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#3 「健康にいい」の落とし穴

「眠れない」解消するつもりが悪循環も 医学的におすすめの〝習慣〟

不眠は今や「国民病」だが……。※画像はイメージ
不眠は今や「国民病」だが……。※画像はイメージ 出典: Getty Images

目次

睡眠についての悩みは多く、不眠は日本人の「国民病」と言える状況です。こうした睡眠のトラブルはなぜ起こり、どうすれば改善できるのでしょうか。その原因と、医学的に快眠の効果があるとされる習慣についてまとめます。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)

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悪循環になる不眠の“NG習慣”も

仕事の効率や、メンタルにも影響する睡眠。厚生労働省によれば、日本では一般成人の30〜40%に何らかの不眠症状があり、これは女性に多いことが知られています。

他にも、日本人約3000人が回答した2000年の研究(※)では、成人の21.4%が不眠を自覚しており、成人の14.9%が日中の眠気に悩み、6.3%が睡眠薬を使ったり寝酒を飲んだりしていることがわかっています。

「眠れないときにお酒を飲む」という人がいるかもしれませんが、アルコールは睡眠の質も量も低下させるうえ、それ自体が不眠の原因で、不眠の改善には悪循環になるおそれがあります。

そもそも、不眠症には「入眠障害(寝つけない)」「中途覚醒(途中で起きてしまう)」「早朝覚醒(早朝に起きてしまう)」「熟眠障害(深い眠りにつけない)」があります。不眠と聞くと、「寝つけない」のイメージが強いかもしれませんが、実際にはこのうち中途覚醒も多く、年齢を重ねるごとに増加します。

不眠とそれに伴う日中の体調不良が週3日以上、3カ月以上、持続する場合、慢性不眠症として治療が必要になる可能性もあります。不眠症状がある人のうち、慢性不眠症は成人の約10%に見られるもの。原因はストレス、精神疾患、神経疾患、アルコール、薬剤の副作用、生活リズムの乱れ、環境(騒音や光)などさまざまです。不眠が続く場合は、まず、かかりつけ医に相談をしてみてください。

不眠を改善する「運動」の効果

「国民病」とも言える不眠。では、どんな対策があるのでしょうか。

まずは「就寝・起床時間を一定にする」こと。睡眠と覚醒を調整する体内時計を、生活リズムに合わせましょう。一方で、必要な睡眠時間には個人差があるため、「X時間は眠る」などの目標を立てるのは、かえって不安や緊張が増すためNGです。

よく言われるように、「太陽光などの強い光を浴びること」には、体内時計を調整する働きがあります。特に、早朝にこうした光を浴びると、夜、寝つく時間が早くなり、朝も早く起きられることが知られています。「早く寝るから早く起きられる」というよりも、「早く起きるから早く寝られる」というのは、意外と盲点ではないでしょうか。

そして、この機会におすすめしたいのが軽く汗ばむくらいの「適度な運動をすること」。国内外の大規模な調査において、運動をする人には不眠が少ないことがわかっています。中でも、睡眠の維持に効果があるのは、習慣的な有酸素運動です。

運動により得られる睡眠への効果は大きく「寝つきがよくなる」「深い睡眠が得られる」の2つです。特に、普段から不眠がちな人ほど、運動による効果が大きいことがわかっています。ただし、激しい運動は逆に睡眠を妨げるため、注意が必要です。

また、せっかく運動をするのであれば、その効果を最大限、引き出したいもの。とすると、タイミングも重要です。不眠の解消に効果的な運動のタイミングは、夕方から夜(就寝の3時間くらい前)の運動だと言われています。というのも、睡眠は脳が“クールダウン”するときに出現しやすくなるためです。

寝つく数時間前に運動をすると、脳の温度が一時的に上がります。そうすると、布団に入ったとき、脳の温度が運動をしないときよりも大きく下がります。この脳の温度差が大きいほど、快眠が得られやすくなることがわかっています。

もう1つ、近年パワーナップなどと呼ばれあらためて注目されている「昼寝をすること」もおすすめです。昼寝をすることにより、睡眠不足で“ぼんやり”した状態よりも結果的に日中の身体活動量が上がり、適度な運動をしたのと同様、夜によく眠れるというメカニズムがあります。15時までに30分以内が目安です。

これら4つの習慣の他にも、ストレス自体を解消する娯楽や旅行、あるいは前述の運動などの趣味、寝る前に副交感神経を活発にさせるリラックスタイム(音楽や半身浴)、快適な寝室環境を作ることも、不眠の改善に効果があります。試していないものがあれば、生活に取り入れてみるのはいかがでしょうか。

※Sleep loss and daytime sleepiness in the general adult population of Japan - Psychiatry Res. 2000 Feb 14;93(1):1-11.

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