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お金と仕事

ランチ無料で就職先を選ぶ「バカらしさ」 福利厚生は家畜制度?

ランチ無料という福利厚生から見える会社との相性
ランチ無料という福利厚生から見える会社との相性

目次

 就活生がベンチャー企業に新卒で就職することが珍しくなくなりました。ランチ無料、飲み会補助など、ユニークな福利厚生をアピールする会社も少なくありません。ところが「そんな会社ほど実は大企業化している。福利厚生は”家畜制度”のようなもの」と警鐘を鳴らすベンチャー社長がいます。就活生が陥りやすい「ベンチャーの落とし穴」について聞きました。

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大企業を経験した後、ベンチャーを起業した加藤公一レオさん
大企業を経験した後、ベンチャーを起業した加藤公一レオさん

「福利厚生は“家畜制度”に近い」

 話を聞いたのはネット広告のコンサルティング会社を経営する加藤公一レオさんです。ブラジル・サンパウロ生まれの加藤さんは日本の大学を卒業後、三菱商事入社。大手広告会社のアサツーディ・ケイ(ADK)などを経て、2010年に売れるネット広告社を設立しました。

 加藤さんは「ランチ無料の福利厚生にひかれる人はベンチャーに行かない方がいい」と言います。

 「福利厚生をアピールする会社は、すでに大企業です。大企業には大企業の良さはありますが、ベンチャーのやりがいを求めて入社するのはおすすめしません」

 三菱商事時代「あらゆる福利厚生を使い倒した」という加藤さん。「結局、福利厚生は一部の人しか使わない」と断言します。

 実際、自分で会社を作り、福利厚生を充実させたこともあるそうです。ところが、制度を使うのは、いつも同じ人ばかり。「それなら社員全員の給料を上げた方がいい」と思うようになったそうです。

 「福利厚生はないより、充実している方がいいと思われがちです。でも、福利厚生は“家畜制度”に近いとも言えます。指定された家(社宅)、食事(食堂)、すべてにおいて自由度がない」

 結局、自分の会社の福利厚生の方針を変えたという加藤さん。「事業が成長し年収が上がれば、会社が指定するランチを食べる必要なんてありません。社員が自分のお金で、自分が食べたい豪華なランチを食べさせる。それが経営者としての判断だと考えました」

「福利厚生は“家畜制度”に近いとも言えます。指定された家(社宅)、食事(食堂)、すべてにおいて自由度がない」(加藤さん)
「福利厚生は“家畜制度”に近いとも言えます。指定された家(社宅)、食事(食堂)、すべてにおいて自由度がない」(加藤さん) 出典: https://pixta.jp/

「元ベンチャー」が求める安心感

 加藤さんにとって、福利厚生は「安心感の象徴」です。世間的にベンチャーと見られている企業でも、すでに千人以上の従業員を抱えている会社は少なくありません。そんな会社ほど「安心感」をアピールしがちだと言います。

 「ある程度、規模が大きくなると、ある意味『歯車』としての人材が必要になります。大組織にとって大事な役割です。でも、そこはすでにベンチャーではないのです」

 ランチ無料、自動販売機のジュース取り放題など「ベンチャーっぽい」福利厚生。加藤さんには、その「ベンチャーっぽさ」は、大企業化しはじめた「元ベンチャー」の象徴に見えるそうです。

「ある程度、規模が大きくなると、ある意味『歯車』としての人材が必要になります」(加藤さん)
「ある程度、規模が大きくなると、ある意味『歯車』としての人材が必要になります」(加藤さん) 出典: https://pixta.jp/

テレビCMは要注意

 福利厚生に加えて、加藤さんが指摘するのがテレビCMです。

 有名なITベンチャーでも、ある程度、会社が大きくなるとテレビでCMを流しはじめることがあります。加藤さんは「テレビCMを流すようになったら要注意」と言います。

 「CMを打つということは、それなりの規模の会社になっている証拠です。そんな大組織では、入社しても、新入社員に与えられる裁量は小さく、自分の責任と判断で何かを生み出すというベンチャー気質は薄まっているでしょう」

 加藤さんが考えるベンチャーの魅力は「最短距離で自分の力を発揮できること」。

 「三菱商事のような大企業だと、年功序列などの制度に縛られます。20代の若者が事業を立ち上げるなんて、まず無理です。でもベンチャーなら、それができる。自分は、年功序列を待っていられなかったから、ベンチャーを立ち上げました」

スポーツセンターで開かれたマンモス入社式=1981年4月1日
スポーツセンターで開かれたマンモス入社式=1981年4月1日 出典: 朝日新聞

ブラックなベンチャーの見極め方

 就活生がベンチャーを選ぶ際に気をつけるべき点はどこなのでしょう?

 加藤さんは、事業内容をちゃんと読むべきだと言います。

 「事業内容の説明なのに、精神論が目立つ会社は要注意です。『日本を良くしたい』みたいな、企業理念とは言えないような言葉を創業者が語っているところ。ブラック企業のリスクがないか、情報収集を丁寧にするべきです」

 また、創業者の人柄にひかれて入社を決めることも「おすすめしない」。

 「人に吸い寄せられる人は、自分に主体性がないことが多い」

ベンチャーの象徴、六本木ヒルズ
ベンチャーの象徴、六本木ヒルズ 出典: https://pixta.jp/

転職サイトで「自分の価値」常に自覚

 それでは、今の時代、大企業の魅力とは?

 「会社員として、待遇のいいポジションに移っていく『ジョブホッピング』を選ぶ人にとって、大企業ほど便利なものはない。ベンチャーから外資系投資銀行に転職するよりも、はるかに成功の可能性が高くなる。最高の学歴です」

 また、加藤さんは、転職サイトに登録して自分の価値を常に認識することも大事だと言います。

 「今は、ネット上に色んなサービスがあります。独立するにしても、リスクがわかる。こんなにいい時代はありません」

 大企業とベンチャー、どちらがいいのか? その答えについて加藤さんは「結局、どう生きたいのか」だと強調します。

 「『大企業はもうダメだ、ベンチャーがすばらしい』というのも間違い。実際、ベンチャーは10年以内に9割が潰れる厳しい世界です。だからこそ、本当のベンチャーは福利厚生ではなく、将来性で人を集めるのです」

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