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お金と仕事

「三十路祭り」に2500人、何を求めて? 豪華ゲスト・三十路コン

三十路のイベントで一斉に乾杯
三十路のイベントで一斉に乾杯

目次

 仕事、結婚、出産……20歳の時よりも「人生の選択」による違いがはっきり現れるのが「三十路」です。最近では、30歳の節目に同学年が集まるイベントが各地で開かれています。企業の協賛がつき、芸能人のゲストも。いったい何のため? リア充やパリピの集い? 数ある「三十路」イベントの中でも参加者約2500人という「三十路祭り1986-1987」に、「三十路」になった私も参加してきました。

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このままでいいのか、いやよくない

 マスコミをめざし、故郷の佐渡島を離れて早12年。浪人して、進学して、東京にもまれて、念願の記者になりました。

 が、気づけばもう30歳。安定の独身。18歳の私は「27歳で結婚して出産、育児をしながらバリバリ働くキャリアウーマン計画」を立てていたのに、あれれれれ!?

 Facebookには、結婚報告や子育て日誌、仕事自慢といった同世代のキラキラした日常が流れているのに、私は浮いた話の一つもなく、仕事で大きな成果もございません。
 このまま変化がなくていいのだろうか……いや、よくない!

 まるで世界の終わりのようにどんよりしていたとき、Facebookである投稿を見つけました。

 「さあ三十路をどうする? 『三十路祭り』30歳の節目の年に大集合! 日本最大の同年代の祭典」

 ……なんだ、このいかにもリア充なイベントは。でも、同い年の話をたくさん聞けば何かが変わるかもしれない。何かが見つかるかもしれない。
 
 そうだ、私、ちゃんと三十路と向き合ってみよう。

約2500人の三十路が集まった「三十路祭り1986-1987」
約2500人の三十路が集まった「三十路祭り1986-1987」 出典: 三十路祭り1986-1987実行委員会提供

リアルなつながり、刺激を求める

 参加したのは、1月29日(日)に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開かれた「三十路祭り1986-1987」です。参加資格は、1986年4月2日~87年4月1日生まれ。実行委員会によると、参加者は、なんと、約2500人です! 

 モヤモヤを抱えたまま参加した私ですが、みんなはなぜイベントに参加したのでしょうか。会場で聞いてみました。

 「友だちに誘われた」
 「楽しそう」
 「なんとなく出会いを期待」
 「無」
 「同学年と知り合いたい」
 「仕事が落ち着いたので新しい何かをしたくて、そのきっかけ探しに」
 「一緒に人生のセッションしようぜ」←!?

 理由は様々でしたが、何かしらのつながりと刺激を求めているようです。

 社会人になると新しい出会いのほとんどが仕事関係だったり、休日に集まるのは旧知の友だちだったり、交友関係が凝り固まってしまいがち。30歳という節目に大勢の同級生の状況を知ると、自分をふり返るきっかけにもなります(私もまさにそのために来たわけです)。

午後2時ごろ、受付に集まる大勢の三十路さん
午後2時ごろ、受付に集まる大勢の三十路さん

ステージにはSPEED、協賛企業も

 「三十路祭り」は、「30歳=社会的成人」として、節目を祝ってつながりをつくるために30歳の有志が企画しました。
 
 最初に驚かされたのは、ゲストの豪華さです。

 SPEEDの今井絵理子さんに、お笑いコンビ「ハライチ」、タレントの麻美ゆまさん……。

 テレビで見る人たちが、三十路のために集まっている! 学園祭でもないのに、芸能人呼べちゃうの!? 実行委員の企画力と実行力がすごい。

 「やはりリア充イベントなのか」と、帰りたくなるのをぐっとこらえ、会場を歩きます。

 会場内には、キリンや富士フイルムなど協賛企業の名前もちらほら。これらは全て、日ごろの社会人経験を生かして実行委員が交渉してきた結果だそうです。

 さすが三十路。ぬかりない。

会場ではフォトスタジオさながらのセットで写真撮影もできました
会場ではフォトスタジオさながらのセットで写真撮影もできました 出典: 三十路祭り1986-1987実行委員会提供

集まった三十路、一斉に乾杯

 午後3時、みんなが一斉にビールで乾杯。「三十路祭り1986-1987」の幕が開きました。

 たくさんの同い年の人々を見ていると、それぞれどんな人生を歩んできたのか、気になってきました。

 よし。みんなに聞いてみよう。

 「昔思い描いていた30歳って、どんなイメージでした? で、いま、現実はどうですか?」

集まった三十路が一斉に乾杯しました
集まった三十路が一斉に乾杯しました

「三十路コン」に長い列

 まず声をかけたのは、男女の出会いを提供する「三十路コン」ブースの近くにいた、女子2人組。かほりさんとあずささんです。

 どんな30歳になると思ってました?

 かほりさん 「結婚してると思ってました」
 あずささん 「私も」

 うんうん。私もこれでもかというくらい、深くうなずきます。
 
 で、現実は?

 かほりさん 「仕事が充実してるし、一人旅を満喫してるし、毎日楽しいです!」
 あずささん 「独り身を満喫してます」

すごいポジティブ! 
 見習います!
独り身満喫中のあずささん
独り身満喫中のあずささん

 「三十路コン」ブースをふと見ると、長蛇の列ができていました。

 とはいえみんな、「出会い」を求めているんですよね……。

「キッズエリア」で親子ヨガ

 まぶしくてあんまり近付けなかったのが、子ども連れでも楽しめる「三十路キッズエリア」。2人の子どもを連れたママに、思い切って声をかけてみました。
 
 どんな30歳になると思ってました?

 ママさん「ヒール履いて、真っ赤な爪で、バリバリのキャリアウーマンになってると思ってました」

 おぉ! バリキャリ、私も憧れました。
 で、現実は?

 
 ママさん「スーパースター(スニーカー)を履いてる(笑)ぺたんこのスニーカーで育児に走り回ってるけど、楽しい!」
 

 楽しいのが1番! それに、まだまだキャリアアップしたいと言っていてかっこよかったです。

2人の子どもを連れて参加していた三十路ママさん
2人の子どもを連れて参加していた三十路ママさん

 「キッズエリア」には芝生が用意されていて、親子でヨガを体験する時間もありました。思ったよりお子様連れが多くてびっくり。これなら、子どもがいる友達も誘えばよかったな。

「三十路キッズエリア」では親子でヨガを体験できました
「三十路キッズエリア」では親子でヨガを体験できました 出典: 三十路祭り1986-1987実行委員会提供

立ちはだかる現実の厳しさ

 続いて、なんだか顔がそっくりな男性2人組に声をかけました。

 「あ、双子なんで……」

 なんと! しかも、2人とも会社は違うけど、コールセンター勤務とのこと。そんなこともあるんですね!

 さっそく、昔思い描いていた30歳の自分と現実を聞きました。
 まず、お兄さん。どんな30歳になってると思ってました?

 兄「仕事が充実している」

 実際どうですか?

 おっと。

 どうしてそう思うんですか?

 兄「熱帯魚が好きで、本当はそういうメーカーについてみたいって思ってた。好きなことやっていきたいじゃないですか。でも、今はコールセンター。現実は厳しいですよ」

 三十路の大きな悩みのひとつが、キャリアです。そうそう理想通りになんていきません。

 このままでいいの? 転職するにしても、キャリアは通用するの? 何か資格取った方がいい? 本当にやりたいことって? ……と、私もことあるごとに自分に問いかけます。

 では次、弟さん。どんな30歳になってると思ってました?

 弟「エリートサラリーマンになりたかった」

 エリートサラリーマン!? 
 なかなか珍しいですね! 

 で、現実は?

 おぉ! サラリーマンだけど……

 弟「普通のサラリーマン。昔は、30歳になったらもっとちゃんとしてると思ってたよ。だけど、現実これだ。去年転職したときに、(自分は)ここまでできないんだなーって落ち込んだ」。

 わかります。私も仕事で失敗してばっかりで、いっつも落ち込む。

 弟「毎日仕事が手いっぱい。周りができるから。転職しても余裕でやれると思ったけど、全然ついていけない。ちゃんとした会社にはすげーヤツがいるんだなって思った」

 成人式のときは、周りはほとんど学生で能力を意識することはなかったのに、気づいたら差がついているんですよね。

 自分を過大評価してたわけじゃないけど、社会に出て力の限界を感じることは多いです。

 ところで、「すげーヤツ」ってどんな人?

 弟「ミスがない、つまずかない。正確性、精度が高い。(自分は)つまんないところでつまずく。でも、反復で乗り越えられると思っているから、時間かけてでも、やる。これから多分伸ばせる」
 
 最後は、自分に言い聞かせるような口調です。

 その言葉に元気をもらいました。多分伸ばせる。乗り越えられる。自分がそう信じてやらないと、どうにもなりませんからね!

双子の兄弟が思う「イメージした三十路と現実」
双子の兄弟が思う「イメージした三十路と現実」

 地元の友だちと来ていたイケメンお兄さんにも、イメージしていた三十路と現実を聞いてみました。

 お兄さん「何でもできると思ってた。でも、なってみるとやりたいことがありすぎる。結婚もしたいし、仕事ももっとしたいし、旅行も行きたいし。時間はあるのに、思った以上に何にもできない。だから欲張り」

「何でもできる」と思っていたけど、そんなにできないと気づいた三十路のお兄さん
「何でもできる」と思っていたけど、そんなにできないと気づいた三十路のお兄さん

 なるほど! うれしい悲鳴ですな。

良い意味で落ち着いていない

 午後7時すぎ、三十路全員で三本締めをして今年度の「三十路祭り」はお開きとなりました。

 結局この日、20人以上の30歳に話を聞きました。

 今の自分はイメージしていた30歳とは違うという人が多かったけど、それぞれ現実を受け入れて、ちゃんと前に進もうとしていました。

 良い意味でみんな落ち着いていません。現状を変えたい、やりたいことを全部やりたいという欲望を持っている人がたくさんいました。

 悲観的な意見が少なかったのは、まだ未来の自分に期待できる年齢だからかもしれません。

「三十路祭り1986-1987」に集まった三十路のみなさん
「三十路祭り1986-1987」に集まった三十路のみなさん 出典: 三十路祭り1986-1987実行委員会提供

有志が集まって企画

 「三十路」イベントはいま、北海道や山形県、兵庫県、島根県など全国各地にじわじわ広がっています。自治体が主催する成人式とは違い、30歳の有志が集まって企画することがほとんどです。

 ゲストを招いてトークショーを開いたり、懐かしい顔と再会する大規模な同窓会にしたり、スタイルは自由。参加資格も、開催地の市町村出身やゆかりがある人限定のものもあれば、30歳なら誰でもOKというものまで様々です。

開催を4日後に控え、仕事後にミーティングのため集まった「三十路祭り1986-1987」実行委員のみなさん
開催を4日後に控え、仕事後にミーティングのため集まった「三十路祭り1986-1987」実行委員のみなさん

三十路、なって良かった

 今回私がお邪魔した「三十路祭り」は、今年で2回目です。

 最後に実行委員のみなさんにも、三十路のイメージと現実を聞きました。

 まずは、副代表の鈴木さん。イメージしていた三十路とは?

 「閉塞感ですね。家族を持ったり、コミュニティーが固まってきたり、レールがだいたい定まって、もう『この道』で生きていくしかないのかな、その中での価値観でしか幸せを増幅できないかなってイメージを持っていました」

 なかなかネガティブですね。現実は?

 「今はすごい自由です。『三十路祭り』の実行委員メンバーたちに会えたことで可能性の幅がすごい広がった。ポジティブな気持ちになれました」

副代表の鈴木さん。三十路になって良かったというのがよく伝わってきます
副代表の鈴木さん。三十路になって良かったというのがよく伝わってきます

ネガティブじゃない、ファイヤーです

 代表でモデルのはるかさんは、「30歳の節目をどう捉えるかは、みんなそれぞれ違います。でも、ここに集まっているメンバーは、『もう30歳だ、嫌だなぁ』『落ち着かなきゃ』『あきらめなきゃ』とネガティブに捉えるんじゃなくて、『30歳になるけどもっと何かやりたい』『もっと人生広げていきたい』っていう……ファイヤーですね(笑)そういう思いを持っています」と話してくれました。

代表のはるかさん。イメージしていた三十路は「やりたいことをやってガツガツ進むというよりも、家族を持ったりして落ち着いている」。現実は、まだ落ち着くことなく「やりたいことはどんどん出てくるし、思いついたらやってみる」そうです
代表のはるかさん。イメージしていた三十路は「やりたいことをやってガツガツ進むというよりも、家族を持ったりして落ち着いている」。現実は、まだ落ち着くことなく「やりたいことはどんどん出てくるし、思いついたらやってみる」そうです

 実行委員はみんな、「三十路祭り」を成人式のように日本の文化にしたいと思っているそうです。熱い!

 自分でブレーキをかけないで、熱い思いを燃やし続けるんですね。

 よし! ウジウジしてないで私も頑張ろう!

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