港に係留中の船のロープにぶら下がり、綱渡りをする動画がSNSで拡散されています。大きな船を係留するロープは、切れると人の体をはね飛ばしたり、場合によっては腕・足・首が切断されるほどの力があるもので、実際に死亡したり重傷を負ったりする事故も発生しており、注意が必要です。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
5月中旬、TikTokの動画を転載する形で、Twitterである動画が話題になりました。元の動画は、係留中の大型の船舶につながったロープに男性がぶら下がって綱渡りをする内容。これに対して、「切れたら確実に五体満足では帰れない危険な行為」「港にあるロープは近づくんじゃねえぞ」などのコメントが集まりました。
被害に遭った船舶の運航者(オペレーター)である鈴与海運株式会社を取材しました。同社担当者は今回の動画について、問い合わせなどにより把握しているということでした。その上で、このような行為は「極めて危険」だとして注意喚起します。
「船員・従業員はもちろん、港湾で働く方々にも必要な時以外はホーサー/もやい(このロープのこと)には近づかないよう指示を出しております。特に、風が強い時、波が高い時、うねりが発生している時にはホーサーが切れる可能性があり、切れた時は、人の体を跳ね飛ばしたり、場合によっては腕・足・首などがちぎれるほどの力を発生させます」
また、「今現在、本件に関連した損害が出ているわけではありませんので、法的措置等は検討しておりませんが、見る限り極めて危険な行為」とした上で、以下のようにコメントしました。
「海中落下や、万が一、船舶や乗組員にダメージを与えた場合の損害賠償、港湾地域への一般人の立ち入りが今後制限される可能性とそうなった場合に発生するコスト、海運業界全体で対策を講じることになった場合の責任など、動画配信で目立つことのメリットと比べ、危険やデメリットの方が何倍も存在することに気づいていただきたいと思っております」
国土交通省によれば、2009年に阪神港神戸区において係留ロープが破断し、跳ねたロープが作業に従事していた作業員2人に当たり、両作業員が死亡する事故が発生しています。
悪質な“いたずら”も横行するSNS。あらためて、こうした行為のリスクを広く知らせる必要があります。