MENU CLOSE

コラム

難病だからといって、過剰な気は遣わない。それってちょっと冷たい?

私は、脳脊髄液減少症の患者さんの元でインターンしていますが、病気の痛みに同情する気にはなかなかなれません。24時間365日、脳脊髄液減少症は想像を絶する痛みに悩まされるようですが、私には患者さんの痛みはわかりません。

しげさん(左)と私。
しげさん(左)と私。 出典: Plus-handicap

 Plus-handicapで脳脊髄液減少症当事者として原稿を書いている重光さん(通称しげさん)。私は、そんなしげさんが携わるNPO法人両育わーるどでインターンをしている大学4年の畠山です。

【PR】手話ってすごい!小学生のころの原体験から大学生で手話通訳士に合格

 先日、しげさんが自身の難病のことや、両育わーるどの活動の話をさせてもらうということで、SCA(Social-change-agency)さん主催のSocial Action Drinksというイベントに参加してきました。SCAさんは「”Social Worker”として社会を支え、Social Change Agentとして社会を変えよう」という目的で活動を行っています。

 Social Action Drinksは、困りごとを抱えている当事者の方々が日々どういう風に生活し、どういうことを考えているのかを聞く時間。しげさんが呼ばれたことも納得です。

Social Action Drinksで話すしげさん。
Social Action Drinksで話すしげさん。

 私は、しげさんの元でインターンしていますが、病気の痛みに同情する気にはなかなかなれません。24時間365日、脳脊髄液減少症は想像を絶する痛みに悩まされるようですが、私にはしげさんの痛みはわかりません。

 痛みがずっと続くという感覚は想像の世界でしか考えられませんし、調子にアップダウンがあることも気づいていますが、その調子の理由はわかりません。わからないからといって、わかった風で、同情や共感、辛くて大変だねというような”かわいそうスタンス”で、私が接することはありません。

 本人にしか、その辛さはわからない。一緒に仕事をしていく者として、配慮できることはしていきたいですが、同情はしたくありません。自分ではちょっと冷たいかもと思っていますが、遠慮していること自体が失礼だとも思っています。

 今回のイベントでの座談会では、難病とうまく向き合いながら、しげさんが活動しているように参加者には感じ取られていたのかなと思います。それは、実際にイベント後の帰り道で仰っていた、会の感想からも感じ取ることができました。

 参加者のなかに難病を抱える子供への活動をしている親御さんがいらっしゃっていて、ご自身の活動に参考にならないかと熱心に聞いてくれていて嬉しかった。話を聞いてくれているとき、前のめりでありつつも、よい意味で切迫さを漂わせていない姿に、私自身も学べたなあと思う。あと、インターンである畠山さんを前にして、自分のしんどい面をさらけ出していいものか?と少し悩みつつ、今回は話しました。

 私も、しげさんに出会ってからの最初の2,3ヶ月は、自身の痛みとうまく折り合いをつけながら活動する社会事業家だと思っていました。しかし、一緒に仕事をしていく中で、なんだか調子に波があるように感じました。めちゃくちゃ喋っている日と、グダーっとしている日。私にも、調子がいい日と気分が悪い日はあるけれど、それにしても、しげさんには波があるなあと。

 しげさん曰く、病気とうまく付き合いながら生きているように見えるのも一種の「生きづらさ」らしいです。難病を抱えながらも、うまく仕事や対人関係をやれているように見えるけれど、その奥底にあるものなんて、本人にしかわからない。理解されにくいという点はたしかに「生きづらさ」なのかもしれません。

facebookのアイコンでは、こんな帽子をかぶっているしげさん。
facebookのアイコンでは、こんな帽子をかぶっているしげさん。

 最近、しげさんの周りに集まる人たちのことを総じて「重光さんの被害者の会」っていうらしいです。これは、どんどん人を巻き込んでいくしげさんの傾向から、しげさんの仕事に関与することになった人のこと全般のことをいうみたいですが。

 しげさんの日々の痛みを自分事のように考えると、ちょっと耐えられません。「重光さんの被害者の会」の一員としてうまくしげさんと関わっていくには、しげさんに同情なんかしたりして、自分まで辛くならないようにするのがコツかなと思います。病気に対する配慮は必要ですが。

 でも、これは、しげさんのような難病を持つ人以外にも使えるのでは?なんて思っています。世の中はいつも健全に生きている人ばかりじゃない。なんらかの苦しみがあったり、生きづらさがあったり。そんな世の中で、相手の痛みを聞こうとする、知ろうとする姿勢も大切ですが、話を聞いた上で同情なんかしないというスタンスもアリなのではないかと思います。自分まで辛くなっていかないためにも。

 はじめは、しげさんの付き添いだし、話を聞きながら自分の作業でもしようかなとか思っていましたが、今回のイベントで改めてしげさんの話を聞いて、「難病」の方との付き合い方を考えさせられました。
【ライター:畠山千夏】

【Plus-handicap上で記事を読む】

【関連記事】

PICKUP PR

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます