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連載

#7 「見た目問題」どう向き合う?

外見で損する人は努力不足? 「見た目問題」当事者と一緒に考えた

アルビノの粕谷さん。外国人と間違えられることも
アルビノの粕谷さん。外国人と間違えられることも

目次

 人は見た目が何%? こんな質問を、ネット上で投げかけたところ、600件を超える回答が集まりました。うち9割が「今の社会では、人は見た目で判断されていると思う」と、見た目重視の風潮を感じていました。中でも目立ったのが、見た目が就職活動や人付き合いで有利に働くのではないか、という声。「見た目問題」の当事者で、アルビノ・エンターテイナーの粕谷幸司さん(33)と語り合いました。(朝日新聞記者・岩井建樹)

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【関連リンク】「見た目」重視の風潮、変えるには?アンケートの結果は……
【「見た目問題」当事者と考える】
・外見で損する人は努力不足?
・歌手は美人であるべき? 外見重視どこまで(近日公開)
・この子が大人になったら…(近日公開)

外国人に間違えられます

――粕谷さんは、生まれつきメラニン色素をつくれないため、肌や体毛が白い「アルビノ」に生まれました。見た目について、人一倍考えてきたと思いますが、今回のアンケートについて、どう思いましたか。

「きっと問題意識が強い人が回答していると思うので、その結果だけで『ほら、見た目が社会問題になっているぞ』って提示されるのは嫌ですね」


――「見た目より中身が大事」って言うけど、「本当はどうなの?」と問いたいと思い、このアンケートを企画しました。粕谷さんは、見た目で判断されることはありますか?

「そりゃ、ありますよ。『音楽やっている人ですか』『気合入っていますね』とか。年配の人からは外国人と思われます。先日もおばちゃんから、『ハロー』って、声かけられました! 『可哀想』って勝手に同情されることもあります。でも、僕は可哀想じゃないですから。アルビノにうまれてよかったと思っていますし、僕の武器だと思っています!」

アルビノに生まれてよかったと話す粕谷さん
アルビノに生まれてよかったと話す粕谷さん

美男美女は就活有利!?

「見た目で判断されているのかどうかは、とある会社での就職活動で一番に感じた。集団面接等で進んでいくにつれて、残っているのは美男美女ばかりという。顔で判断されることは多いと思う」(愛知県 男 30代)
朝日新聞のアンケートから

――見た目が就活に影響するって意見がありました。粕谷さんは、新卒の就活はどうでしたか?

「30社以上落ちました! けど結局は就職できたし、アルビノで『苦労した人』だなんて思わないでいいですよ」

「面接では、『まじめそう』『目がいきいきしている』とか、そういう印象が大事になるのでは? 僕も仕事で採用にかかわっていたことがありますが、見た目の印象で判断できることがありました」

粕谷さんが新卒の就職活動で使った証明写真
粕谷さんが新卒の就職活動で使った証明写真 出典: 粕谷さん提供

「見た目が美人だけで、就職が決まるのも世の常?」

「某会社の人事部にいたとき、社員募集の際、写真が美人の女性は、面接官(男)が書類選考では落とさなかった。その会社では、資格が必要だったが、資格のない美人と、資格学歴のあるブスと最終選考で迷ったが、美人を採用した。ということは、資格学歴などの内面より、見た目が美人だけで、就職が決まるのも世の常ってことでしょうか」(東京都 女 50代)
朝日新聞のアンケートから

――露骨な会社がいまだにあるんですね。もちろん、ファッションモデルやアナウンサーといった美的な要素が求められる職業はあると思いますが…。

「でも、このブスの方、最終選考まで残ったのだから、実力があった証拠ですよ。僕の場合、人事担当者に『会社内はいいけど、社外の人にわざわざ説明するわけにはいかない』って言われたことがあります。その時は、僕の人間性や将来性を見ず、白いってだけで拒否したのだから、度量の小さな会社だと思いました。そんな会社、僕も行きたくないですし」

粕谷さんの話に耳を傾ける筆者の岩井
粕谷さんの話に耳を傾ける筆者の岩井

「見た目のせいにするな!」

「本当に問題なのは見た目ではない。自分の人格や能力が劣っているために負けているにもかかわらず、自分が負けたのは外見のせいだと思い込み、人を見た目でしか判断していないと負け惜しみを言い、変に気取って高級品を身に着けておしゃれをすれば振り向いてもらえるかのように思いこんであがくことだ。私なら、人はまず人格、そして感性の鋭さと利発さで判断する。勘のいい人なら、話していて、こちらの気持ちを汲んでくれるものだ」(海外 女 50代)
朝日新聞のアンケートから

――こちらの女性は、確固たるご意見をお持ちのようです。

「この方、すげぇ。『見た目だけで判断しない自分』に自信を持っている。僕も見た目のせいにするのは違うと思います」

「そりゃ、僕も内定がでないとき、『アルビノのせいで…』と一瞬思いましたよ。でも、顔写真をつけた履歴書や一次・二次面接は通っているのだから、見た目のせいではなく、自分の実力がなかっただけだと考えるようになりました」

「だって、見た目のせいにしたところで、何も変わらないし、前に進めないじゃないですか」

粕谷さんは不採用をアルビノのせいにはしなかったという
粕谷さんは不採用をアルビノのせいにはしなかったという

「『美人○○』メディアだって…」

「『美人秘書』のような『美人○○』って言い方、大手メディアもしますよね。どうなんでしょうかねえ」(東京都 女 50代)
朝日新聞のアンケートから

――メディア批判もたくさん寄せられました。

「『美人すぎる市議』ってのもありましたね。『イケメンすぎるアルビノ』って、僕も言われてみてぇよ!」


――メディアが、「美しいものはよいことだ」と過剰にあおっているかもしれませんね。広告も含めて。

「そうですか? てか、みんな好きでしょ、美形。素直にうらやましいじゃん。広告に起用されている人気タレントを見て、『私もこんなふうなりたい』って商品を買うのが、そんな悪いことですかね? 美形のほうが数字とれるだろうし、その数字が僕ら大衆の素直な反応だろうし。僕も起用されたいな、広告に!」


――でも、広告の影響で「きれいにならなければならない」と、追い立てられる人がいると思います。

「いやいや、広告見て『そうならなければならない』と、思い込むなんて、変でしょう」

マツコ・デラックスのように有名になるのが、粕谷さんの夢だ
マツコ・デラックスのように有名になるのが、粕谷さんの夢だ 出典: 粕谷さん提供

「人の内面が見た目に」

「人の内面は見た目にあらわれる。極端な例だが、男の場合、無精髭、不潔、突飛な頭髪等々は、自分が良いと思っていれば人が不愉快に思っても気にしない、不愉快に思う事こそが悪いと思っている、と言うその人の内面を良くあらわしている。人は見た目で判断される事が分かっているのに、自分で出来る範囲の努力をしない者は、社会に受け入れてもらわなくても良いと思っている人でしかない」(京都府 男 30代)
朝日新聞のアンケートから

――見た目は、内面を映し出すとの意見も多かったです。心理学の専門家に取材したところ、これは研究でも明らかにされていることだそうです。私たちは見た目から、その人の性格、能力、経済状況、健康状態など様々な情報を読み取るそうです。

「普段からよく笑っている人は、柔らかい表情しています。見た目から読み取れることって、すごく多い」

「でも、僕は第一印象で『こういう人かな』と思っても、『こういう人だ』と決めつけないようにはしています」

「話をすれば、しゃべり方、しぐさ、におい、そして話す内容と様々な情報が入ってきますから。本当のつきあいは、それからですよね」

※紹介した声は、編集部の判断で、誤字脱字を直したり、句読点を打ち直したり、文章を短くしたりしています。

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