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ネットの話題

「ラノベみたいな鶏肉」コープさっぽろ、長すぎる惣菜タイトルの秘密

「味が伝わらない」危機感が生んだ傑作

妙に長い商品名が、意外な方向から評価されています。
妙に長い商品名が、意外な方向から評価されています。 出典: コープさっぽろ提供

目次

生活協同組合コープさっぽろ(札幌市)が販売している、惣菜シリーズの商品名が、SNS上で好評を博しています。まるでライトノベルのタイトルのように、異様に長い説明調なのです。レシピの内容を端的に表せるよう、単語だけで構成されるケースが多い中、なぜそのような判断をしたのか? 担当者に狙いを聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)

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ラベルに主張が強めな商品名

9月20日、一枚の画像がツイートされました。

写っているのは、コープさっぽろが販売している、鶏肉の半身を焼いた惣菜です。パッケージの表面に貼られたラベルには、こんな商品名が印字されています。

「小さめな鶏の半身は塩だれに漬けてから焼いている。」

商品にまつわる情報が、目いっぱい盛り込まれた、いかにも主張が強めの文面。最後に句点まで打たれ、まるで消費者に対し、製造工程を説いて聞かせているようです。

投稿主のだいきさん(@8HHwm8xpcRqaAjs)は、一般に長文のタイトルが多いライトノベルになぞらえ、ツイートに「ラノベみたいな鶏肉出版されてた」とつづりました。

「コープはどうかしてしまったのかな」「物語の結末が知りたい」。画像には当惑と驚嘆の声が連なり、4日時点で18万超の「いいね」もついています。

メッセージを24文字以内に凝縮

惣菜の名称と聞けば、「砂肝」「焼き鳥」など、レシピの本質をずばり言い当てる短文表記が思い浮かびます。戦略の意図について、企画を担当する、コープさっぽろ商品本部畜産部バイヤー・奈須野貴大さん(39)を取材しました。

コープさっぽろでは昨年2月から、「大惣菜化プロジェクト」を推進しています。各店舗で販売する農産品や水産物、畜産物などを店内で調理。できたての状態で消費者に届けるとの内容です。今回話題を呼んだ鶏肉料理も、そのラインナップの一つでした。

奈須野さんは畜産部メンバーとして、食肉の買い付けから、惣菜のメニュー考案に至るまで、一手にこなしています。プロジェクトにも関わり、同部が取り扱う商品の命名は、重要な仕事です。

「昨年のある日、店舗ごとに、売り場を視察しに行った時のことでした。読んでみても、どんな味か分からない商品名が多いと感じたんです」

「その点が消費者に伝わると、購入につながりやすいことは経験上知っていた。ネーミングを工夫しようと考えました」

奈須野さんによると、ラベルの名称部分には、システムの仕様上、最大で24文字しか入りません。字数の制約がある中、どのような情報を採り入れるべきか。検討した末、加工法や味付けが、一目で想像できる文章とすることを思い立ちます。

昨年7月に初めて手掛けたのが、「豚ホルモンの味噌(みそ)焼きです。」。買い手に予断を与えないよう、「おいしい」「柔らかい」といった、個人の感想は避けました。事実だけで構成した一文は、思いの外、好意的に受け止められたそうです。

奈須野さんが初めて手掛けた商品「豚ホルモンの味噌焼きです。」。商品の特長を、一文に凝縮した。
奈須野さんが初めて手掛けた商品「豚ホルモンの味噌焼きです。」。商品の特長を、一文に凝縮した。 出典: コープさっぽろ提供

絵文字を使う型破りなアイデア

こうしたスタンスを守りつつ、奈須野さんは、型破りなアイデアを次々と生み出します。

特に印象に残っていると話すのが、砂肝を使った商品のケースです。「絵文字が使えないか」とひらめき、「砂肝のガーリックペッパー焼きだよ∧(・Θ・)∧」と名付けました。

先例のない、まさかの「変化球」ぶりに、パッケージ画像をツイートする人が続出したといいます。

「最初は正直、こんなことやって大丈夫かな、という気持ちもありました。でも、同僚たちは『まず試してみたら』と、背中を押してくれた。結果的に、消費者に受ける表現を追求することができ、うれしく感じています」

「ラノベ風」と評される惣菜の名称を、これまでに40種類ほど編んできた奈須野さん。ただ、ライトノベルを読んだ経験はないそうです。

「今回、ツイッター上で指摘されて、初めて関連本のタイトルを見てみたんです。なるほど、と納得しました」と笑います。

絵文字を入れるという、斬新な発想が光る「砂肝のガーリックペッパー焼きだよ∧(・Θ・)∧」。SNS上を中心に、好評を得た。
絵文字を入れるという、斬新な発想が光る「砂肝のガーリックペッパー焼きだよ∧(・Θ・)∧」。SNS上を中心に、好評を得た。 出典: コープさっぽろ提供

販促用ポップまでラノベ風に

ネット上で話題が巻き起こる状況に、コープさっぽろの広報担当者も敏感に反応しました。注目を集めた鶏肉料理向けに、販促用のポップを作成したのです。

骨付き肉のイラストと、カラフルで、不揃いなサイズのフォントでつづられた商品名。その組み合わせは、まさしくラノベの表紙デザインを思わせるものです。現在、一部店舗で目にすることができます。

「バズ」の余勢を駆って作られた、「ラノベ風」の商品販促用ポップ。
「バズ」の余勢を駆って作られた、「ラノベ風」の商品販促用ポップ。 出典: コープさっぽろ提供

なお、大惣菜化プロジェクト関連商品は、道内55店舗で購入可能です(10月1日時点)。奈須野さんによると、畜産部発のメニューについて、今後2週間に1~2個のペースで、新たな名称を発表していく想定といいます。

そして自らの発想が、人々の目を楽しませていることを巡り、次のように語りました。

「たくさんの方々に、私たちの惣菜について知って頂けて、とても驚いています。お子さんから大人まで楽しめる風味となっているので、できたての味を、ぜひ楽しんで頂きたいです」

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