MENU CLOSE

話題

ずっと社民党に残るつもりですか? 福島さん本人に聞いてみた

共産主義との違いは…脱原発可能と言える理由

「社会民主主義ってなんですか?」福島みずほさんに聞いてみた
「社会民主主義ってなんですか?」福島みずほさんに聞いてみた

目次

かつて総理大臣を出したこともある社民党は、現在、衆院1人、参院1人の規模になっています。そんな状況に対して代表の福島みずほさんはどう思っているのでしょうか? 「平和」は大事だけど、目の前の生活を何とかしてほしい現実。そもそも、共産党との違いがわからない人も……。それでも社民党でがんばる理由について、YouTubeたかまつななチャンネルで迫りました。

【PR】「あの時、学校でR-1飲んでたね」

社会民主主義ってなんですか?

――社会民主党はそもそもどういうことを理念にした党なんですか?

福島:社民党は、もともと社会党を前身に持つんですが、一部の人の利益、富裕層のための利益ではなく働く人が主人公で、生活者やいろいろな人が、本当に生きやすい社会を作ろうというのを大事にしています。そのために「公平、人権、環境、平和、共生」を掲げています。

イメージで言うと、ニュージーランドや北欧のノルウェー、スウェーデン、デンマークが社会民主主義的な政権党です。公平な税制の実現で、税を富裕層や大企業からもちゃんともらって、公平な分配をする中で、教育や福祉などにしっかりとお金を振り向けるという感じです。


――社会民主主義というのは、共産主義とは何が違うんですか?

福島:社会民主主義は、資本主義の中で改革をしていこうという点が特徴です。「資本主義の中で儲ければいい、後は野となれ山となれ」という経済一辺倒ではなくて、公平な分配や気候危機への対応を通してどう資本主義を是正していくか、考えています。


――共産主義は、福祉を充実させて、大きな政府にしていく、生産手段をみんなで共有していくというように資本主義に対してはどちらかというと否定的ですが、社会民主主義はそこが違うということですか?

福島:そう思っています。ただ、社会民主主義って分からないよねと思われると思うんです。共産主義のような生産手段の国有化ではなくて、例えば公平な税制の実現。そしてその税金をどこで使うかを大事にしているので。

例えばフィンランドの首相が、サンナ・マリンさん、34歳です。首相になったときに、彼女は、全ての子どもが自分のなりたいものになることができ、全ての人の尊厳が守られる社会を作りたいって言ったんですね。私はこれは社会民主主義だと思った。

サンナ・マリンさん自身、自分のお母さんが離婚したシングルマザーでした。お母さんはその後、女性と同性婚をしていますが、彼女自身は、経済的に恵まれた家庭ではなかったんです。でも、ヨーロッパはイギリス以外は、大学の授業料や入学金がありません。彼女は大学に行き、労働運動などをやりながら頭角を現して、34歳で首相になった。すごいですよね。

なんで日本で根付かないんですか?

――日本だと考えられないですね。今、日本は格差が広がってきているので、社会民主主義がもう少し広がってもいいなとは思うんですけど、政党としてはどんどん小さくなってしまっていると思います。なぜ、日本では社会民主主義、社民党が根づかなかったと思いますか?

日本は、小泉構造改革以降なのか、その前からなのか、自己責任が強調されるようになりました。身を切る改革として、公共サービスを縮めれば縮めるほどいいとされてきた。

でも、公共サービスを縮めると、シングルマザーとか障害のある人とか、高齢者とか、もともと立場の弱い女の人がすごく困ります。非正規雇用なのは自分のせい、給料が安いのも自分のせい、生活が苦しいのも自分のせい。それが骨の髄まで染み込んでしまっているように感じます。これを変えて、みんなが生きやすいようにしてきたいです。


――いま、社民党を支持している人はどういう人たちが多いんですか?

公平な税制の実現を望む人、福祉や教育を大事にしてほしいと思う人、それから平和が大事と思う人たちですね。土井たか子さんが強調していた、憲法9条を変えないという護憲の立場の人です。憲法を生かしていくことが大事で、戦争をする国にはしたくないという人たちが支持してくださっていると思います。つまり、平和と社会民主主義、この2本立てです。


――階層で言ったらどういう人が多いですか?

中高年のリベラルの人が割と多いと思います。本当はもっと非正規雇用の人とか、若い人たちに支持してほしいんですけど。

党員の数も少し減っています。でもこの間の衆議院選挙で、4年前よりも得票数が伸びました。来年の参議院選挙で2%をなんとしても取って、国会議員を増やしたいです。


――私が感じるのは、社民党を支持する人は護憲の立場の人たちが多くて、アメリカとの関係性をこのままだと良くない、対米従属を良くないと考えている人が多い印象があります。生活ではなく平和のイメージ。そこが社会民主主義が広がらなかった理由じゃないかと思います。

もちろん平和のことも大事で、だからこそ社民党が国会に必要だと思っていますが、生活のことにも取り組んでいます。衆議院選挙の立候補者の人たちもユニオンの委員長や書記次長だったり、自ら首を切られた非正規雇用の人たちだったりします。

選挙のときに取り上げたのも98%ぐらい生活のことだったと思います。だって今、本当に底が抜けるような暮らしになっていますもんね。シングルマザーの方を始め、女性が当たり前に働いて、当たり前に子どもを食べさせるだけの賃金を得ることが困難な社会を変えたいです。


――社民党が分裂したとき、どうして多くの人が立憲民主党に行ったんですか?

社民党は変わらないまま残っていて、それに合わず出ていく人がいたっていうべきかな。理由は出ていった人に聞いてもらうのがいいかもしれないですね。

ずっと社民党に残るつもりですか?

――今回、福島さんにインタビューするにあたって、政治にそんなに関心がない人や若い人たちに、社民党に対するイメージを聞いたんですけど、立憲と共産と社民の違いや立ち位置がいまいち分からないという意見がありました。

社民党は、社会民主主義が大事にした社会を作りたいという理想があります。ジェンダー平等であり、公平な税制の実現であり、労働法制がちゃんとしていて食べられる、社会保障、教育にお金を出して、生きられる。一人ぼっちになっても底が抜けて死ぬことにならないようにしようというのはわりとはっきりしているんですよ。野党共闘の中では、憲法9条を変えさせない、防衛予算よりも教育にお金を振り向けようという考えです。


――福島さんもずっと社民党に残るという感じなんですか?

日本って捨てたものじゃないと思うのは、農民運動を始めとして、無名の人々が地を這うような運動をしながらみんなでやってきた積み重ねがあることです。そういう人たちがいなかったら日本はもっとひどくなっているから。そういう運動を多く担ってきたのが、社会党、社民党なんですよね。

私は今、神奈川の県連の代表なんですが、原子力空母に反対し、もし事故が起きたら避難はどうするんですかと交渉し続ける、といった活動が大事なんですよ。社会党、社民党には各地域の思いがあって、社民党がなくなると、そういうものがなくなってしまう。それはもったいないと思っているんですよ。


――福島さんが社民党を離れてしまったら、そういう運動がなくなってしまうのがもったいないから残られたということなんですね。

社民党は、脱原発の政党なんです。私も20歳ぐらいから脱原発で、日本のほとんど全ての原発に中に視察に入っているんですね。やっぱりそういうのは大事だと思っているんです。

政治って、国会の政党の数だけと思うじゃない。でもそうじゃなくて、全国津々浦々の人たちも担っているんです。例えば山口県の上関原発は、向かいの小さな祝島の500人ぐらいのおじいちゃんおばあちゃんたちが反対している。

住民たちが故郷を守りたい、孫のためにも頑張りたい。それが政治だと思っていて、そういうものを大事にしながら、本当に泥くさくというか、草の根民主主義でやる政党は必要だと思っているんです。その思いとか歴史が大事で、それがあればまたその次に行けるじゃないですか。

昔は総理大臣も出していたんですよね?

――社民党の前身の日本社会党が55年体制で自民党と拮抗していたことは歴史で知っていますが、今の社民党が総理大臣を出すような政党だったというのが、正直想像がつかないです。なぜ、今みたいに小さくなってしまったと思いますか?

社会党は第一野党でたくさんの市民とともに、労働組合も支えてくださっていました。
ただ、労働組合が大きな連合になって、連合が民主党基軸になりました。だから社民党も非正規雇用だとか、組織化されない労働者とか、市民にもっと支持を得られる政党に生まれ変わらなくちゃいけないと思っています。


――どうして労働組合系は社民党ではなく民主党の支持に回ったんですか?

総評と同盟になって、一緒になって連合になったので、護憲の社民党よりは、大きな民主党という感じに思われたのかもしれないですが。にもかかわらず、連合の組合の中でも、社民党を応援するという組合や組合員もいます。

労働組合の組織率も17%ぐらいなので、これからは連合や全労協と一緒に運動をやりながら、労働組合を組織したり、組織されていない全ての働く人、すべての生活者、女性の味方というふうになりたいと思います。

閣議に臨む村山富市首相と橋本龍太郎副総理・通産相(いずれも当時)=1995年12月12日、国会内で
閣議に臨む村山富市首相と橋本龍太郎副総理・通産相(いずれも当時)=1995年12月12日、国会内で 出典: 朝日新聞

政権交代ってできるんですか?

――どうやったら政権交代は起きると思いますか?

選挙に行かない50%の人が、選挙に10%でも行ったら本当に変わるんですよね。だからそのことに期待をしています。政権交代が2009年に起きたときも、投票率が上がったんです。だからみんなが政治、選挙にワクワクして、自分が投票に行くことで社会が変わると思ってもらうこと。それには、まだ私たちが成功していないところが残念です。


――政党の未来予想図としてはどういうことを思い描いていらっしゃいますか?

社会民主主義と平和です。もっと女性や若者がこの社民党を担ってくれるようにと思っています。今までの活動を担っていく若い人たちをもっともっと育てたい。例えば私、みずほ塾をやっていて、いま5期目なんですが、そこから国政や自治体議員にチャレンジしたりしています。

人間は、急に明日立候補しようとは思わないじゃないですか。選挙の応援に行ったり、いろいろな講座を聞いたり、実際に自治体議員や国会議員を見て、あれなら私もできるかもしれないみたいなことが必要なので。政治を身近に感じてもらい、政治力をつけようということをずっとやっています。

国会議員のやりがいってなんですか?

――国会議員のやりがいはどんなところにありますか?

まず、法律をつくる立法ができること。これはとても大事です。2002年にドメスティックバイオレンス防止法を超党派で作ったんですね。私自身弁護士で、女性のセクシャルハラスメントやDVの事件をいっぱいやってきたので。超党派でたとえ少人数でも法律を作れるんです。

2つ目は質問ですね。例えば、給付型奨学金は、自治体にはありましたが政府はゼロでした。参議院の予算委員会で当時、馳文部科学大臣に作ってくださいと言うと、応えるんですよ。もうちょっと頑張って応えてくださいと何回か食い下がると、検討するって言ったんですよ。そうしたら次の日の朝刊1面トップが「文科省、給付型奨学金検討へ」となっていたんです。文科省の中でも議論があったのかもしれないけれども、一個の質問で変わっていくんです。そういうことがけっこうあります。


――どうして女性議員は増えないと思いますか?

政治の世界は自分とは関係ないと思うからかな。今、法律家、弁護士、裁判官、検察官はけっこう女性が増えたじゃないですか。だからこれも慣れの問題で。もしフィンランドみたいに首相が34歳で、5つの政党が全部女性党首だったら、私もやってみようと思うんじゃないでしょうか。

平和主義や脱原発、現実味あります?

――私もどちらかというと立ち位置はリベラルだと思うんですけど、リベラルがマジョリティを取れるのかということもぜひお伺いしたいです。今、中国が台頭する中で、平和主義って本当に現実的なのでしょうか。

何が現実的かというと、とにかく戦争をしない。米中の対立を軍事力で解決してはならない。日本は安保関連法で、集団的自衛権の行使でコミットするかもしれない。ミサイル防衛計画で、島が狙われて戦場になる可能性もあるわけじゃないですか。だから政治はそのためにこそある。アメリカにも中国にも意見を言わなくちゃいけない。リベラルというより、基本的人権が大事にされる社会だよね。例えば軍拡競争に日本が踏み込んでいくと、国家予算はパンクします。これも現実的な話だと思いますね。


――安全保障だけじゃなくて例えば、脱炭素についても、原発も火力もやらないとなったら、電気料金が上がったり電力不足になったりして、困っている人がより困ってしまうんじゃないかと思います。それに対してマニフェストを読んでも現実的な解が正直あると思えませんでした。弱者の味方であったり福祉の政党であることは本当に素晴らしいと思うんですけど、そこがマジョリティになれないところじゃないかと思うんですね。

原発のことで私がいま本当に恐れているのは、原発再稼働をやっていたら、原発事故が起きるのではないかということです。だから脱原発が理想だよねって抽象的に言っているのではなく、すさまじい危機感なんですよ。世界の地震の1割が日本で起きていて、活断層があるかもしれない。津波が起きるかもしれない。

もう二度と日本で原発事故を起こさないためにも、脱原発しかないと思っていて、それはものすごくリアルな話だと思っているんです。近い未来、私たちはもう一回原発事故を経験するんですかと言いたいぐらいですね。

脱炭素についても、火力発電所をすぐに全部止めますという話じゃないです。まず新規をやめてみようということです。新規の大型の火力発電所を建てないでどうやってやるかというのも、細かくシミュレーションしていて、私は可能だと思っています。そういうのをもっと丁寧に言ったらいいかもしれませんね。

批判ばかりしていると分断を招きませんか?

――リベラルの今の運動に感じているのが、批判が行きすぎると分断が起きてしまうんじゃないかということです。分断が起きないように運動を進めるために福島さんが考えていることはありますか?

確かに誰一人取り残さないといっても、何を重点に置くかで利害が対立するように見えることはあるかもしれないですね。だからポイントは話し合うことだと思います。例えば今日もそうですが、そうかそうかとお互いに詰めなくちゃいけないことがあるじゃないですか。だから違いがあっても一緒にやっていくことは大事じゃないですかね。


――若者政策についてもお伺いしたいです。政治の世界って議員も投票する人も高齢の人が多いので、今の世代にあまり向かないと思いますが、どうすれば将来の世代に意識を向けることができると思いますか?

最近、若者の政策、LGBTQとか、雇用の問題とか、大学の授業料とかは国会ですごく議論になっているので、変わりはじめてはいますね。だからできるだけ若い人たちと話をして、一緒にやりましょうとは思っています。あとは供託金を下げたり被選挙権を18歳にしたりと、議員になるハードルを下げることは意味があると思います。


――政治家の取説を教えていただきたいです。取説というのは、取り扱い説明書。若い人たちは政治家をどう使えばいいでしょうか。

私は高校生や大学生から会いたいと言われると、極力会うか、一人でもZoomで応対するようにしています。例えばLGBTについてとか、選択的夫婦別姓はなぜ進まないんですかというのを1対1でZoomでやってきたりもしています。だから、メールの回答でもいいから教えてくださいとメールを送るのはどうですか?

あとは国会議員じゃなくて、地元の自治体議員でもいいかもしれないですよ。名簿を見て、女性議員で話せそうな人に話を聞くとか。それがいいと思いますよ。


――ぜひ皆さん、福島さんの事務所に連絡をしましょう。若者は社民党にいれた方がいいでしょうか。

入れて入れて。あなたの未来に戦争がないようにします。そして教育。社民党は高校の授業料の無償化だけど、給食の有機化と無償化にも取り組んでいるんですね。大学の授業料も段階的に下げていきます。そして、みんなが全員正社員になれるわけではないですが、正社員以外の道、それから、同一価値労働同一賃金、労働法制をちゃんとしていく、最低賃金1500円以上とかを掲げているので、私は若者にちょうどぴったんこだと思っています。

関連記事

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます