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早慶上智、関関同立…大学の序列ぶっ壊す! 近大、攻めの広報の理由

何かと話題に上ることが多い近畿大学。広報部に「攻めの広報」の理由を聞きました。

話題になっている国際学部に関する広告
話題になっている国際学部に関する広告 出典: 近畿大学提供

目次

 マグロの卵から成魚までの「完全養殖」に世界で初めて成功したり、ニホンウナギの代替品として「ウナギ風味のナマズ」を開発したり……。何かと話題に上ることが多い近畿大学。最近では、国際学部の紹介ページに「授業で発言しない学生は欠席です」といった強気なフレーズを盛り込んで話題になりました。こうした話題を拡散すべく、あの手この手を凝らしているのが広報部です。「攻めの広報」の理由を聞きました。

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国際学部の広告
国際学部の広告 出典: 近畿大学提供

「ブッ飛んでる」国際学部の広告


 2016年4月に開設された国際学部。語学教室などを展開するベルリッツコーポレーションと連携協力した語学学習システムを採用し、学生全員が1年次後期から1年間留学するなどの特徴があります。

 この学部をPRするための広告が「凄すぎる」「ブッ飛んでる」と話題になっています。広告は全部で5種類あり、学部長や講師のアップの表情の上に、赤い字で「授業で発言しない学生は欠席です」「華やかな大学生活を送りたい人は別の学部へ」「15人以下のクラスで居眠りができますか?」などと、学生を煽(あお)るように書かれています。

 話題になっていることについて、広報部課長の加藤公代さん(45)は、こう話します。

 「実際のところ、ここまで話題になっていることは驚き以外のなにものでもありません。ただ、それほどインパクトのある広告であること、それに伴い国際学部の認知度が上がり、『入りたい』というツイートも多く見かけることについては、非常に嬉しく思っています」



国際学部の広告
国際学部の広告 出典: 近畿大学提供
国際学部の広告
国際学部の広告 出典: 近畿大学提供

広告の狙いは


 今回の広告の狙いについては、こう説明します。

 「国際系の学部は関西でも多く、本学は後発組であると言えます。それゆえ、既存の他大学にあるようなものではなく、差別化して特徴のある学部にすることがテーマでした。ベルリッツとの提携や留学だけでなく、学生は入学後すぐに一週間13.5時間の英語の授業を受けています。これは日本の大学でもトップクラスの時間数です。学生にとっては非常に厳しいカリキュラムでもありますが、それをおもしろく、インパクトのある広告に仕上げました」

 ちなみに今回の広告は、電通の若手クリエイター20人ほどが関わって制作。彼らの力を存分に発揮してもらうべく、クライアントである近大は「完成するまで一度も見ない」「できあがったものに文句を言わない」という条件で企画したそうです。

「ウナギ風味のナマズ」に関する広告
「ウナギ風味のナマズ」に関する広告 出典: 近畿大学提供

入学式につんく♂さん、卒業式は堀江さん


 今年4月の入学式には、卒業生で音楽プロデューサーのつんく♂さんを招いて話題になりました。

 「入学する学生の中には近畿大学を第一志望としない『不本意入学者』が、ある一定数存在します。これは東大以外のすべての大学に言えることですが……。大学の入学式で『こんなはずじゃなかった』と思いながら座っている学生に対し、その1日が一生の思い出に残るような、気持ちを切り替えて『ここでやっていこう』と思えるような、そんな入学式をしたい、というのが入学式に対するテーマになっています。つんく♂さんにプロデュースをお願いしたのは、約10年間入学式を大学スタッフだけで運営してきて、マンネリ感が生まれてきたからです」

 昨年3月の卒業式では堀江貴文さんがスピーチ。YouTubeにアップした動画の再生数が100万回を超えるなど、大きな反響を呼びました。

 「学内から『入学式はあんなに豪華なのに卒業式は……』という声もあり、ゲストスピーカーを呼ぶことになりました。そこで誰にしようかと考えたところ、学生が話を聴く気になる存在、日本版スティーブジョブズの伝説のスピーチを作り出したいと考え、それが出来る人が堀江さんだと思い、オファーしました。それまでも堀江さんは本学の水産研究所に興味を持ち、取材されたこともあり、縁があったこともきっかけのひとつです。もちろん学内的には反対する者もいましたが、そこは担当者の熱意で押し切り、伝説のスピーチになったと思います」

 また、大学名を多くのメディアに登場させようと、大学教員の名鑑を作ってメディアにアプローチし、さまざまな話題や事件・事故などの際に、コメントを出せるような仕組み「コメンテーターガイド」も作りました。

 「国際学部の広告やマグロのポスターなどは、いわゆる宣伝です。大学ではそれを『入試広報』と呼びます。本来の『広報』部門にも数年前から力を入れており、年間400本近いプレスリリースを出し、その掲載率も大手5紙でも3割以上です。3年前に近畿大学の教員2000人以上の専門分野やコメント可能分野を教員名鑑という形で冊子とサイトを作りました。専門家にコメントを頼む際に便利とメディアのみなさんにも好評です」

「固定概念を、ぶっ壊す。」
「固定概念を、ぶっ壊す。」 出典: 近畿大学提供

「大学の序列を壊す」


 何かが起こるのを待つのではなく、自ら話題づくりを狙って企画する「攻めの広報」。なぜ、そうした広報にこだわるのか?

 「『輝く未来に……』とか『世界にはばたくグローバル人材……』とか、大学名を隠せばどの大学でも使えるような広告は絶対に作りません。多くの大学が並ぶ『連合広告』も出しません。14学部48学科を持つ近畿大学は一言で大学を表現することは難しく、ありきたりの表現は、どれもしっくりきませんし、現実と離れたものになってしまいます。攻めの広報が目指す最終形は『大学の序列』を壊すことです」

 ここでいう大学の序列とは何を指すのか?

 「大学界には、受験産業が名付けたグループ分けが昔からあります。関東では『早慶上智』『MARCH』『日東駒専』、関西では『関関同立』そして本学が入っている『産近甲龍』。つまり本学は第二グループに属されていて、上位グループである関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学に劣っているということです。何十年も前に作られたものですが、当時の学力レベルや語呂の良さから、いまだに高校生の大学選びはこのグループ分けが基本となっています」

 「現在では偏差値などでも本学の方が高い学部もあるのに、その枠組みを崩すことはできません。また、偏差値のみならず、『近大マグロ』のような大きな成果を出していても、その枠組みが変わることはありません。私たちはその旧態依然とした大学の序列を壊し、真に評価されることを目指しています。広報戦略はそのためです。マグロの広告にあるように固定概念をぶっ壊すことを目指しています」

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