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連載

#12 ゴールキーパーは知っている

韓国から来た心優しき守護神 川崎の鄭成龍、グローブにあしらう決意

「キーパーをやりたい選手出てきて」

川崎のGK鄭成龍
川崎のGK鄭成龍 出典: 等々力競技場、加藤諒撮影

目次

川崎フロンターレの守護神、鄭成龍(チョンソンリョン)が今季、Jリーグで使うグローブには、クラブカラーの水色とこれまで獲得したタイトルを表す5つの星があしらわれている。「僕はすごい、星が好き。毎年、プラスして1個つけたい」。韓国から来日し、6季目。チーム最年長として首位を走るクラブを最後尾から支える。

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「100%出られる保証はない」

「川崎は攻撃力が注目されるが、守備も悪くないチーム。相手のチャンスに対しても、常に準備し続けることを心がけている」
オンラインで取材に応じた鄭成龍はいう。

5月16日の札幌戦では決定的なFKを止め、無失点での勝利に貢献。「チームに勢いを与えられるようにやっている」と安定感のあるプレーを見せてきた。

セレッソ大阪の金鎮鉉、柏レイソルの金承奎……。Jリーグにおける韓国人GKの躍進は、メディアなどでも取り上げられてきた。韓国でのGK人気は「昔よりは上がったと思う」という。

ただ、韓国のゴールキーパーのレベルが高いのでは?という問いには、きっぱりという。

「全員が全員、出ているわけではない。韓国ではまだいないが、日本は欧州に進出しているキーパーもいる。日本にきて、100%出られる保証はない。それほど、日本選手もレベルアップしていると思う」

川崎のGK鄭成龍=2019年7月
川崎のGK鄭成龍=2019年7月

キックのクオリティを意識

来日6季目。実際に、自らも川崎が求めるスタイルに適応し、成長してきた。

川崎のDFラインはコンパクトに保たれる。その裏をカバーするのは、GKの仕事だ。

「昨年から監督からの指示で、(チームとして)より攻撃的に前からいく。DFの後ろのスペースができているので、オニさん(鬼木監督)からは『チャレンジしろ』といわれている。ピンチになるまえに未然に防ぐように意識をしています」

キックのクオリティを高くすることも意識し、心がけてきたことの一つだ。

「昨年くらいから、(ボールを受ける前に)前もって見ておくことが大事だと感じています。トライ、チャレンジをしている。後ろのカバー、クロスの飛び出しはまだまだ足りないし、伸びる部分。そういう部分にはチャレンジし続けている」

韓国代表としてゴールを守る鄭成龍=ロイター
韓国代表としてゴールを守る鄭成龍=ロイター

人柄には太鼓判「ただのいいお兄ちゃん(笑)」

チームメートが口にするのは、その人柄と適応能力の高さだ。食事をともにし、ときに日本語も交えて会話する。

かつて川崎でチームメートだったGKの新井章太(ジェフユナイテッド市原・千葉)は「いつもごはんに誘ってくれて、コミュニケーションをとってくれる。本当に、ただのいいお兄ちゃん(笑)。ライバルだったが、ピッチで学んだことは宝物」と語る。

大切にしているのは、個人ではなく、チームとして戦う考え方だ。

ゴールキーパーは基本的に4人。元日本代表の菊池新吉コーチのもとで、切磋琢磨を重ねる。

「試合に出るGKが、GKの代表としてピッチに立つ責任を持っている。フィールドは20人いるが、GKは4人しかいない。誰が出ても最善を尽くせるよう、100%の力を出せるように準備をしている」

新井章太、藤嶋栄介(現山形)、高木駿、ポープ・ウィリアム(現大分)……。しれつな競争の成果か、川崎を巣立った選手たちは、今、所属先でレギュラーをつかんでいるケースも多い。

「良い環境、良いコーチのもとで練習することが大事。良い意味で、川崎を踏み台にしてステップアップしている。新吉さんは経験豊富。1人1人の選手にとっていいアドバイスをくれる」

2018年のJリーグベストイレブンを受賞した鄭成龍(上段左)
2018年のJリーグベストイレブンを受賞した鄭成龍(上段左)

心優しき守護神の責任感、プライド

2018、2020年とベストイレブンを受賞。Jリーグですでに150試合以上に出場してきた。

心優しき守護神に、GKをやっている子へのメッセージを聞くと、そのプレースタイルへの思いが伝わってきた。

「キーパーというポジションは一つしかないし、キーパーは勝利につながるプレーヤー。勝ち点ゼロを1にもできるし、1を3にもできるポジション。責任感、プライドをもってやることが大事だと思っています」

星のついたグローブでゴールを守る川崎のGK鄭成龍
星のついたグローブでゴールを守る川崎のGK鄭成龍 出典: 朝日新聞社

思わぬ申し出――取材を終えて

「このグローブ、プレゼントしましょうか」

取材を終えた守護神から出たのは、思わぬ一言だった。

日本プロサッカー選手会に所属するGKが立ち上げた「ONE1―GK」プロジェクトに共感し、「すごくいいプロジェクト。僕もフォローしているし、刺激になる。ずっと続けることで若い選手がどんどん出てくれればいい」と語ってくれた。

自身も、韓国代表の先輩GKに憧れた経験を話してくれた。

98年フランス、2002年日韓W杯で韓国代表のGKだった金秉址。長い後ろ髪がトレードマークで、背が低かったことや家庭事情から高校でサッカーをあきらめかけたが、そこからはい上がったひとだ。

高校1年生のとき、その金秉址から同じグローブをもらった。「そのときの感動はすごく覚えています。これをつけたら、もっとうまくなれる、もっとすごいキーパーになれるんじゃないか、と思った」

高校生の時、日韓W杯の前にあった親善試合の韓国―イングランド戦で、ボールボーイをした。そうした憧れや体験が今のプレーにつながっているのだという。

韓国でGKは「2002年のW杯での活躍をみて増えたと思うが、まだ日本よりは少ない。サッカー人口も韓国のほうが少ない」と鄭成龍。「キーパーをやりたい選手がたくさん出てくれれば」。その思いの強さを感じた。


クラブカラーがあしらわれている鄭成龍選手のキーパーグローブを抽選で1名にプレゼントします。締め切りは7月17日(金)。withnewsのアカウント(@withnewsjp)をフォローしていただき、動画をの感想を「#ゴールキーパーは知っている」をつけてリツイートした上で、DMで応募してください。

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