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原爆投下の日、答えられたのはわずか3割弱 際だつ長崎での風化
NHK世論調査によると、広島への原爆投下の日が1945年8月6日と答えられた人はわずか3割。過去と比較しても、戦争の記憶が風化している。
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NHK世論調査によると、広島への原爆投下の日が1945年8月6日と答えられた人はわずか3割。過去と比較しても、戦争の記憶が風化している。
戦後70年、原爆が広島と長崎に投下され、戦争が終わった8月を中心に様々な催しや報道が戦争の歴史を伝えている。しかし、NHKが実施した世論調査の結果から、原爆の投下日という基本的な事実すら伝わっておらず、被爆地の広島・長崎でも記憶の風化が進んでいることがあきらかになった。
NHKが戦後70年にあわせて実施した世論調査で、広島市と長崎市に原爆が投下された日付について聞いたところ、「正しく答えられなかった人がそれぞれ全国で7割程度」(NHK)だった。
広島に原爆が投下された日付について聞いたところ、「昭和20年8月6日」と正しく答えられた人は、広島で69%、長崎で50%、全国で30%...
記事で「『昭和20年8月6日』と正しく答えられた人」と書いたことから、ツイッターなどでは「元号で聞いたから正答率が低かったのでは」という指摘が相次いだ。しかし、NHK広報局に問い合わせたところ、「西暦で答えても正解とした」とのことで、この批判はあたらない。世論調査の詳細は、NHK放送文化研究所のウェブサイトでも公開されている。
同様の世論調査は10年ごとに実施されていた。NHK広報局に過去のデータを問い合わせ、グラフ化すると被爆地の広島や長崎でも記憶が風化していることがわかる。(各年の世論調査手法は記事の末尾)
■広島への投下日の正答率
【広島市】
77.0%(1995年)
68.6%(2015年)
【長崎市】
85.1%(1995年)
50.2%(2015年)
【全国】
37.5%(2005年)
29.5%(2015年)
■長崎への投下日の正答率
【広島市】
57.9%(1995年)
54.2%(2015年)
【長崎市】
89.8%(1995年)
59.2%(2015年)
【全国】
25.6%(2015年)
2015年は1995年、2005年と調査手法が異なっており、単純な比較はできないが、数字上は正答率は広島市、長崎市、全国、いずれも右肩下がり。特に長崎市ではこの20年で両都市への投下日の正答率が8割台から5割台にまで急減した。
戦後70年の世論調査の結果でもう一つ注目を集めたのが、「米国による原爆投下をどう考えるか」という質問への答えだった。広島市で44.2%が「やむを得なかった」と答え、「今でも許せない」(43.1%)を上回ったことだ。わずか1ポイント差で、世論調査の誤差の範囲内だが、約14万人の死者(1945年末まで)を出した被爆地で半数近くがその被害を「やむを得なかった」と答えた。
全国の回答者で見ると「今でも許せない」が48.8%、「やむを得なかった」が39.6%、長崎では前者が45.7%、後者が40.8%で、広島とは逆の結果がでている。
■米国による原爆投下をどう考えるか
【広島市】
今でも許せない:43.1%
やむを得なかった:44.2%
【長崎市】
今でも許せない:45.7%
やむを得なかった:40.8%
【全国】
今でも許せない:48.8%
やむを得なかった:39.6%
朝日新聞社は戦後70年の今年、平均年齢が80歳を超えている被爆者のうち約2万2千人を対象にアンケートを送り、5762人から回答を得た。
「被爆体験は次世代に伝わっていると思いますか」という質問に「十分伝わっている」と答えた人はわずか2.2%。「ある程度伝わっている」が36.2%で、「あまり伝わっていない」(46.5%)と「まったく伝わってない」(4.2%)があわせて5割を超えた。
戦後70年という節目を迎え、原爆だけでなく、広く戦争や戦後の歴史を伝えるサイトも数多く公開されている。
■添付資料(NHKの世論調査手法)
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