、460円でサウナは無料で、きれいで広くて、半露天もあって、飲み物も充実していて。やっぱり女子だから、キレイさは大事なんです。さすがに『古き良き』でも、10円レンタルのタオルがカピカピだったら嫌ですね(笑)。古き良きをいかそうと、工夫をしている銭湯が好きです」

ヨッピー「昔の銭湯は家に風呂がない人向けだったから、温まって体が洗えればそれでよかったんでしょうけど、それだけだと今は家の風呂で済んじゃいますから。体を洗って温まるだけじゃなくて、+αのものを求められているんですよね。たぶん、全部カンで言ってますけど」

梅の湯に用意されているアメニティ

梅の湯に用意されているアメニティ

「安くたまれる場所なんです」

――おふたりから見ても、銭湯に若者は増えましたか?

ヨッピー「僕は1週間に8回(1日に2回行く日もある)は銭湯に行く人間ですけど、ここ2~3年でマジで増えましたね。起爆剤は『アメトーーク』の銭湯大好き芸人ですよたぶん」

小野「銭湯って、安くたまれる場所なんですよね。風呂上がりにみんなでダラダラする。いま、若い人がたまれる場所ってあんまりないじゃないですか。私の友だちは、けっこう『セフレ』がいるっていう人がいますよ」

ヨッピー「……?」

小野「あ、『銭湯フレンド』で『セフレ』です。連れだって銭湯にいく友だち」


――ああ良かった。びっくりしました。小野さん、何をぶっ込んできたのかと思いました。

小野「その人たちのSNSには『”セフレ”とリニューアルした銭湯行ってきました!』みたいな写真が上がってます。写ってるの、全員男ですけど」

「あ、『銭湯フレンド』で『セフレ』です。連れだって銭湯にいく友だち」

「あ、『銭湯フレンド』で『セフレ』です。連れだって銭湯にいく友だち」

「『今から勝負』的な時、銭湯に」

<ここで、対談を見守っていた「梅の湯」の栗田さんが「そういえば」と、声を挙げました>

栗田「男性って5~6人の団体でくることが多いんですよ。風呂の中でも、団体で動くんです。みんな同じタイミングで体を洗って、湯船につかって、湯からあがる。風呂くらい自分のペースで入りたいんじゃないの?って思うんですけど」

ヨッピー「あ~そういえば、そういう人たち、いますね」

栗田「女性は一緒に来ても2人ですね。あんまり団体では来ない。で、僕は見られませんが、スタッフによると、女性はふたりで来ていても、お風呂では別々に行動しているそうです」


――男女でそんな違いもあるんですね。面白いです。

小野「デートの前とか、『今から勝負』的な時にも銭湯に行くことが多いです。体があたたまって顔色が良くなるのはもちろんですし、脱衣所の鏡が大きいから、お化粧もしやすいですし」

ヨッピー「わかるわかる! 僕も『人前に出なきゃいけないけど二日酔いで』っていう時は銭湯に入ってから行きます。むくみがとれますしね。いやほんと、おすすめですよ銭湯!」

     ◇

 それぞれの立場からの「おすすめ」を語ってくれたおふたり。後半は、廃業が相次ぐ銭湯の現状についてもまた、意見がわかれます。

入口が「男」、番台は「DJスペース」レトロ感満載、元銭湯の料理店
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調理場の壁には男湯だったときの富士山の絵が残っている=福岡市博多区吉塚1丁目、河合真人撮影
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