連載
#11 平成家族
「4人以上産んだ女性」発言 違和感抱く女性ががっかりしたこと
「4人以上産んだ女性、表彰を検討してはどうか」。昨秋、ある国会議員の発言が話題になりました。少子高齢化の日本。子どもの数はしばしば、国の未来とともに語られます。それでも、「国のために産んでるわけじゃない」。違和感をブログに記した女性に話を聞きました。(朝日新聞記者・田渕紫織)
千葉県柏市の中島美里さん(43)は、経営しているおかゆ専門店のブログを毎日更新している。ただ、「炎上は面倒だから」と、政治ネタは話題にしない。
しかし、昨年11月22日だけは、どうしても書き込みたくなり、店を閉めてからスマートフォンを手にした。あるニュースに目がとまったからだった。山東昭子参院議員が前日に自民党の会議でした発言を取り上げていた。
「子供を4人以上産んだ女性を厚生労働省で表彰することを検討してはどうか」
さらに、会議後に山東議員がしたという弁明を読んで脱力した。「女性活躍社会で仕事をしている人が評価されるようになって、逆に主婦が評価されていないという声もあるので発言した」らしい。
「主婦=母」という理解は、産みたくて産めない人も産まない選択をした人も見えていないのでは――。あきれた。
《現在子供一人でも息切れしている私。。。4人以上ってもはや神の領域です》《少子化だしね~わからなくはないけど。主婦って切り口と子沢山ってなんか違和感。。。》
本当はもっと書きたかったけど、表現は控えめにした。
2007年に当時の柳沢伯夫厚生労働相が「女性は子どもを産む機械」と発言したことを思い出した。その頃に結婚していた相手と子どもをもうけたかったが、相手にその気がなかった。医療事務として勤めていた病院で、同僚のパート女性たちに「子どもはまだ?」「そろそろつくったら?」と聞かれ続けた。
新婚の時は受け流せたが、日を追うごとに悔しさが募った。実家に帰省すれば、父から「ニワトリも卵を生むから価値があんだ」と言われた。
37歳で再婚してまもなく、不妊治療をした。生理が来るたびに、「自分は女じゃないのか」と、自分の人格を否定した。1度目の妊娠では、胎児の心拍音を確認してから流産した。3年前、2度目の妊娠で女の子が生まれた。
出産は緊急帝王切開になり、産後1カ月で再入院。不眠不休の育児の厳しさは想像以上だった。合併症で高熱が出ても、夫は休日にお風呂に入れるだけ。熱を計らないようにして、しのいだ。
当時は法律事務所に勤めていたが、都心への通勤時間を入れると保育園のお迎えに30分遅れる。フルタイムの勤務をあきらめて、派遣で働いた。「残業したいのにできなくて頭を下げて帰る気持ち、政治家には分からないんだろうな」と思う。お店を開いたのは、2カ月前のことだ。
政治家の発言で、勝手に「4人」と数字を上げられたことに、一番の違和感があった。「前職では人事の仕事をしていたので、労働人口の減少率の厳しさは分かるけど、国のために産んでるわけじゃない」
今も、知り合った中年女性から「もう1人がんばんなさいよ」と言われる。「年齢的にもう無理っす」と冗談めかして切り返すが、「一人っ子はさびしいわよ」と言われると、胸が苦しくなる。
「政治家が言っているだけなら、まだ我慢はできる。それが周囲の空気も映しているから、余計にがっかりしてしまった」
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