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突き上げた拳、奥には日の丸 カメラマンが伝えたかった「国会デモ」
暗闇の中で、両手を高くあげ続ける男性の向こうに見えた国旗。その光景がなぜか印象に残りました。(朝日新聞大阪映像報道部・竹花徹朗)
採決を強行して「共謀罪」法は成立しました。その過程では、さまざまな人たちから意見が出されました。一部学者などからは、市民のデモ活動を萎縮させる可能性も秘めた法案だという指摘もあるなか、主に国会前で行われている反対デモを取材しました。
デモの写真に、どのくらいの規模で、どんな人が集まったかという要素は大切です。ただ、もっと別の伝え方もあるのではないか。そう考えながら撮影に臨みました。
夜の国会前、街灯の下で抗議活動をする男性の姿を見つけました。無言で両手を突き上げている彼と、周りの人たちの隙間から、道路沿いに飾られた国旗が見えました。大きな権力に対して主張しているような背中は力強く、一方で小さな存在にも感じて、シャッターを切りました。
犯罪を実行していなくても、計画の段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ法律。それが私たちの生活にどう関わるのかという争点がつかみにくいせいか、デモ自体が盛り上がっているとは言いづらい状況でした。それでも、声をあげ続けるひとりひとりがいる――。
その様子を表現するためには、ドラマチックにライトアップされた環境で、大声で抗議する群衆よりも、暗闇にあらがっている一人を写すのがふさわしく思えました。
国会前の反対デモといえば、2015年、安全保障関連法が成立した際も取材しています。連日、学生団体「SEALDs(シールズ)」など、多くの若い人たちの姿がそこにありました。
彼らや彼女らが反対していた安保関連法は成立しました。しかし「若者」が公道に出て、政治について主張してもいいんだというあらたな空気は、少なからず現在にも影響していると感じます。
「共謀罪」法への反対運動にも、多くの若い人たちの姿がありました。時々、言葉に詰まりながらも声を上げる初々しい若い参加者。太鼓の音に合わせて叫ばれる「民主主義って何だ」のコールは、ライトアップが終わって暗くなった国会議事堂の空に響いていました。
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