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吉野家、異色の新業態「吉呑み」を開始 その徹底ぶりがすごい
牛丼の吉野家が「吉呑み」(よしのみ)という居酒屋を始めました。東京駅近くの店舗に行き、潜入取材してきました。
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牛丼の吉野家が「吉呑み」(よしのみ)という居酒屋を始めました。東京駅近くの店舗に行き、潜入取材してきました。
牛丼の吉野家が「吉呑み」(よしのみ)と称して居酒屋を始めました。ほとんど遊休スペースとなっていた店舗の2階部分を活用する取り組みです。吉野家のコンセプト「うまい、やすい、はやい」は居酒屋でも通用するのか。同僚と2人で東京駅近くの店舗に行き、潜入取材してきました。
吉野家の東京駅八重洲通り店に到着したのは19時すぎだった。
駅に向かってネオンが連なるなか、「吉呑み」の看板が掲げてある。
「居酒屋」と書かれた赤ちょうちんもつるしてある。
1階を覗いてみると、見慣れた吉野家そのもの。
2階に上がってみると4人掛けの席が4つ、1人掛けの席が4つあり、すべて埋まっていた。
店員から「今、満席なんです」といわれたので、そのまま待つことに。
まもなく、手前の4人掛けの席に2人で座っていたサラリーマン風の男性2人組に声をかけられた。
「隣に座りなよ。混んでる時はお互い様だよ」
ほろ酔いの男性は「初めて来た? いつもの紅ショウガが食べ放題ってのがいいよ」と笑顔で話しかけてきた。
見ると、料理の上にどっさり紅ショウガが。
あたりを見回すと客は男性ばかり。ほとんどが40~50歳台のようだ。
1人席でヘッドフォンをつけたまま、ホッピーで1人飲みしている30歳台とみられる男性の姿も。
猫背な後ろ姿がなんとも寂しい。
これも吉野家の狙い通りということか。
私たちが注文したのは以下の通り。
・生ビール(キャンペーン中で310円)×2
・まぐろ刺し身W(500円)
・ハムポテト(250円)
・ウインナ-(250円)
・牛すじ煮込み(350円)
・牛すい(350円)×2
・牛丼並(300円)
これだけ食べて2970円。
3000円でおつりがくるとは。割り勘でも1500円だ。
私はシメに牛丼を注文。他の注文に先駆けてあっという間に提供された。
このスピード感は、まさに吉野家。
でも他の料理は混んでいることもあってか、ちょっと時間がかかった。
他に気づいたことといえば、テレビが設置されていたこと。
通常の店舗にはないだけに、居酒屋を意識した演出なのだろうか。
後日、吉野家の広報担当・吉村康仙さんに「吉呑み」の狙いを聞いた。
Q 始めたきっかけは?
「夜間の2階フロア有効活用です。全国にある1200店舗のうち50店舗ほどは2階にもフロアがありますが、夜は昼に比べて来客数が減るために、まったくお客さまがいないこともあったんです。そこで神田店で実験することにしました」
Q 居酒屋激戦区といわれる神田。結果はどうでしたか?
「喫煙室を設けたり、レイアウトを変えたりで数百万円かかりましたが、それまで赤字だったのが黒字に転換しました」
Q メニューなどで工夫した点は?
「調理スペースが限られていることもあって、メニューを20種類程度に絞って、単価も安く設定しました。グループ企業から調達することで実現できました」
Q 具体的には?
「マグロの刺し身はすしの『京樽』から、牛すじ煮込みは『ステーキのどん』からスジ肉を仕入れています」
Q 人気メニューは?
「1位は牛皿。次が牛すじ煮込みです。吉野家ということでお客さまも意識されているんでしょうか」
Q メニューを増やす予定は?
「厨房設備や作業効率を考えると、これ以上数は増やせません。今のメニューの中で改廃していくことになると思います。目指すのは居酒屋ではなく、あくまで『ちょい飲み』ですから」
Q 吉呑みの店舗は増やしていきますか?
「7月末時点で3店舗でしたが、9月にかけて新たに6店舗で始める予定です。駅前の店舗などを中心に広げていきたいと考えています」
本格的な居酒屋を期待して行くとがっかりするかも。
ただし、一杯飲んで、ちょっとつまんで、シメに牛丼といった使い方なら、かなりリーズナブルだ。
吉野家が始めた「牛すき鍋膳」に各社が追随したように、他社を巻き込んだ展開になるか?