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着物って作れるんだ…「自分で染めた振袖」で成人式、完成度に涙

専門学校生が伝えた「ものづくり」の素晴らしさ

着物の専門学校で学ぶ鶴居夕さんが制作した振袖。身につけて成人式に出席しました。鮮やかな海の青に白いアジサシが映えます。「どこから見ても、鳥の流れが途絶えないようにしたデザインが一番気に入っています」
着物の専門学校で学ぶ鶴居夕さんが制作した振袖。身につけて成人式に出席しました。鮮やかな海の青に白いアジサシが映えます。「どこから見ても、鳥の流れが途絶えないようにしたデザインが一番気に入っています」 出典: 鶴居夕さんのツイッター

目次

「自分で染めた振袖で成人式に出席しました!」。波の上を海鳥が舞うようすが描かれている振袖姿のツイートに、たくさんの「いいね」と、「目の覚めるような青」「すてき」といった反響が集まっています。投稿したのは専門学校で着物の制作を学んでいる鶴居夕さん。大変だったことや友人・家族の反応を聞きました。

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専門学校で制作した振袖

鶴居さんの通う着物の専門学校では、2年生のときに成人式用の振袖をつくる課程があります。

制作にとりかかったのは昨年5月ごろ。反物を選んでいるとき、波の地模様がとてもきれいで一目惚れしたそうです。

きれいなブルーに染まった生地。この反物に出会うまでは、「山吹を散らそうか」とも考えていたそうですが、波の地模様に一目惚れして全く違う絵柄になりました
きれいなブルーに染まった生地。この反物に出会うまでは、「山吹を散らそうか」とも考えていたそうですが、波の地模様に一目惚れして全く違う絵柄になりました 出典: 鶴居夕さんのツイッター

「素敵な反物とご縁があったので、海のような青い地色にして、白い海鳥を全面に飛ばそうと、すぐにイメージが広がりました」

さまざまな工程を経て完成

着物の制作にはさまざまな工程があります。反物を着物の形に生地を仮止め(仮絵羽)し、ひな型の図案を、実際のサイズにおこした下書きをもとに生地へ描き入れます。

地色を染めていく工程。友禅染めでは柄が地色に染まらないように、のりを置く作業も必要だそうです
地色を染めていく工程。友禅染めでは柄が地色に染まらないように、のりを置く作業も必要だそうです 出典: 鶴居夕さんのツイッター

反物の地色を染めて、その染色を定着させる「蒸し加工」を工房に依頼。それが戻ってきたら、鳥たちに色を乗せていきます。

最後に振袖全体が華やかになるよう金粉で描く「金彩」が施されます。

一番大変だったのはたくさん描いたアジサシ。鶴居さんは「描いていくうちに、これでいいんだっけ?と〝ゲシュタルト崩壊〟みたいになりました」と笑います。白い顔料の「胡粉」を使うと立体的な表現になるそうです
一番大変だったのはたくさん描いたアジサシ。鶴居さんは「描いていくうちに、これでいいんだっけ?と〝ゲシュタルト崩壊〟みたいになりました」と笑います。白い顔料の「胡粉」を使うと立体的な表現になるそうです 出典: 鶴居夕さんのツイッター

和裁科の学生たちが着物に仕立ててくれて、年末に手元に届きました。

「反物の状態の時は不安だったんですが、箱を開けて袖を通してみるとちゃんと振袖になっていて。助言をくれた先生方や、和裁科の子たちには感謝してもしきれないです」

「ものづくり」が好きで入学

小さな頃から「ものづくり」が好きで、絵を描いたり手を動かしたりすることが好きだったという名古屋出身の鶴居さん。

着物が好きな祖母や母の影響で、着物の制作を学ぼうと奈良の専門学校に進みました。

友禅染めや絞り染めといった「染め」や、手織り機で着物を織る「織り」、図案の描き方やグラフィックデザインを含め、着物のつくり方をいちから学んでいるそうです。

生き物を描くのが好きという鶴居さん。ザトウクジラを手織りで織り込んだ「名古屋帯」は、コンクールで賞を受けました。「古典的な織の柄ではなかったので、受賞にはびっくりしました」といいます
生き物を描くのが好きという鶴居さん。ザトウクジラを手織りで織り込んだ「名古屋帯」は、コンクールで賞を受けました。「古典的な織の柄ではなかったので、受賞にはびっくりしました」といいます 出典: 鶴居夕さんツイッター

作家名である「鶴居夕」は、お世話になった人に「お礼に着物を作ります」と持ちかけたところ、「『鶴の恩返しの夕鶴みたいだね』って言われて。それはいいなと作家名にしました」と話します。

洋服と合わせた着物コーデも

鶴居さん自身も、普段から着物を身につけて楽しんでいるといいます。

「作業が多いので、洋服と合わせたり、男ものの細い『角帯』を締めたりすることが多いです。おはしょりが苦手なので帯の中にしまっています」と笑います。

「きっちりした着付けも、フワフワのスカートやブーツなど洋服と合わせた着方も素敵。見ていて楽しい」と話す鶴居さん
「きっちりした着付けも、フワフワのスカートやブーツなど洋服と合わせた着方も素敵。見ていて楽しい」と話す鶴居さん 出典: 鶴居夕さんのツイッター

リサイクル着物など安価なものもあり、帯や小物でバリエーションが出せるので「1着でいろんな雰囲気にできる」と指摘します。

「体型が変わってもカバーしてくれるし、お手入れが簡単な着物もあります。もっと気軽に着てほしいです」

完成度の高さ、お母さんが涙

成人式では鮮やかなブルーの振袖が目立ち、友人からも褒められたそう。「自分で作ったんよ」と明かすと「作れるの!?」と驚かれたといいます。

「自分の好きなように染めた着物ですが、『きれい』『こんなの着たい』ってSNSでも声が上がって、こんなにたくさんの人が『いいね』って言ってくれて、自信につながりました」

振袖に仕立てられた鶴居さんの着物
振袖に仕立てられた鶴居さんの着物 出典: 鶴居夕さんのツイッター

着物の制作を習い始めてまだ2年目。「間近で見ると粗もあったかな」と謙遜する鶴居さんですが、お母さんは振袖の完成度の高さに思わず涙したそうです。

「『想像を超えたクオリティー。本当にすばらしい』と、着物が好きな母が言ってくれて、とてもうれしかったですね」

着物作家として、いつか自分でデザインした図案を自分の工房で染めたり織ったりできたら……。そんな夢を抱いています。

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