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藤井四段の自宅で見た「普通すぎる日常」服はお下がり、将棋盤まで…
「ひふみん」こと、加藤一二三九段を破った衝撃のデビュー戦を皮切りに、29連勝を達成した藤井聡太四段(15)。羽生三冠をして、「驚嘆の一言」と言わしめる連勝記録を打ち立てた。ところが、ひとたび対局を離れると……、物欲はほぼナシ。服にも無頓着で、取材時に着ていたシャツも兄の「お下がり」。日本を熱狂の渦に巻き込んだ、中学生プロ棋士の素顔とは?(朝日新聞映像報道部・山本正樹、伊藤進之介、金川雄策、遠藤啓生、安冨良弘)
藤井四段が、それまでの最多連勝記録に並んだのは、6月21日の対局。澤田真吾六段(25)を破り、公式戦28連勝を達成した。30年前に神谷広志八段(56、当時は五段)がつくった記録に並んだ。
28連勝を達成し、記者の質問に答える藤井四段(写真中央)。集まった報道陣の数も尋常ではなかった。
対局室から出る姿を、テレビカメラが追いかけた。
対局後の記者会見で、思わず笑みがもれた。「(28連勝は)本当に思ってもみなかったことで非常に幸運。ツキがあったのかなと思う」
30年ぶりの新記録に期待がかかった、6月26日。増田康宏四段(19)との対局では、藤井四段を大勢の報道陣が待ち構えた。
カメラマンは一度撮影場所を決めたら、全く身動きはとれなかった。
11時間半に及ぶ10代同士の対局を制し、公式戦無敗のまま29連勝を成し遂げた。藤井四段は、対局室になだれ込んだ報道陣のカメラには目を向けず、冷静な表情で盤面を見つめていた。
記者会見で28連勝との違いを問われると、「単独1位になれたのは特別な感慨……今までと違った喜びがあります」。
藤井四段は30連勝をかけた6月2日の対局で、佐々木勇気五段(22)に敗れた。
2016年12月のデビュー以来つづいた快進撃は、29連勝でストップ。
藤井四段を破った佐々木五段。対局後の表情が勝負の厳しさを物語る。
藤井四段(写真中央右)は落ち着いた口調で「連勝はいつかは止まるもの。完敗でした」と話した。
素顔が知りたくて藤井四段の自宅を訪ねたのは、28連勝を達成した3日後だった。
将棋の研究にはパソコンも活用。家族と共用で、スペックも見劣りするようになったので「そろそろ新しいパソコンが欲しい」。奥で母親の裕子さんがそっと見守る。
自宅のリビング。ほとんどをここで過ごす。写真右に勉強机があるが「そこには座りません」。宿題は学校で休み時間にやっつけるそう。
家にいるときは、ここが定位置。横たわってスマホで棋譜を見るのが研究スタイルだ。
記者の質問に、じっくりと答えを考える。選んだ言葉が声になるまで、1分ほど沈黙が続く。
6歳のお誕生日カードに書かれた将来の夢は「しょうぎのめいじん」。ちなみに好きな食べ物は「さしみ」。
リビングのテーブル上に置かれていたマグネット将棋盤。横の部分が割れ、黒いテープで補修してある。「もう折りたためないですね」と笑っていた。
まだ三級だった小学生の頃に解いた詰将棋の問題。「だいたい半分くらいですけどとってあります」と母親の裕子さん。通っていた将棋教室のプリントやノートを大切に保管している。
ソファにはアザラシ親子のクッション(?)。押しつぶされてクタクタだ。
連勝は止まったが、棋王戦と王将戦は勝ち進んでいて、年度内のタイトル戦挑戦という大舞台の目は残っている。
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