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白川郷で世界中が待った「奇跡の10分」カメラマンの本能くすぐる絶景

白川郷の幻想的な光景を写そうと多くの観光客が集まった=1月21日午後7時23分、岐阜県白川村、吉本美奈子撮影
白川郷の幻想的な光景を写そうと多くの観光客が集まった=1月21日午後7時23分、岐阜県白川村、吉本美奈子撮影 出典: 朝日新聞

目次

 世界遺産の合掌造り家屋が立ち並ぶ岐阜県白川村。冬には、集落が幻想的にライトアップされる日もあり、世界中から観光客が集まります。中でも一番「絵になる」のが「奇跡の10分」とも言える時間帯。写真を撮りたいという思いは、老若男女、万国共通のようで……。(朝日新聞名古屋映像報道部・吉本美奈子)

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一歩も動けなかった2年前

 白川郷は、私も2年前に取材で初めて訪れ、高台にある荻町城跡展望台から家々を撮影しました。ただ、その時は眼下の集落の美しさよりも、必死に撮った記憶が強いのが正直なところ。

 足元の悪い中、脚立に立ち、前に並ぶ各社のカメラマンの肩越しに撮影。後ろには外国人観光客たちがカメラや携帯を手にびっしり並び、一歩も動けず……という状態でした。

2016年のライトアップの様子。ほとんど身動きできない状態で撮影した=2016年1月16日午後5時34分、岐阜県白川村、吉本美奈子撮影
2016年のライトアップの様子。ほとんど身動きできない状態で撮影した=2016年1月16日午後5時34分、岐阜県白川村、吉本美奈子撮影

 それが今年は、観光協会が有料整理券を配り、人数や見学時間の制限をするとのこと。どう変わったのか、興味を持って再訪しました。

展望台で飛び交う外国語

 展望台へは、報道陣も自由には行き来できません。車で10分ほどの駐車場から、観光協会が用意してくれた専用車に乗り合わせて移動します。

左前方がライトアップを待つ報道陣と、第一陣の見物客。右手前は順番を待つ見物客たち=1月21日午後5時18分、岐阜県白川村
左前方がライトアップを待つ報道陣と、第一陣の見物客。右手前は順番を待つ見物客たち=1月21日午後5時18分、岐阜県白川村

 ライトアップは午後5時半からですが、4時過ぎには到着。三脚を立てて準備開始です。

 服装は厚手のヒートテックインナーにパタゴニアの防寒着、耳元まで覆う帽子、ネックウォーマー、手袋、靴下に貼るカイロという装備で、雨の中ひたすら待ちます。寒いと電池も急激に消耗するので、ポケットにはカイロと共にカメラの予備バッテリーも入れていました。

左側がライトアップを待つ報道陣。右は人数制限の中訪れた見物客たち=1月21日午後5時16分、岐阜県白川村
左側がライトアップを待つ報道陣。右は人数制限の中訪れた見物客たち=1月21日午後5時16分、岐阜県白川村

 展望台に用意された撮影スペースは、幅10メートルほど。三脚を据えた10人くらいのカメラマンが、今回は無事、横一列に収まりました。

 ライトアップの時刻が近づくと、観光客を乗せたマイクロバスが続々とやってきます。中国語や英語が飛び交う中、係員も外国語で見物客を誘導していました。

英語や中国語で見物客に呼びかけるスタッフたち=1月21日午後5時17分、岐阜県白川村
英語や中国語で見物客に呼びかけるスタッフたち=1月21日午後5時17分、岐阜県白川村

 人数制限のおかげで、展望台での押し合いへし合いはなくなり、2年前に比べてだいぶゆとりがあるように感じます。

 以前の混雑が通勤ラッシュの電車内並みだとしたら、今回は隣の人と体が密着しない程度の混み合い方。それでも展望台には100人以上がいたでしょう。みんながカメラマンという、観光地ではいまや当たり前の光景がありました。

ライトアップを待つ見物客たち。手には携帯やカメラなどが=1月21日午後5時1分、岐阜県白川村
ライトアップを待つ見物客たち。手には携帯やカメラなどが=1月21日午後5時1分、岐阜県白川村

みんなが狙う「10分間」

 空の色が刻々と深まり、青色が真っ暗になるまでのわずかな時間。現場のカメラマンはみな、家々が一番映えるこの短い時間を狙います。

 私も10分ほど薄暮を撮影し、次は集落内へ。雨はやみ、雪が舞う中、雰囲気のある写真が撮れそうです。ところが三脚を据えて撮影を始めたものの、決めた構図に次から次へと撮影中の観光客が入りこみ、思うように撮れません。

集落内で撮影した一コマ。みんな撮りたい場所はだいたい同じです=1月21日午後6時51分、岐阜県白川村
集落内で撮影した一コマ。みんな撮りたい場所はだいたい同じです=1月21日午後6時51分、岐阜県白川村
入れ代わり立ち代わり撮影者が…=1月21日午後6時49分、岐阜県白川村
入れ代わり立ち代わり撮影者が…=1月21日午後6時49分、岐阜県白川村
別の撮影位置で撮ったコマ。左上にカサが写ってしまいました=1月21日午後7時8分、岐阜県白川村
別の撮影位置で撮ったコマ。左上にカサが写ってしまいました=1月21日午後7時8分、岐阜県白川村
ライトアップ終了ぎりぎりまで待っていると人がちょうどいい位置に来てくれました=1月21日午後7時31分、岐阜県白川村
ライトアップ終了ぎりぎりまで待っていると人がちょうどいい位置に来てくれました=1月21日午後7時31分、岐阜県白川村

 小さくなら人を入れたいという場面でも、カメラのすぐそばに立っていたり、服が派手で建物より目立ってしまったり。お互い様なので待ちながら、タイミングを計ります。

 人影は積もった雪山の上にも。そんな光景に思わずシャッターをきったのが、紙面には載らなかった今回の1枚です。

白川郷の幻想的な光景を写そうと多くの観光客が集まった=1月21日午後7時23分、岐阜県白川村、吉本美奈子撮影
白川郷の幻想的な光景を写そうと多くの観光客が集まった=1月21日午後7時23分、岐阜県白川村、吉本美奈子撮影

カメラマンなら誰もが…

 スマホで自撮りする女性グループや、コンパクトカメラで撮影する若い男性、本格的な写真を撮る重装備の高齢男性……。年齢や性別、国籍はもちろん、撮影するツールも様々で、今の時代、写真を撮るという行為の幅広さってすごいなと素直に思います。

横がダメならタテで撮ろうと。この写真が翌日の朝刊に掲載されました=1月21日午後6時53分、岐阜県白川村
横がダメならタテで撮ろうと。この写真が翌日の朝刊に掲載されました=1月21日午後6時53分、岐阜県白川村

 「インスタ映え」という流行語も生まれましたが、「絵になる」写真を撮りたいという情熱は撮影者なら誰もが抱くもの。フォトジェニックな瞬間を切り取った1枚の写真の裏には、多くの撮影者がいて、写っていないストーリーがある。そんな思いを記録した1枚です。

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