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政治家の行きつけはどんな店?寿司・割烹とともに居酒屋も常連の大臣

同じものを食べてみれば、意外と身近に感じられるかも?

スープが絶品のもつ鍋をオーダーする大臣とは……
スープが絶品のもつ鍋をオーダーする大臣とは……

目次

いつもスーツに身をつつみ、襟には議員バッジが光る――。テレビや新聞で見る政治家は、なんとなく私たちとは別世界の住人のように感じます。そんな政治家たちのメディアには取り上げられない姿を垣間見られるのが、総務省が例年公開する政治資金収支報告書。めくってみると、政治家たちの1年間の活動ぶりが見て取れます。特に飲食店は、それぞれにこだわりが……。朝日新聞が独自に集計したランキングを基に政治家に愛される飲食店を訪ねてみました。(朝日新聞盛岡総局・御船紗子、さいたま総局・山口啓太、東京社会部・中野浩至、北澤拓也)

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政治家の行動、収支報告書に

そもそも、政治資金収支報告書ってご存じでしょうか。政党や政治家の後援会などの政治団体が1年間に行った収入・支出が記されている文書で、総務省や都道府県の選挙管理委員会が例年公開しています。私は記者になるまで存在すら知りませんでした。

これを読み解いてみると、人によっては支出の欄に「会合費」や「飲食費」名義で食事につかった支出の内訳が記されています。支出先を見れば、どこで食事したかもわかるという仕組みです。

地元の味覚が食べたくて

衆議院議員会館からは歩いて約650メートルと近い。
衆議院議員会館からは歩いて約650メートルと近い。

まず訪れたのは東京都港区赤坂にある居酒屋「よかろう門」。31歳の店長が経営しており、店内にはジャニーズや力士など、各界の著名人からのサインが並びます。政治家では、立憲民主党の蓮舫氏や元SPEEDで自民党の今井絵里子氏らのサインがあります。

この店は総務相の武田良太氏が行きつけで、2018年~19年に28回、計199万4190円を支出していました。武田氏のサインは直筆の達磨大師の絵とともに、店の入り口近くに飾ってありました。寿司(145回、828万6936円)や割烹(61回、1030万8060円)に支出が集中するなか、居酒屋のよかろう門は1店舗だけで28回、199万4190円の利用があります。

中央の2枚が武田良太総務相の絵(上)とサイン(下)
中央の2枚が武田良太総務相の絵(上)とサイン(下)

まずいただいたのは「もつの甘辛あげ」(400円)。もつを丸く串揚げにして、甘辛いタレがかかっています。

熱々のもつをかむとカリッと音がして、中から旨味たっぷりのあぶらが口いっぱいに広がりました。これは、お酒に合う。ついレモンサワーが進みます。

「もつの甘辛あげ」は、タレがもつに絡んで絶妙な味わい。
「もつの甘辛あげ」は、タレがもつに絡んで絶妙な味わい。

店長の日永田航希さんによると、武田氏は多いときで月2、3回やってくるそう。5年前に偶然来店したのがきっかけといい、今では「注文される前になにが欲しいかわかる」といいます。

武田氏がいつも頼むのは、「若鶏のからあげ」(1000円)と串料理の「豚バラ」「しそ巻き」(各280円)、それに看板メニューのもつ鍋「よかろう門 しょうゆ味」(1780円)。公務で忙しいときには秘書がテイクアウトしたり、一度は議員宿舎までデリバリーしたこともあるそうです。

もつ鍋はスープが絶品。
もつ鍋はスープが絶品。

シークレットメニューも

そんな日永田さんは、武田氏と同じ福岡県出身です。武田氏が店に来るときには、こっそり用意する専用メニューがあるといいます。

筑豊の珍味「塩くじら」
筑豊の珍味「塩くじら」

それがこの「塩くじら」。クジラを塩漬けにしたもので、武田氏の地元・筑豊のローカルフードです。

クジラの旨味がする一方、かなり塩辛いため、同席した秘書や議員はあまり食べません。それでも武田氏は「うまかろうが!」といつもよろこんで口にしているといいます。「地元の懐かしい味を用意したり、欲しいものを察したり。店にいる間は居心地がいいように工夫しています」

もつ鍋のスープは冬の冷えた体に染み渡るしょうゆ味で、飲んだ後は満足感に包まれました。議員宿舎から近く、地元の味を東京で味わえる店につい足を運んでしまう武田氏の気持ちが少し、わかるような気がしました。

大皿ではばたく鳥

もう1店舗、取材を受けてくれたところがあります。同じ赤坂の「赤坂四川飯店」です。50年近く東京で営業をつづけており、現在の店舗は自民党本部から約250メートルの距離にあります。

ランキングの集計では、加藤勝信官房長官をはじめ7人の閣僚が計70万8770円の支出をしていました。与野党問わず、多くの議員が利用するといい、一番多いのは8千円~1万2千円のコースとのことでした。ちょっと面くらいましたが、勇気を出して1万円のコースをお願いしました。

回転テーブルを見ただけでテンションが上がってしまいました。
回転テーブルを見ただけでテンションが上がってしまいました。

ランチタイムに予約し、店へ行くと個室に通してもらえました。テーブルの上に回転テーブルが載っています。本物だ……。前菜のあとにスープ、ホタテを使った料理が出されました。どれも、食事が終わったタイミングを見計らって次の料理が運ばれてきます。

料理は牛肉がやわらかくて、夢中で食べてしまいました。
料理は牛肉がやわらかくて、夢中で食べてしまいました。

思わず声を上げてしまったのがこちら。牛肉の炒め物ですが、大皿の上には花が咲き乱れ、鳥が羽ばたいています。よく見るとどれも野菜を切ってつくられた飾りで、土台はダイコンでできています。こうした飾りは基本的に、食事が終わるまで食卓に飾られるそうです。

各料理はそれぞれ見せ方にも工夫が凝らされています。客が大皿の盛り付けを目で楽しんだ後、それぞれに取り分けられます。「(政治家の)先生方は忙しい方が多いので、『いいから取り分けて』とうときには最初から取り分けて出すこともあります」とウェイターさん。なんだか少しもったいないような気もします。

とりあえず麻婆!

香辛料の香りだけでご飯がたべられそうです。
香辛料の香りだけでご飯がたべられそうです。

6品目で満を持して、四川料理の代名詞ともいえる麻婆豆腐が登場しました。香辛料の香りと赤色が食欲をそそります。よそってもらった白米の上に乗せてぱくり。山椒のしびれが口いっぱいに広がって、いくらでもご飯が食べられそうです。

鈴木広明・総料理長(56)によると、議員によっては時間がないため、コースの最初でも先に麻婆豆腐を出してもらい、かきこんで出て行ってしまうこともあるそう。「ゆっくり食事もできず気の毒」だと感じています。

最近は新型コロナの影響で来店頻度も減りましたが、党本部での会議に弁当の注文がよく入るようになったといいます。大抵は麻婆豆腐の入った弁当が選ばれるそうです。「自民党員ならみんな、うちの麻婆豆腐を知っているんじゃないかな」

政治はおいしい食事から?

ランキングを起点に、比較的大衆向けの居酒屋と高級な中華料理店で実食することができました。飲食店としての性質は大きく異なる両者ですが、料理へのこだわりや客への気遣いなど、共通点も少なくありません。なにより、店長や総料理長の話からは政治家がいかに店へ愛着をもっているかが伝わってきました。

一方、忘れてはならないのが、政治資金収支報告書に記されている支出の一部は国費である政党交付金でまかなわれているということ。ランキング上位には高級ホテルや寿司店が並びます。わたしたちの税金が適切な使われ方をされるよう期待します。

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