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#30 #ふしぎなたてもの

住宅街に謎の長屋根、実は防衛省の研究所 中には国内最古の巨大水槽

目黒の艦艇装備研究所=2023年3月16日、朽木誠一郎撮影
目黒の艦艇装備研究所=2023年3月16日、朽木誠一郎撮影

目次

恵比寿駅から徒歩5分という一等地の住宅街に位置する、全長約360mの屋根を持つ建物。正門まで回り込まないと、何のためのものか、外からではよくわかりません。実はこの建物、防衛省の研究所で、元々は海軍の施設だったのです。中では一体、何をしているのか、そして海に接していない目黒と海軍の歴史を紹介します。(withnews編集部・朽木誠一郎)
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一等地の住宅街に“長屋根”

東京メトロ恵比寿駅から徒歩5分、JR恵比寿駅から徒歩7分の住宅地と聞けば、便利な一等地を想像するでしょう。

そんなエリアを恵比寿ガーデンタワーの展望台から眺めてみると、謎の“長屋根”を持つ倉庫や工場のような建物があることに気づきます。

実際に現地に赴いてみると、そこにあるのは全長約360mにわたる屋根のある建物。あまりに長いのと、周囲はごく一般的な住宅地であるため、用途がよくわかりません。これは一体、どんな建物なのでしょうか。
 

目黒にある防衛省の研究所

目黒の艦艇装備研究所=2023年3月16日、朽木誠一郎撮影
目黒の艦艇装備研究所=2023年3月16日、朽木誠一郎撮影
結論から言うと、これは防衛省の防衛装備庁の「艦艇装備研究所」です。同省によると、船舶、船舶用機器、水中武器、音響器材、磁気器材、掃海器材についての考察、調査研究及び試験等を行っています。

同省担当者に話を聞きました。艦艇装備研究所は全国に複数の拠点があり、「目黒地区」はその一つです。他には神奈川県横須賀市の「久里浜地区」や山口県岩国市の「岩国海洋環境試験評価サテライト」、静岡県沼津市「大瀬実験所」など、主に海の近くに研究所があります。

ここで、目黒地区の長い屋根の建物の中にあるのは「大水槽」。船の模型を水槽に入れて走らせ、流体力学の面から性能を評価しています。この水槽は長さ247m、幅12.5m、深さ7m。国内でもっとも古い水槽です。

2019年に当時、防衛相に就任直後だった政治家の河野太郎さんが内部を視察。その一部始終を迅速にTwitterで“実況”したことでも注目されました。

では、なぜ海に接していない目黒に、艦艇の研究拠点があるのでしょうか。実は、この研究所は1930年に建設された海軍技術研究所の跡地にあります。大水槽などのいくつかの施設は、約90年後の現在まで引き継がれているものです。

疑問は残ります。なぜ、目黒に海軍の研究所があったのでしょうか。公式サイトの『歴史を訪ねて 目黒火薬製造所』というページでこのエリアの歴史を紹介している目黒区を取材しました。

同ページには1857年に江戸幕府により目黒砲薬製造所が造られたとあります。このことを契機として、1879年に明治政府の火薬製造所ができたと考えられます。

再び防衛省によれば、その後、1930年に海軍の研究所の移転先となった、という経緯です。

元々は目ぼしい産業の乏しい「三田村」にあった江戸幕府の砲薬製造所、今は「一等地の住宅街」。艦艇装備研究所は、土地のイメージが時代により変化していくことの証左でもあります。

【連載】#ふしぎなたてもの

何の気なしに通り過ぎてしまう風景の中にある #ふしぎなたてもの 。フカボリしてみると、そこには好奇心をくすぐる由縁が隠れていることも。よく見ると「これなんだ?」と感じる建物たちを紹介します。

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