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手練れの芸人が救った冠番組 児島がトークを回し渡部がイジられる今

「アンジャッシュ」の児嶋一哉さん(左)と渡部建さん=東京都杉並区で、2005年6月29日撮影
「アンジャッシュ」の児嶋一哉さん(左)と渡部建さん=東京都杉並区で、2005年6月29日撮影 出典: 朝日新聞社

目次

不倫騒動から1年8カ月――。アンジャッシュ・渡部建は、コンビの冠番組『白黒アンジャッシュ』(千葉テレビ放送)から芸能活動を再開した。渡部に対しては復帰初回の放送前からバッシングが起きており、これまで同番組を放送していた一部のテレビ局は打ち切りを発表していた。

暗雲が垂れ込める中、番組を救ったのはゲストとして登場した腕のある芸人たちだった。児島がトークを回し、渡部がイジられる。立ち位置を入れ替えてゼロからスタートした“新生アンジャッシュ”について考える。(ライター・鈴木旭)
 
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終始うつむき加減だった復帰一発目

「視聴者のみなさん、僕がしてしまった本当にバカげたことで大変ご迷惑をお掛けしたことを心よりお詫び申し上げます。本当にすみませんでした」
 
番組の冒頭でこう謝罪し、アンジャッシュ・渡部建は深々と頭を下げた。2020年6月に複数女性との不倫が発覚。1年8カ月の自粛期間を経て彼が復帰の場所に選んだのは、千葉テレビ放送のレギュラー番組『白黒アンジャッシュ』だった。
 
一発目の放送は、今年2月15日。ゲスト出演やコーナーを省き、相方の児嶋一哉とひたすら腹を割って話し合うというものだった。登場時から渡部は視聴者や関係者に向けて謝罪。児島に対しても、自分の過ちで迷惑を掛けたと詫び、「ごめんなさい」と頭を下げた。
 
これに児嶋は「お前の人間性だと思う」「あり得ないことになったのも全部お前のせい」と厳しい言葉をぶつけた一方で、「(コンビ間の)立場弱くて言えなかった俺もすごい責任を感じてる」とコンビの相方としての反省も吐露。「これからは気付いたら言う」と、今後の姿勢も表明した。
 
重々しい空気を打開するため、児嶋が「メッセージとかもそうだけど、硬すぎない? 俺に。『ご無沙汰しております』とか『ご自愛申し上げます』とか」と個人的な連絡の仰々しい文面を笑いに変えようとするも、渡部はうつむき加減でうなずくばかり。
 
自粛中の生活、妻・佐々木希の思いなど、渡部が口を開く場面もあったが、どんなテンションで臨むべきなのか、探りさぐりの状態で終わってしまった印象だった。

番組の雰囲気変えた三村マサカズ

復帰初回の放送前から先行きが危ぶまれていた。番組タイトルをバックに撮影された告知写真で、渡部が体の後ろに手を組んでいたことに、ネット上で「反省していない」と批判の声も上がった。
 
その後、ネット局のTOKYO MX、三重テレビが番組の打ち切りを発表。さらなる放送局の減少も不安視される中で、『白黒アンジャッシュ』に初のゲストとして登場したのが、同じ事務所の後輩であるザ・マミィだった。
 
昨年のキングオブコントで準優勝した話題から始まったものの、クズ芸人としても知られる酒井貴士が「キングオブコント出ないんですか?」「(児嶋は)渡部さんバブルで稼いだ」と発言するなど、アンジャッシュの二人を戸惑わせるシーンが新鮮だった。
 
続けて登場したのが、さまぁ~ず・三村マサカズだ。番組の900回記念を祝し、3月8日から3週に渡って出演。番組の雰囲気を変える起点となった。
 
とくに印象的だったのは、復帰の初回で児島が渡部に「人間性の部分は、もう俺は本当に大嫌い」と発言したことに対する三村の考えを語った場面だ。
 
「たとえば俺が『大竹(一樹)のこと嫌い』って言った時に、(その後も)大竹はちょっと心の中にあって『でも、こいつ根本、俺嫌いなんだよな』とか思ってたらネタも作れないじゃん。だから、『今までのお前は嫌いだった。こっから先好きになるような渡部になってくれよ』みたいなことを言って(ほしかった)」
 
それまではトークの主導権を相方に委ね、たまにフォローを入れるとチラッと児島の顔色を窺う渡部の姿があった。ただ、三村のゲスト回から心なしか表情が柔和になったように感じる。コンビ仲が良いことで知られる先輩の言葉だからこそ説得力が違ったのだろう。

手練れの芸人が見せた“渡部イジり”

三村の出演以降、劇団ひとり、千原兄弟・千原ジュニア、オアシズ・大久保佳代子と手練れの芸人が続々と登場。それぞれの芸風で“渡部イジり”を繰り広げた。

まずは劇団ひとりだ。テンション高く登場すると、事前に渡部から電話があったことを告白。「(チャラそうに)『いや、もう好きにイジってー』みたいな感じだった」と早くも渡部を挑発する。続けて自粛中に寿司屋で大トロを食べたという言葉を捕まえて「でも、カッパ巻きとかですもんね」「トロ!? うーわ、いいな。俺も謹慎しようかなー」と大げさにリアクションするなど自由気ままな言動で笑わせた。

続けて登場した千原ジュニアは、打って変わって巧みな話術で番組を盛り上げる。文春砲を受けた時の心境、自粛期間中の思いなど、ごく自然な流れで渡部や児嶋が“語らされて”いく。その一方で、“かつて飲食店にあった渡部の写真が壁から外されている”というエピソードを受け、「俺がもし店やってたらトイレに飾る」と言い放つなど、きっちりと毒気のあるボケも差し込んだ。

冒頭から、「刺激を求めてきちゃった」と口にしたのは大久保だ。渡部の復帰後、初の女性ゲストとの紹介を受けると、「変な目で見て。大丈夫?」と照れたように両手で顔を覆ってみせる。また渡部が大久保への恩を口にすると、「変わったね、人がやっぱり。昔はちょっと人の悪いところ見つけるのが得意だったじゃない?」と迎え撃ち、変顔や一発ギャグを勧めるなどやりたい放題だった。

その後、昨年のM-1グランプリ決勝で注目を浴びたモグライダーを挟み、伊集院光が3週連続で出演。初回は千葉ロッテマリーンズの投手・佐々木朗希の完全試合を皮切りに渡部と野球談議を繰り広げ、その後は師匠・三遊亭円楽の粋なエピソードなど伊集院自身にまつわる話を次々と披露。“趣味や雑学を語る”というラインで渡部の良さを引き出す話術が見事だった。

“新生アンジャッシュ”という生き様

渡部が復帰して4カ月。当初はぎこちない態度も見られたが、ベテラン芸人の面々によって渡部の軽妙なトークがだいぶ戻ってきたように感じる。

復帰2回目の放送でコンビの立ち位置を変え、若手時代に大久保佳代子からもらったという決めポーズ「アーン、ジャーッシュ!」を番組登場時に元気よく披露すると決めた。基本的には児島がトークを回し、渡部がイジられる。そんな“新生アンジャッシュ”が、徐々に形になってきているのだ。

もちろん渡部のしたことには倫理的に大きな問題がある。家族を持ちながらの過ちであったこと、イメージとのギャップもあり、世間に大きな衝撃を与えたのも事実だろう。ただ、どんなタレントであれ、こうした不祥事を起こせば万人に受け入れられる復帰などない。「これなら信用を取り戻せる」という明確な正解がないところで、それぞれが自分なりの誠意を見せていくことになる。

さまぁ~ず・三村が『白黒アンジャッシュ』の中で、新ネタを作りコンビで披露することを勧めていたが、それも一つの方法かもしれない。ファンに向けた真摯な姿勢だろうし、原点に立ち返った地道な行動にもとれる。私個人も見たい気持ちは同じだ。

とはいえ、当事者である二人が前向きになれない中での一時的な活動が“罪滅ぼし”になるとも思えない。「ネタ作りや単独ライブを続ける」「テレビを活動の軸として考える」といった姿勢は、芸人それぞれが持つ生き様でもあり、誰もが同じ場所を目指す必要もないだろう。

様々な選択肢があった中で、渡部は『白黒アンジャッシュ』での復帰を選んだ。そして、錚々たる芸人たちからイジられ、発破をかけられて、過去の自分と格闘している。これが本当に「反省していない」のだろうか。判断するには、もう少しフラットな目線が必要な気がする。

ここまで番組を見る限り、私は1回1回の収録に丁寧に取り組んでいる印象を受けた。過去は決して消えるものではない。ただ、以前より今のほうがよっぽど芸人らしいと感じるのもまた事実なのだ。

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