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「大してインスタ映えもしないので…」 博物館の注意書きが斬新すぎ

台東区立書道博物館内にある注意書き
台東区立書道博物館内にある注意書き 出典: 撮影協力:台東区立書道博物館

目次

「大してインスタ映えもしないので 写真撮影は御遠慮ください」。東京・台東区にある区立書道博物館に、思わずニヤッとさせる注意書きがある、というツイートが話題になっています。撮影禁止エリアのため、注意書きを模写したという画像には、ほんのり癒やされる書体の文字が並んでいます。一体誰がどうして書いた注意書きなのでしょうか。
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ニヤッとさせる文言

 ツイートをしたのは国語辞典編纂者の飯間浩明さん。「三省堂国語辞典」の編集委員でもあります。

台東区・書道博物館で、「撮影禁止」などの注意書きが、どれもニヤッとさせる文言で面白い。何しろ撮影禁止エリアなので、超いい加減な模写をお目にかけます。原物はよっぽどユーモアのある書家の方が書いたと思われます。
飯間浩明さん(@IIMA_Hiroaki)のツイッター
 ツイートは6千回以上リツイートされ、「インスタ映えを逆手に取る素晴らしいセンス」「ユーモアを感じる」などのコメントが集まっています。

 書道博物館に行って、偶然注意書きを目にしたという飯間さん。直線を強調した自由な書体と、注意書きにもかかわらず文言が独特なところに、微笑を誘われたと振り返ります。

 注意書きはキュートな書体で模写されていますが、「私の模写では、その良さが全く現れていません」とのこと。実物が一体どんなものか気になります。

実際に行ってみた

 その注意書きがあるのは、東京・台東区にある区立書道博物館。明治から昭和初期にかけて活躍した画家であり、書家でもある中村不折(ふせつ)が集めた書にまつわるコレクションが展示されています。
 
 中村不折の名を聞いたことがない人もいるかもしれませんが、レトルトカレーや和菓子などでおなじみの「新宿中村屋」の屋号は、不折が書いたものです。

 正岡子規に才能を見初められたことから、夏目漱石など名だたる文豪と交友関係があり、「吾輩は猫である」の初版の挿絵も担当しました。
 余談ですが、とってもイケメン。たくさんの作品を制作しては売っていたため、2万点に及ぶコレクションを集められるほどのお金持ちというハイスペックなのですが、自分の身なりにはお金にかけず、食事も質素だったそうです。
22~31歳頃の中村不折
22~31歳頃の中村不折 出典: 撮影協力:台東区立書道博物館

注意書き、誰が書いていたの?

 本来であれば禁止されているのですが、今回特別に注意書きを撮影させていただきました。
ツイートの発端となった注意書き
ツイートの発端となった注意書き 出典: 撮影協力:台東区立書道博物館
 「大してインスタ映えもしないので 写真撮影は御遠慮下さい」

 親しみさすさのある書体がまとう不思議な雰囲気、そして思わずクスッとしてしまう文言。

 これを書いたのは、同館の研究員、中村信宏さん(39)です。中村と聞いて「まさか不折のご子孫では?」とたずねたところ、「期待させて申し訳ないのですが、全く関係ないのです」。
台東区立書道博物館の中村信宏さん。注意書きを書いたその人です
台東区立書道博物館の中村信宏さん。注意書きを書いたその人です
 中村さんは10年ほど前から、手書きの注意書きを作って館内に設置してきました。「大してインスタ映えもしないので」を設置したのは2週間ほど前。他にも、「触っても御利益はありません」などユニークな注意書きがありました。
「触っても御利益はありません」の注意書きも
「触っても御利益はありません」の注意書きも 出典: 撮影協力:台東区立書道博物館
 「『お手を触れないで下さい』とか『撮影禁止』などのプレートは市販されているのですが、同じものがたくさん並んでいると味気ないというか。笑顔でカメラをしまってもらえるように、やんわりと伝えたかったんです」

 資料説明用のパネルを作るときの切れ端を使っているそうで、「節約でもあるんです」と照れながら教えてくれました。

美しいだけじゃない「スルメ系」の書

 大学時代は芸術学部で書を学んでいたという中村さん。注意書きは、不折の書体に似せて書いているといいます。

 「不折の書は、ぱっと美しい『イケメン系』ではなく、かめばかむほど味が出る『スルメ系』なんです。書体も隷書(れいしょ)から、普段使われている楷書にうつりかわる頃のものを好んで使っていたのですが、未完成ならではのほどよいゆるさが親しみやすいですよね」
かめばかむほど味が出るという不折の書体に似せているという
かめばかむほど味が出るという不折の書体に似せているという 出典: 撮影協力:台東区立書道博物館
 今回、ツイートが拡散されたことはとても驚いたといいます。飯間さんのツイートについても「模写でここまで書けるのはすごい」といい、「あたたかい気持ちで紹介いただき、それが広がったのはありがたいです。これまで博物館を知らなかった人に知ってもらえれば嬉しいです」と話しています。

 「もちろん作品がメインなので、不折のコレクションをぜひ見に来てください。鑑賞の間に注意書きを見て、ちょっとにんまりしてもらえれば」

 書道博物館では現在企画展「あの人、こんな字!―歴史上の人物たち―【中国編】」を開催しています。甲骨文字からはじまる漢字の変遷、紙にとどまらず石碑や青銅器など貴重な資料が見られる博物館、注意書きと一緒に楽しんでみては。
【台東区立書道博物館のWEBサイトはこちら】

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