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お金と仕事

オムレツ屋なのに…グッズでヒット連発「本業を見失わないのがコツ」

ドレッシングに、Tシャツ…専門店を出すまでに

オムレツ屋「サンダウナー東京オムレツ」が出したオリジナルグッズ専門店
オムレツ屋「サンダウナー東京オムレツ」が出したオリジナルグッズ専門店

目次

ここ数年、飲食店でも、オリジナルのエコバッグなどを販売するお店が増えています。そんな中、逗子にオリジナルグッズだけを販売するお店を開いたオムレツ屋さんがあります。コロナ禍で厳しい状況が続く飲食店業界。なぜ、今、グッズ展開に力を入れるのでしょうか。「成功のコツは本業を見失わないこと」。セカンドブランドにかけた思いを聞きました。(ライター・安倍季実子)

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インスタでバズった逗子のオムレツ店

お話をうかがったのは、「サンダウナー東京オムレツ」のオーナー佐渡友善裕さんです。

元アパレル会社出身という異色の飲食店オーナー
元アパレル会社出身という異色の飲食店オーナー

2013年にアパレル系の会社を辞めて、知り合いからキッチンカー「東京オムレツ」を譲り受けました。その後、2017年に逗子に移住し、2019年3月にお店をオープン。

「逗子に移住したのは、生産者が農産物を直売するファーマーズマーケットで知り合った人が、逗子の海の家でバイトをしていたことがきっかけです。面白そうだったので参加してみたら見事に逗子にハマり、海の家の営業が終わると逗子ロスになってしまいました……」

「2017年の秋に移住して、それからは都内へキッチンカーの出張営業をしたり、逗子のお店で間借り営業などをしつつ、2019年に今のお店を開きました」

名物のオムレツは卵4個分、オムレツサンドには5個分を使っています。ボリューム感もあり、ついついインスタにアップしたくなります。

「ふわふわトロトロの大きなオムレツがメインだったのですが、インスタでオムレツサンドがバズり、今ではこの2つが名物になりました。お客さんの中には、サンドイッチ屋さんだと思われている人もいます」

美味しそうなオムライスとオムレツサンドが並ぶインスタ
美味しそうなオムライスとオムレツサンドが並ぶインスタ 出典:@sundownertokyoomuretsu

「オープン当初は地元の人ばかりで、中でもママさんや親子連れが多かったのですが、インスタをはじめてから若い女性の来店が増えました。ほかには、オムライスとオムレツサンドを一度に食べるデカ盛り好きの男性もいらっしゃいます」

「当初はお昼と夜に営業をしていましたが、お昼が忙しくなったので、夜の営業はやめました。今は売り切れ次第終了というスタイルです。客席が19席と少ないので、コロナ前のピーク時は裏階段に行列ができていました」

順風満帆な営業でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、業績はグッと落ち込んでしまいました。そこで乗り出したのが、テイクアウトの強化です。
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「テイクアウト、ウーバーイーツ、ヴァーチャル店舗、京浜急行電鉄が発行している『葉山女子旅きっぷ』にも参加しました。うちのお店と相性が良かったのは、テイクアウトです。スピード重視だったキッチンカー時代の経験が活かされました。ただ、テイクアウトは客単価が下がってしまうので、頭を切り替えてグッズを強化することにしました。信じられないかもしれませんが、グッズのおかげで、業績が前年よりもアップしたんです」

業績を支えたのは、サラダに使っていたドレッシングです。子どもからお年寄りまで好まれる味に仕上げた完全オリジナルで、テイクアウトの大盛りスパイシーチキンサラダにサービスとしてパウチタイプ(200ミリリットル)を付けました。

誰もが好む普段使いに向いたオリジナルドレッシング
誰もが好む普段使いに向いたオリジナルドレッシング

「コロナ前から『商品化してほしい』という声があったので、テイクアウト用のパウチを作ってインスタに投稿したら、すぐに話題になりました。夏頃にオンラインショップをはじめたら、遠方の方からも注文いただくようになり、店内での製造が追いつかなくなったので、年末に製造を外注するOEMに切り替えました」

「衛生管理の面でも安心感が持てるようになったので、やってよかったですね。そして、前々から『お土産物屋をやりたい』という希望もあったので、思い切って同じ建物の1階のテナントを借りることにしました」

グッズ専門店の名前は「THE BEST KIOSK」。平日は事務所兼倉庫として、週末はお土産物屋さんとして営業しています。 また、不定期でポップアップショップ、ワークショップ、アーティストの作品展なども開催しています。

アパレルグッズが多い理由

店内には、ドレッシング以外にも、オリジナルTシャツやキャップといったアパレルグッズが多数並びます。また、お土産物らしくステッカーやキーチェーン、それに湘南に住むアーティストとコラボしたアイテムなども。

「キッチンカー時代に知り合ったデザイナーさんに協力してもらって、スタッフ用のTシャツを作ったのですが、予想以上に出来が良かったのでグッズとして販売するようになりました。今ではデザインが5種類に増え、シーズンごとにTシャツやスウェットなどのアイテム違いで展開しています」

「この辺りは海文化が強いのかもしれません。海が近いから普段着はとてもカジュアルで、GWから11月くらいまではビーサンをはいているのが普通です。男性もTシャツ、ショートパンツ、ビーサンというスタイルがほとんどなので、Tシャツは何枚あっても困りません。どうせ作るのなら、僕自身も普段から使えるものがよかったので、グッズもアパレル系が多くなったのかもしれません」

「ちなみに、オムレツのワンポイントがついた靴下は、Tシャツほどの人気はありませんが、面白いものが好きな人やちょっとしたプレゼントとして購入されます(笑)」

たくさんのアパレルグッズが並ぶ「THE BEST KIOSK」店内
たくさんのアパレルグッズが並ぶ「THE BEST KIOSK」店内

海に面しているという立地に加えて、お土産需要にもマッチしたグッズ作りを意識しているといいます。

また、デザインへのこだわりが強く、それぞれに思い入れがあるという佐渡友さん。最新のサップガールというキャラクターは、今シーズンの初サップ(スタンドアップパドルボード)の時に着たいと思ったのがきっかけだそうです。

「サーフィンをモチーフにしたTシャツはあるけど、サップモチーフというのはありません。逗子ならではという感じも出したかったので、山の向こうに太陽が沈む大崎公園をバックに女の子がサップを楽しんでいるデザインにしました。また、実用性もある方がいいなと思ったので、生地は濡れてもすぐに乾くドライフィット素材にしました」

「どこかでバズればいいな」という気持ちもありつつ、完成したTシャツを着てサップクラブに行くと、まずはインストラクターさんに気に入られ、そこから生徒さんの間で話題になり、口コミで一般の人たちも買ってくれるようになったといいます。

思わぬヒット商品が誕生しましたが、あくまでも基本はオムレツ屋さんなので、グッズの拡大には慎重です。

「グッズは見込みでは作らず、売れた分だけ足すように作っているので、在庫を抱えることは少ないですね。また、デザインを増やしすぎないこともポイントだと思います。デザインを増やすと、シーズンごとに考える必要が出てきますし、棚卸なども大変になりますが、デザイン数を絞っていれば、そういったことで悩まされることはありません。また、アイテム違いやカラー違いで展開することで、バリエーションがあるように見えますし、こちら側の管理もしやすいというのもあります」

「作りすぎない」ことを重視しつつも、「売り逃しはしょうがない」とも考えているそうです。

「店舗をポップアップショップとして貸し出しして、自社商品を販売できない週もあるので、月によってのバラつきが出るのは仕方ないと思っています。それに、本業はあくまでも飲食業です。うちのお店の場合は、オリジナルドレッシングが強みになって製品化、オンラインショップ、グッズ専門店とステップアップできました。もし、これからお店のオリジナルグッズを作ろうと考えているのなら、本業よりもグッズ販売に力を入れていないか、振り返ってみてほしいですね。まずはお店オリジナルの強みを作り、それからグッズを展開していくという方法がいいと思います」

地に足の着いた考えあってこそ――取材を終えて

昨年の新型コロナウイルス感染拡大によって、一時は市販のマスクの供給が追い付かなくなり、布製のハンドメイドマスクが激増しました。それを追うように、飲食店をはじめ様々な業種でも、オリジナルグッズとしてのマスク販売が増加しました。

一方、流行の波に乗っただけで、今はもう販売していないお店もあります。お店のオンラインショップでは、長期にわたって「未入荷」なままというケースも……。そういったことからも、オリジナルグッズの立ち位置には、ややあいまいな印象がありました。

そんな中、「サンダウナー東京オムレツ」では、オリジナルグッズだけを販売する店舗をかまえ、セカンドブランドとしてしっかりと継続しています。さらに、本業のオムレツ屋に支障を来たさない範囲以内で、なおかつ逗子という立地や気候にあったものという考えを大切にしています。

佐渡友さんは「もともと都内に住んでいたから、地元の人には当たり前になっていて気づかない逗子の良さがわかる」と強調します。

その言葉通り、客観的な視点とローカルな視点を持っているから、正しい分析ができ、それを商品作りに活かせているのでしょう。

多くの飲食店にとってグッズ販売は未知の分野への挑戦ですが、地に足の着いた考えがあったからこそ「THE BEST KIOSK」を自走可能なセカンドブランドを育てることができたのだと思いました。

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