閉

閉

これフカボリしてほしい

リクエストする

閉

2017年03月26日

「コンビニオーナーは使い捨てなのか」 元経営者が実名で語った実態

  • 72389

「便利さの裏で犠牲」元オーナーが語るコンビニ経営(記事と写真は関係ありません)

「便利さの裏で犠牲」元オーナーが語るコンビニ経営(記事と写真は関係ありません)

出典: https://pixta.jp/

 「恵方巻き予約1人20本のノルマを課された」「大量に捨てられている」。2月上旬、コンビニエンスストアでアルバイトしている高校生や大学生のSNSへの書き込みが話題を呼びました。なぜ、こんなことが起きるのか。元コンビニオーナーの男性は、無理に売り上げを伸ばそうとする本部の「圧力」が、現場を苦しめていると指摘し、「便利さの裏で犠牲になっているものがあることを知ってほしい」と語ります。

近藤菊郎さんの投稿が掲載された朝日新聞の「声」=2月

近藤菊郎さんの投稿が掲載された朝日新聞の「声」=2月

コンビニオーナーは「名ばかり経営者」

 体験を語ってくれたのは、横浜市の近藤菊郎さん(54)。2013年まで、横浜市内でコンビニを経営していました。

 元々は会社員。「定年のない働き方をしたい」と、コンビニ経営に興味を持ちました。複数のコンビニチェーンで店員として経験を積んだ後、38歳で独立。神奈川県内の二つの店の経営に関わりました。

 仕事にはやりがいを感じていたという近藤さん。ただ、経営は思っていたよりずっと大変でした。

 「コンビニオーナーは『名ばかり経営者』。経営者としての責任は負わされるのに、経営判断する自由度がなく、かといって労働者として守られているわけでもない。逃げ場がないんです」

コンビニオーナーとしての経験を語る近藤菊郎さん

コンビニオーナーとしての経験を語る近藤菊郎さん

「強制」ではない「圧力」

 コンビニの多くは、外部から店主を募るフランチャイズ方式。会社側は商品や運営のノウハウを提供し、オーナーは売上総利益の数十%程度の対価(ロイヤルティー)を支払う仕組みになっています。本部の社員は店を巡回し、仕入れる商品や運営の仕方を「指導」します。

 力を入れている商品の一つが、恵方巻きのような季節商品。本部にとっては、お店に多く仕入れてもらえば利益が上がるため、オーナーに仕入れ数を増やすよう「圧力」がかかります。といっても、証拠が残る形で「強制」されたわけではありません。

ノルマでなく「従業員の戦力化」

 開業した年、近藤さんは本部の社員から、恵方巻きを数十本仕入れるように提案されました。まだ何もわからない時期だったため、提案通り仕入れたものの、結局、半分も売れませんでした。

 翌年は、前年売れた数に応じて、発注を減らすつもりでした。ところが、本部の社員からは前年の仕入れ実績に基づき、前年仕入れた数にさらに上乗せして仕入れるよう求められました。社員は、ノルマという表現は使いませんでしたが、「従業員の戦力化」を提案。パートも「戦力化」し、目標を設定して、みんなで売り上げアップを狙うよう求められました。近藤さんが「本部の命令ですか」と聞くと、「そうではない」という答えでした。

 近藤さんはあくまで、「前年売れた数+10%」を仕入れたいと突っぱねました。節分が近づくに連れ、社員は切羽詰まった様子に。「お願いです」「私も10本買いますから」と懇願するように。本部の社員も板挟みで苦労していることを悟り、近藤さんは「昨年売れた数+20%」で妥協しました。

 「普通のオーナーなら、本部の言うままに仕入れるでしょう。努力するといっても、できるのはレジでチラシを配るくらい。あとはバイトに割り振って『ノルマ』とするか、自分で買い取るか、もしくは廃棄にするか。本部の担当者も、ある意味では被害者なんだと思います」と近藤さん。

 同じようなことは、クリスマスケーキやおせち料理、お歳暮やお中元などの季節のたび、繰り返されました。

すっかり季節商品として定着した恵方巻き(記事と写真は関係ありません)

すっかり季節商品として定着した恵方巻き(記事と写真は関係ありません)

出典: 朝日新聞

24時間営業も悩みの種

 もう一つの悩みの種が、24時間営業。深夜に働く人材を確保するのも大変でしたが、安全面も課題でした。この店では、近藤さんが経営を引き継ぐ前に2度強盗に入られ、引き継いだ後も、深夜に1人でいた従業員が暴漢に襲われる事件がおきました。

 近藤さんは、無理をして売り上げを伸ばすより、食べていける程度の収入があればいいと感じていました。深夜は売り上げがさほど多くはないため、24時間営業を辞めたいとなんども申し出ましたが、「契約だから」と認められませんでした。

コンビニの防犯訓練(記事と写真は関係ありません)

コンビニの防犯訓練(記事と写真は関係ありません)

出典: 朝日新聞

コンビニ40年、加盟店とトラブルも

 1974年、コンビニ1号店が誕生してから40年あまり。コンビニは社会になくてはならないインフラになりました。一人暮らしの高齢者向けの宅配、災害時の支援など、公的な役割も担っています。

 一方、加盟店側とのトラブルもしばしば問題になってきました。契約時の説明が不十分だったとして、加盟店が本部を訴えて訴訟になった例もあります。2009年には、弁当などの値引き販売を会社側が制限していたことについて、公正取引委員会が独占禁止法違反で排除措置命令を出しました。

見切り販売制限の改善を訴えて会見するコンビニ加盟店のオーナーたち=2009年

見切り販売制限の改善を訴えて会見するコンビニ加盟店のオーナーたち=2009年

出典: 朝日新聞

「便利さの裏で犠牲」

 近藤さんは、全国のフランチャイズ店のオーナーたちで作る「全国FC加盟店協会」の副会長を務めています。協会では、経営者の理念や方針を尊重することを訴え、「24時間営業」を一律で求めることなどに反対してきました。協会のホームページでは、「このまま24時間型社会がどんどん進むことが、健康な社会のあり方なのか」と問いかけています。

 相談に来るコンビニオーナーの中には、無理な販売量を押しつけられ、拒否すると「次の契約はありませんよ」などとちらつかされた経験のある人や、人手不足を補うために長時間働き、疲弊している人がいます。中には、自殺したり、過労死と思われる亡くなり方をしたりした人もいます。

 「消費者にも関心を持ってほしいけど、中年のコンビニオーナーが働き過ぎて死んでも、話題にならないんですよね。便利さの裏で犠牲になっているものがあることを知ってほしい」

 近藤さんの店は契約期間の切れた2013年、本部が撤退を決め、閉店しました。再契約を希望していましたが、本部に断られました。「フランチャイズのオーナーは、使い捨ての労働力なのだろうか」。今も無念さは消えません。

漫画「便利なサービス」=作・吉谷光平さん
前へ
漫画「便利なサービス」(1)
次へ
出典:作・吉谷光平
1/254
前へ
次へ

あわせて読みたい

有楽町発世界へ!スタジオアルタ新劇場公演。演出家と出演女優が語る
有楽町発世界へ!スタジオアルタ新劇場公演。演出家と出演女優が語る
PR
高校野球のブラバン、大阪では30年禁止 一...
高校野球のブラバン、大阪では30年禁止 一...
もう離れない!二人を接着「メデタイン」 即日完売セメダインに聞く
もう離れない!二人を接着「メデタイン」 即日完売セメダインに聞く
NEW
花火シーズン「DJポリス」の名言に学ぶ護身術 「健康あっての花火」
花火シーズン「DJポリス」の名言に学ぶ護身術 「健康あっての花火」
「こどもフジロック」って何だ? ライブ聴け...
「こどもフジロック」って何だ? ライブ聴け...
世界が注目する港町ダンケルク ノーラン最新作が、いま世界を変える
世界が注目する港町ダンケルク ノーラン最新作が、いま世界を変える
PR
ブスの極み乙女… 子育て自虐エッセイ作者「ママになっても私は私」
ブスの極み乙女… 子育て自虐エッセイ作者「ママになっても私は私」
禁じられた改札タッチ、「とてつもない金額」とは? JR看板を検証
禁じられた改札タッチ、「とてつもない金額」とは? JR看板を検証
シエスタって、どの程度お昼寝できるの?
シエスタって、どの程度お昼寝できるの?
Q&A
藤井四段の自宅で見た「普通すぎる日常」服はお下がり、将棋盤まで…
藤井四段の自宅で見た「普通すぎる日常」服はお下がり、将棋盤まで…
「見た目問題は障害」バケモノと呼ばれた男性の願い 就活で心砕かれ
「見た目問題は障害」バケモノと呼ばれた男性の願い 就活で心砕かれ
「まえがき」読み返したら涙が… 理科本の言葉、人生にも当てはまる
「まえがき」読み返したら涙が… 理科本の言葉、人生にも当てはまる

人気

もっと見る