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コラム

「謝るときは、小さくなれ」 あなたに贈る〝1分間スピーチ〟

ひきたよしあきさんによる「1分間スピーチ」。今回のテーマは「謝るときは、小さくなれ」です。

今回の「1分間スピーチ」のテーマ
今回の「1分間スピーチ」のテーマ

 広告会社「博報堂」のクリエイティブ・プロデューサーで、スピーチライターでもある、ひきたよしあきさんによる「1分間スピーチ」。今回のテーマは「謝るときは、小さくなれ」です。

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本日の〝1分間スピーチ〟

では、スピーチをはじめます。

今日は、謝罪についてお話しします。

「あの人の謝罪は、天下一品だよ」と誰もが認める人がいます。

見たところ、普通。特に腰が低いわけでもない。

実際に彼の謝罪を見るまでは、ちょっと見くびっていました。

数カ月後。とある仕事で彼の謝る姿を目の当たりにしました。

「今回は、大変申し訳ございませんでした」と頭を下げる。

すると遠近法に狂いが生じたように彼が小さくなったのです。

下げた頭の角度とか、語勢の強弱は関係ない。

90%縮小したかのように、彼一人が縮んだのでした。

「まぁまぁ、そこまで頭を下げなくても。顔をお上げください」と先方が言う。

彼の頭があがると、互いのわだかまりがすっと消えていました。

先方が苦笑い。「これから気をつけてください」で一件落着したのです。

一体、どう頭を下げれば、あれだけ小さくなれるのだろう。

不思議に思って彼に聞いてみました。

「謝罪はさぁ、さわやかじゃいけないんだ。剣道や柔道みたいな『お辞儀』のように背筋をのばして頭をさげる。それってちょっと潔い感じがするだろ。『こんなに謝っている俺』という自己陶酔が入るだろ。それじゃ相手の気はすまない」

 「自分に酔ってるやつに謝られても胸くそ悪いばかりだからね。謝罪は、背中を丸くすることだ。まさに『穴に入りたい』という気持ちで背中を丸め、手を擦りながら膝から下に下げていく。『申し訳ない!』ということを姿かたちで見せないと、相手は納得しないよ」

なるほど、思い出してみると彼の背中は丸かった。縦から半分に折れ曲がるように肩をすぼめていたのです。

一瞬天を仰いだら、肩甲骨が見えるようにして頭をさげる。そこには爽やかさや自己陶酔は微塵もありませんでした。

すぐに身につく技ではありません。数多の泥水を飲み、重油の海を泳いだ結果身につけた謝罪のかたちです。

部下のために頭をさげる。私には、ビジネスにおけるひとつの芸術品に見えました。

「謝るときには、小さくなれ」

謝罪の仕方であなたのビジネスは変わるはず。

今日の言葉のちょい知恵をお試しあれ。
ひきたよしあきさん
ひきたよしあきさん


 広告会社「博報堂」のクリエイティブ・プロデューサーで、スピーチライター。朝日小学生新聞で毎週火曜日に「大勢の中のあなたへ2」を連載中。著書は「机の前に貼る一行」「大勢の中のあなたへ」(いずれも朝日学生新聞社)、「あなたは言葉でできている」(実業之日本社)など。

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