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「こんなところに太陽はありません」幼稚園のお絵かき、心のしこりに

大人の概念に当てはめたらピカソなんて全否定

幼稚園のときに感じた違和感をマンガにした
幼稚園のときに感じた違和感をマンガにした 出典: さてよさん(@sateyo)のツイッターから

目次

「絵を描くことにやってはいけないことがあるんだ」――。およそ30年前、子どもの頃にかけられた幼稚園教諭の一言にひっかかりを覚え、いまも記憶に残っているというイラストレーターのさてよさん(@sateyo)。子どもが絵画で表現をする際、保育者はその様子をどうとらえるべきなのか。現役の保育園長にも話を聞きました。
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「この色を使ってはいけません」

子ども時代の「お絵かき」について、いまも「怒られないように緊張しながら描いていた記憶がある」と話すのは、ウェブで漫画やイラストを発表しているさてよさん(@sateyo)です。

幼稚園に通っていた30年ほど前、お絵かきをしている時間に「こんなところに太陽はありません」「この色を使ってはいけません」と幼稚園教諭から言われた当時の体験をマンガにしました。

マンガと共に、《幼稚園の頃に先生に言われたことがいまだに心にひっかかっています。 先生の真意は分かりませんが「絵を描くことにやってはいけないことがあるんだ」と当時は思いました。 人を傷つけたり犯罪行為でなければ自由に描いていいんじゃないかな、と今は思っています》とツイッターに投稿すると、3万件以上の「いいね」がつきました。

緊張しながらお絵かきをした記憶

女の子の絵を描くことが好きで画面いっぱいに描いていたという当時のさてよさん。「絵に関してだけではなく、他にも厳しい指導をしていた」という先生でしたが、太陽の位置や、特定の色を使わないよう指示されたことで「当時、私は先生の言うことは絶対だとおもっていたので、『怒られたくないからやらないようにしよう』と思っていました」。

当時をいまでも覚えているのは「怖かったから」。怒られないようにと、「緊張しながら絵を描いていた記憶があります」。
当時を振り返り「せめてなぜだめなのかを説明してほしかったですが、できれば自由に描かせてほしかった」と話します。

「自由に表現」より、「教える・やらせる」の時代

エピソードは幼稚園でのものですが、保育者の視点で子どもが絵を描くことをとらえると、どのような見方になるのでしょうか。
さてよさんのエピソードについて、NPO法人こども発達実践協議会の代表理事で、大田区の未来のツリー保育園園長 河合 清美さん(ツイッターアカウントは@petit_column)に聞きました。

     ◇
戦後、社会を作り直すために手いっぱいだった大人のため、子どもがいっぺんに施設に預けられていたような時代がありました。
ですが、それでは子どもは必要な経験ができないし十分な育ちが保障されないよねということで、幼稚園教育要領では、教育内容を6領域(健康、社会、自然、言語、音楽リズム、絵画制作)に分類しました。
(※現在は5領域(健康、言葉、表現、人間関係、環境)で、保育所保育指針と共通)

その領域に沿って、「経験『させてあげよう』」という時代がありました。

ただ、高度経済成長の中で、早期教育など、大人が子どもに「やらせる」という風潮に拍車がかかりすぎてしまった反省から、次は、「『やらせる』という感覚では子どもは育たないよね」という時代になりました。
2018年の保育所保育指針や幼稚園教育指針の改定では「アクティブラーニング」の視点が強化されています。

ですが、高度経済成長期に早期教育が流行した結果、園ごとに「うちの園ではこんなことを『やらせる』ことができます」という伝統ができ、そのなごりが、さてよさんが幼稚園に通っていた30年ほど前も、もっと言えばいまでも一部で残ってしまっています。

さてよさんの経験も、子どもたちが「自由に表現する」ということよりも大人が「教える」「やらせる」という感覚にいたときのことだと思います。

「正しさ」の概念と切り離さないといけない

私が子どもたちの絵画表現をみるときに気を付けている点は年齢によって異なります。

3歳以降は、色使いでいえば、「カラフルだな」とか「好きな色を使うんだな」とか、ありのままを受け止めています。

表現に「正しい」「正しくない」はなく、その概念とは切り離さないといけません。何を表現したのか、それを肯定的に受け止めていくことです。

よく聞くのは「真っ黒に塗るのが気になる」。確かにそれはなにかあるかもしれません。でもそれを「黒に塗っちゃだめよ」ではいけません。「なにかあるのかな?」と思いながら「いっぱい描けたね」と受け止めるのが大人の役割です。もしそれで何かを表現しているのであれば、大人は、それは何を表現しているのかを考え、受容しなくてはいけません。

もし、子どもの表現を大人の概念に当てはめて評価してしまうと、ピカソなんて全否定ですよね。

《参考》河合清美さんが見る、年齢に応じた「お絵かき」のポイント

・0、1歳
何を描くか、ということよりも運動発達的なところを見ます。手首がちゃんと動くようになっているか、腕が大きく動かせるようになっているか。それぞれができるようになってくると、紙いっぱいに表現することができるようになります。
また、思いっきり大胆に描くことができていれば、それは心の広がりや、開放感の表現だと受け止めます。
・2、3歳
たまたま描けたものを何かに見立てる力の育ちを見ます。
例えばたまたま線が引けたとき、それを「新幹線みたい」などと言うことがあります。そのとき、否定せず「新幹線だね」とそのまま受け止めています。
・3歳以上
マルに点を2つ描いて「ママ」と伝えてくれたりします。それは意図を持って描くことであり、「見立て」から「描く」ことに転換したなと捉えます。

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