ネットの話題
「迫力があるのを選抜しました」天王寺動物園の〝攻めすぎ〟ポスター
ガチ怪獣とコラボして伝えたかったこと
大阪市天王寺区の天王寺動物園が、園内に貼り出しているポスターに、SNSユーザーの注目が集まっています。人気映画のパロディーを思わせるように、展示動物の写真を並べた構図が、「センスの塊や」と好評です。「まさに大阪のノリ」と話題の一枚が生まれた背景について、取材しました。(withnews編集部・神戸郁人)
人々の目を楽しませているのは、ハリウッド発の怪獣映画「ゴジラvsコング」とコラボしたポスターです。劇場掲出用の公式デザインと、動物園のオリジナルバージョンが、上下に並んでいます。
上側に描かれているのは映画のメインビジュアルです。口を開き、今にも激突しようとするゴジラとコング。「地球最大の究極対決」「人類の味方か、人類の脅威か。果たして、この最強対決の勝者は――」との煽り文句もあしらわれています。
下側に目を移すと、キリン・ヒガシクロサイ・ジャガー・ドリル・カバと、5種類の動物の写真が横一線に並んでいます。いずれも、天王寺動物園で暮らす生き物です。国内では、同園のみが展示する希少種が含まれています。
そして「天王寺動物園 再開園!」との告知と共に、劇場用ポスターのオマージュとみられる、こんなコピーが挿入されているのです。
「これはセンスの塊や」「最終的には太陽の塔と戦いそう」「まさに大阪のノリ」。今年7月以降、園内で撮影したと思われる画像がSNS上に出回るたび、好意的なコメントが寄せられました。
このポスターは、天王寺動物園と、関西地方で「ゴジラvsコング」のプロモーションを担当するTOHOマーケティングと連携し、制作したものです。実現の経緯について、園の担当者に聞きました。
担当者によれば、TOHOマーケティング関西営業所(大阪市北区)が企画を立案。園側に協力を打診し、施設のPRにもつながるとして、タイアップが決定したといいます。
しかし、完成までの道のりは、決して平坦なものではありませんでした。
政府は今年4月25日~6月20日、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、三度目となる緊急事態宣言を発出します。園が位置する大阪府も対象地域となったため、大半が適用期間と一致する4月24日~6月21日、一時的に休業しました。
一方、世情を踏まえ、5月14日に封切り予定だった映画の公開日も、7月2日へと延期されます。こうした状況を受け、コラボポスターの制作が本格化したのは、園の営業再開時期が決まってからだったそうです。
「当園では動物を第一に、日々飼育などを行っております。動物の姿を通じて、自然界について考えるきっかけになってほしい。そのような思いから、オリジナルバージョンのコピーには、園長のアイデアを採用しました」
「また映画のビジュアルとコラボする形で、園内にいる動物たちの中から、迫力のある生き物を選抜し紹介することにしました」
ポスターは7月25日以降、動物園周辺の歩道上に6カ所、施設のゲート・園内にそれぞれ2カ所ずつ掲示されています。
これまでにも天王寺動物園では、夜間に動物たちの飼育舎を巡る「ナイトZOO」など、動物の展示・生態研究の分野において、ユニークな取り組みを行ってきました。
担当者は、ポスターが話題になったことで、こうした施策にも光が当たって欲しいと考えているそうです。
「新型コロナウイルス感染症の影響により、なかなか天王寺動物園にご来園頂けない方にも、少しでも明るい話題をお届けしたいです。そして園内の動物や、園の取り組みについて、見て頂くきっかけになれば、と思っています」
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