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連載

#4 ソロジャーの時代

「おひとりさま専用Walker」誕生のワケ 編集者の熱い思いがあった

編集を担当したKADOKAWAの中村茉依さん
編集を担当したKADOKAWAの中村茉依さん

目次

 カップルや友人・家族向け情報誌として定番の「東京ウォーカー」を手がけるKADOKAWAの編集部が今月、「おひとりさま専用Walker」を発売しました。担当したのは、アラサー女性編集者。「『リア充』へ向けた特集を作るのに疲れてしまって……」と話す彼女に何があったのか。編集部初の一人向け雑誌が生まれたワケを聞きました。

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発売後、重版が決まった「おひとりさま専用Walker」
発売後、重版が決まった「おひとりさま専用Walker」

「ひとりでしたい100のこと」を紹介

 「ひとりディズニー」「ひとり旅」「ひとり鍋」などのイラストが書かれた表紙に「一人の方が人生得する!ソロライフを満喫する100の方法!」と刺激的なコピー。「これは、ひとりで読んでください」とも書かれています。

 雑誌は「ひとりでしたい100のこと」をテーマに、「ひとり遊び編」「贅沢&優雅編」「ソロスペース編」などをシーン別に紹介。「一人焼き肉」や「一人ラーメン」などのグルメ情報は、「ひとりメシ」特集として別に紹介する気合の入れようです。

最近話題になっている「ソロキャンプ」はバイきんぐの西村瑞樹さんが紹介
最近話題になっている「ソロキャンプ」はバイきんぐの西村瑞樹さんが紹介 出典:KADOKAWA

リア充特集に「ちょっと疲れた」

 東京ウォーカー編集部でも「2~3年前だったら通らなかった企画」を実現させたのは、編集者の中村茉依さん(29)です。

 中村さん自身、彼氏がいない「おひとりさま」。直前にカップルや友人、家族に向けたイルミネーションやクリスマスケーキなどを特集した「冬ウォーカー」を担当し、「キラキラした『リア充』スポットばかりを特集していて、ちょっと疲れてしまったんです」と話します。

 さらに、今年のクリスマスイブが日曜日だと知ったときに「地獄だと思った」そう。一方、「クリぼっち」という言葉があるように、一人で過ごす人が近年は珍しくなくなってきたことも感じていました。
 
 「「誰かと過ごす」ことを前提に誌面作りをしてきた東京ウォーカーでは、『一人焼き肉』などの情報は取り上げる機会がありませんでした。でも、未婚男女のデータ、一人向けの商品をリサーチしていくうちに広がりを実感したんです。これまで様々なトレンドを伝えてきた東京ウォーカーだからこそ、『おひとりさまに向けてもしっかりとやらなくていいのか』と企画を出しました」

タレントのヒロシさんを起用し、「クリぼっち」も特集した
タレントのヒロシさんを起用し、「クリぼっち」も特集した 出典:KADOKAWA

東京ウォーカーを逆手に

 企画会議では「需要があるのか?」といった意見も出ました。それでも中村さんは「東京ウォーカーを逆手に取った企画になる」と諦めず、制作がスタート。定番の「ひとりカラオケ」から最新の「暗闇ヨガ」「ソロキャンプ」まで、幅広いネタを取り上げていますが、こだわったのは「一人だからこそトライしたい」「ソロタイムが充実する」といった視点でした。

 「『二人でもできるんじゃない?』と言われてしまわないように、どこがおひとりさま向けかを意識しました」

 発売後はSNSやメディアで取り上げられ話題になり、重版にもなりました。

 編集長の嶋村光世さんは「2~3年前だったら受け入れなかったかもしれないが、今は『一人でもいい』という空気が広がってきているし、発想も面白かった。何より、企画を通したいという中村さんの熱がすごかった」と振り返ります。

特集では「一人焼き肉」や「一人ラーメン」などの「ひとりメシ」も掲載
特集では「一人焼き肉」や「一人ラーメン」などの「ひとりメシ」も掲載 出典:KADOKAWA

世の中はおひとりさまウェルカム

 特集では、シングルライフの悩みに対して、精神科医・名越康文さんなどのコラムやコミックエッセイ「おひとり上手のなかむらさん」の描きおろし漫画も掲載しています。雑誌作りを通じて、中村さんの心境にも変化がありました。

 「企画を始めた頃はまだ、一人に対してネガティブな気持ちがあったんです。でも世の中はおひとりさまに対してウェルカムなんだなということがどんどん分かって。だからこそ、今一人でいることが『恥ずかしい』と思っている人に読んでもらいたいです」

連載「ソロジャーの時代」

 この記事は朝日新聞社とYahoo!ニュースの共同企画による連載記事です。現代社会において、これまでの制度やしきたりと戦いながら道を切り開く「ひとり(ソロジャー)」の生き方をテーマに、12月27日から31日まで計5本公開します。

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【27日配信】「帰宅は朝5時」から一変、バリキャリが選んだ「ひとり出版社」
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