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まさか日本独自の文化とは…オランダの公園で驚かれた〝あの〟遊び

オランダで驚かれた、美しく輝く赤茶色の球体。その正体はまさかの「泥だんご」でした
オランダで驚かれた、美しく輝く赤茶色の球体。その正体はまさかの「泥だんご」でした 出典: 典子さんのX(@MPgybuHx96dPQqL)の投稿

目次

オランダに移住したある日本人女性が、公園でふと作っていたものに、熱い視線が集まりました。SNSに投稿したのは、日本だと誰しも子どもの頃に一度は作ったことがあるもの。今、世界中で「日本独自の文化」として注目を浴びているようです。話を聞きました。

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「オランダ来て何やってるんだろう」

話題になったのはレイチェルさん(@MPgybuHx96dPQqL)のXの投稿です。


画像には、ぴかぴかに光る、赤茶色の球体が写っています。

《泥だんごの上達が止まらず
私はオランダ来て何やってるんだろう。》

球体は、まさかの泥だんごでした。コメントでは「もはや宝石」「もうこれ芸術作品の域」「売れるレベルの泥団子」などと盛り上がりました。

投稿者のレイチェルさんはこう返信しています。「日本の伝統芸術文化だったらしく、周りにいるオランダ人みんな目を丸くしてビックリしてるので、広めてみたいですー」

え、泥だんごが日本独自だなんて、それ本当ですか?

公園で、事件が

レイチェルさんに連絡をしてみました。

本名は山田典子さん。本業はシンガーで、現在はYouTubeをメインに活動しています。

オランダに移住したのは昨年3月。日本人で、ピアニスト・音楽講師の夫と「音楽を楽しむためにいつかヨーロッパに移住したい」と話していましたが、コロナ禍を経て完全にオンラインで仕事ができるようになったことをきっかけに、移住を実現しました。子ども2人は現地の小学校に通っているそうです。

「英語も通じてビザが取りやすく、人も優しい国」というオランダで始まった生活ですが、ある日、公園で、事件が起こります。

「泥だんごマスター」に

オランダの公園の砂場で、泥だんごを作っていた山田さん。砂浜のような砂で、「泥だんごには向いていないな」と思いながらも、試しに手で磨いてみたところ、ピカピカではないけど、テカテカぐらいにはなりました。

すると近くで遊んでいた子どもの同級生や、その親が「それはなんだ?」という目で見てきたので「これはここの砂で作ったzand bal(砂のボール)だ」と説明したところ、「目が飛び出そうなほど驚かれました」。

典子さんは、日本で作ったピカピカの泥だんごの写真も見せると、「アゴが外れそうな」表情で見つめられ、「泥だんごマスター」の評判はあっという間に広まりました。後日、地域のお祭りに行くと、うわさを聞いた子どもたちに「泥だんご作るんでしょ? すごいな~いいなー!」と喝采を浴びたそうです。

土と水のみで作った泥だんご
土と水のみで作った泥だんご 出典: 典子さん提供

「泥だんごを作っては公園へ返す」繰り返した2年間

そもそも、なぜ泥だんごなのでしょうか?

「泥だんごマスターノリコ」がその境地に達したのは、コロナ禍がきっかけだったそうです。当時は西新宿に住んでいました。夫の仕事が在宅でのオンラインレッスンになったため、昼間は家から出て、子どもたちと毎日のように近所の公園で過ごしていました。何げなく、昔、泥できれいな球体を作って遊んでいたのを思い出し、久々に作ってみました。

ネットで「泥だんごが光る」と知り、研究を始めました。どの土が良いのか、水分はどれほど混ぜるのか、最適な乾燥具合は? 何で磨いたら光るのか、ストッキング、デニム、ガラス…。

その後、引っ越して家が広くなっても、公園の土を持ち帰っては、ベランダで鍛錬を続けました。「泥だんごを作っては、公園へ返す」という作業を毎日のように繰り返した2年間、手の皮が薄くなったころ、ついにオリジナルの「泥だんごのレシピ」ができあがりました。

「世界中どこにでもある身近な材料を使って、誰でも簡単に楽しめる方法はないか? と日々研究して作りました」

日本の公園で5年前(初期のころ)に作った泥だんご
日本の公園で5年前(初期のころ)に作った泥だんご 出典: 典子さん提供

門外不出の「泥団子レシピ」

そして、筆者のもとにグーグルドキュメントで届いた「ノリコの泥団子レシピ(共有用)」には、こうありました。

《材料
・粘土質の土
・水 》

レシピには細かな分量も書かれていますが、本当に材料は全くの「泥だんご」でした。

《所要時間
1日目:1時間半ぐらい
乾燥:20時間以上
2日目:2時間半ぐらい》

2日がかりという所要時間に驚きつつ、「作り方」を見ると、コツまで細かに伝えています。

要約すると、土に少しずつ水を混ぜながら、丁寧に練り上げ、下敷きなど滑らかな平面で転がす。

少し乾燥させて、さらに形を整える。20時間、日陰などで乾燥させる。全体を軽く水に浸した後、ガラスの上で水を足しながら転がして形を整える。

粘土質の土をふりかけながら手で磨き、仕上げにガラスで「根気よく」磨き上げる。

これで、完成、とのこと。

その後、日々のメンテナンスとして、オリーブ油を塗って磨いたり、鉱物が原料の「マイカパウダー」で色付けを楽しむこともあるそうですが、「オリーブ油やマイカパウダーでコーティングする事で光ると勘違いしている方が多いのです。でも、(光ることとは)まったく関係ありません」。

典子さんが作った「泥だんご」。鉱物の「マイカパウダー」で色づけしている
典子さんが作った「泥だんご」。鉱物の「マイカパウダー」で色づけしている 出典: 典子さんのX(@MPgybuHx96dPQqL)の投稿

ブラジルの〝泥だんご愛好家〟、京都の〝泥だんご仙人〟

SNSで泥だんごを検索していると、「dorodango」という共通語になっており、海外でも泥だんご作りを楽しんでいる人がいることを知りました。

「Japanese Art(日本のアート)として紹介されていて驚きました。みなさん作り方が千差万別で、自由に泥だんごを光らせていました。新たな文化になっていて素敵だなと思いました」

【海外で泥だんごを紹介する書籍】 Dorodango: The Japanese Art of Making Mud Balls
Instagramで海外向けに泥だんごを発信してみると、ブラジルの〝泥だんご愛好家〟から「作り方を教えて」とメッセージが来たり、京都の〝泥だんご仙人〟こと左官職人の三谷涼さんともつながったそうです。三谷さんは2021年から、日本が誇る「左官」技術を世界に広めるきっかけのひとつとして「光るどろ団子」ワークショップを続けてきた先駆者です。

泥だんごで世界が広がり、「西新宿の公園で黙々と泥だんごを作っていた時には想像できない展開になっています」。

だんごの乱れは心の乱れ

現在、オランダで、典子さんは子どもの同級生や親に向けて〝ワークショップ〟を試験しているそうです。

典子さんのワークショップでは泥だんごの2日目の工程から「磨く」を中心に体験してもらいます。

大人も子どもも、集中して磨きあげ、「どんどん光り始めると本当にうれしそうにしています!」。

海外で向き合った「Dorodango」は、土を触ることでのリラックス効果や精神性など、ヨーロッパで人気の「禅」や「マインドフルネス」に通じるものを感じてもらっていると印象を受けた典子さん。

思い起こせば、西新宿の公園で近所の子どもたちと泥だんごを作っていたとき、教訓として合言葉にしていたのは「だんごの乱れは~心の乱れ!」。

「私も泥だんごに、『今』というものに集中する、精神性を教えてもらっていたんだなと思います」

オランダで開いた泥だんごのワークショップ
オランダで開いた泥だんごのワークショップ 出典: 典子さんのX(@MPgybuHx96dPQqL)の投稿

「まさかの泥だんご」が移住の光に

今後は、個人や企業向けや、イベントとして、「日本の泥だんごで日々の疲れた心とカラダを癒やす」というワークショップを軌道に乗せてみたいと考えている典子さん。

海外に移住したい人たちの希望にもなれればと気合を入れます。

「〝まさかの泥だんご〟が海外では喜ばれました。今はいろんな方法で海外移住に挑戦することができるので、そんな選択肢や可能性があるんだと知ってもらえたらうれしいです」

ゆくゆくは、オランダの陶器博物館に展示されたい、オランダにある「スケベニンゲン」というビーチで海を見ながら泥だんごを作る教室を作りたい……。

典子さんの泥だんごドリームは広がっています。

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