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IT・科学

中国はお年玉もキャッシュレス 10億人使うアプリ、生活を一変

WeChatで贈る紅包(お年玉)、「88元」は縁起がいいとされる
WeChatで贈る紅包(お年玉)、「88元」は縁起がいいとされる

目次

 中華圏の旧正月、春節が2月16日から始まっています。中国社会にとっては、まさに「犬年」の始まり。日本でも、年始のあいさつが交わされていますが、コミュニケーションツールとして中国版LINEのWeChat(微信)の存在感が年々大きくなっています。いまや10億人近くが利用するWeChatは、スタンプによるあいさつのほかにも、お年玉を送れるサービスがあり、運営会社によると、今回は7億人弱が使用。ビジネスシーンでの活用や決済機能の充実もめざましく、中国の社会インフラといっていい存在です。日本人にとっても、中国旅行での必需品になりつつあるWeChat。オンラインの新たな習慣や伝統が中国で形成されています。

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(@広州)進む「微信漬け」、不安と依存(朝日新聞デジタル)
春節のための「犬のぬいぐるみ」売り場。WeChatPayのQRコード(緑色)がぶら下がっています=2018年2月8日、北京
春節のための「犬のぬいぐるみ」売り場。WeChatPayのQRコード(緑色)がぶら下がっています=2018年2月8日、北京 出典: ロイター

WeChatという大人気アプリ

 WeChatは中国のIT大手テンセント(騰訊)社が開発したアプリです。テンセント社はかつて、「QQ」というネットチャットのソフトウェアで一世を風靡。そして2011年に打ち出した微信(WeChat)がSNSとして大成功し、ユーザー数が右肩上がりで増加しています。

 2017年8月に公表した中間業績によると、2017年6月30日までの国内外合わせてのアクティブユーザー数は9.63億人。現在も利用者数が増え続け、すでに10億人を超えているという推測もあります。

テンセント社のマスコット=2017年5月9日、広州
テンセント社のマスコット=2017年5月9日、広州 出典: ロイター

春節のスタンプ合戦

 LINEと同様、WeChatでも多くのスタンプ(中国語:表情包=ビョウチンバオ)が使えます。その多くは無料で、友人の使うスタンプを気に入ったら、自分の微信に追加できることもできます。

 LINEスタンプと同じように、喜び、驚き、悲しみ、楽しみなど表情だけで、ユーザーの気持ちを表すものが多く存在し、普段の会話に使えます。そして、ネットのツールを使えば、好きな画像と言葉を組み合わせて、オリジナルなスタンプを作ることもできます。

 春節の場合、スタンプの特別バージョンが数多くあります。「新年快楽」「恭喜発財」などのお祝いの言葉とその年の干支の画像を組み合わせるスタンプが増えるからです。例えば去年は鶏年だったので、ニワトリや可愛いヒヨコの画像や「桔子」(みかん)の画像が増え、文字も「大吉大利」が多くなります。その理由は、中国語では、「鶏」と「吉」は同じ「Ji」という発音で、語呂合わせしやすくなるからです。

 今年は犬年ということで、犬の鳴き声の「ワンワン」が注目されています。「ワン」と漢字の「旺」と同じ発音で、また「旺」に「美しい光、栄える」と言うめでたい意味もあるので、「旺」関連のスタンプも多いわけです。例えば、「旺上加旺」=「栄えに栄える」という意味があるため、犬の上に犬が乗るスタンプも人気です。

 大晦日の夜や、お正月の一日目などは、まさにスタンプ合戦になりました。

新年のあいさつを交わすスタンプ
新年のあいさつを交わすスタンプ

お年玉の奪い合いも・・・

 日本と同じように、親や祖父母、親戚たちが子どもや孫にお年玉をあげることが、春節の風習です。その場合は直接「紅包」(お年玉)を渡すことが多く、金額も数百元~数千元(1元は約17円で、日本円で数千円~数万円)と、比較的大きな金額の場合が多いです。受け手はほとんど子どもです。

 一方、WeChatの友人や親戚のグループでは「搶紅包」(お年玉の奪い合い)という新たな習慣もできています。ある人がグループ内に「紅包」を贈ると、グループ内の人がお年玉を受け取れるのですが、金額が均等ではなく、ランダムです。配る金額にもよりますが、数~数十倍の差が出ることがあり、最も「大金」を引いた人は、「運が一番よかった」とも表示されます。

 配る数にも限りがありますので、グループの人数が多い場合はスピード勝負になります。いち早く「お年玉」を見つけることができるかというワクワク感があり、子どもよりもむしろ、大人たちが楽しんでいます。

 グループ内でお年玉を配る人は、受け取る人から「老板」(ボス)と呼ばれ、お辞儀をしたり、「格好いい」と褒めたりするスタンプが送られます。それらは、ほかの人がお年玉を配ることを誘うことにもなります。

 テンセントが2月16日に公表したデータによると、2018年春節の大晦日では、6.88億人が「紅包」を利用しました。去年より15%増で、世代別にみると、「80後世代」(1980-89年生まれの世代)が32%。伝統的な習慣もオンラインによって様変わりしていることが分かります。

お年玉だけでなく、WeChatPayという財布機能

 このお年玉は、決済アプリ「WeChatPay(微信支付)」とつながっているので、日常生活の買い物で使うことがもちろんできます。最近の中国を訪れたり、生活したりした経験がある人なら分かりますが、中国ではキャッシュレス化が急速に進んでいます。

 市場や屋台での買い物、コンビ二、タクシー、シェアリングバイクなど、様々な場面でWeChatPayが使えます。言い換えると、WeChatPayが使えないと、中国での生活がかなり不便になるほどです。キャッシュレス化の背景の一つには、WeChatの存在があると言えます。

 また、中国人も世界中を旅行しますので、WeChatPayのサービスは世界各地に広がりつつあります。外国から中国へ渡航するビジネスマンや観光客も、事前にWeChatのアプリをダウンロードし、WeChatPay機能を開通する人が増えているようです。

レストランでもWeChatPayを使い、注文や決算などが非常に便利
レストランでもWeChatPayを使い、注文や決算などが非常に便利

WeChatはビジネスの場面でも大活躍

 さらにビジネスの場面でも、名刺の代わりにWeChatを利用するシーンが増えました。

 名刺の場合、交換後に整理するのが面倒になり、そのまま時間が経つと、名前と顔が一致しなくなることがあります。しかしWeChatはQRコードを読み取るだけで「友達」になれ、いつどこでもつながることが可能です。

 また、日本ではビジネスの場でメールのCC機能をよく利用しますが、中国では関連プロジェクトの関係者が同じWeChatグループに入れば、すべての情報が共有でき、PDFやワードファイルのやりとりも全部可能です。

 ビジネスとプライバシーの境界線が曖昧になり、公私混同の問題もありますが、グループを分けたりして、アクセス権限を設置することもできます。「中国の定番中の定番のアプリ」と言われているWeChatが、日本でも大きな影響を与えるのか、注目していきたいです。

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