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まつもと泉さんの訃報、イタリア人も嘆き「私たちにとって特別」

「夏とともに、あの青春を思い出すことができる」

ダリオさんが大切に持っているイタリア語版の「きまぐれオレンジ★ロード」。
「Like or Love?(LikeとLove、どっち?)」と問いかけ、気持ちを確かめ合ったラストシーン。原作とは二人の位置が逆
ダリオさんが大切に持っているイタリア語版の「きまぐれオレンジ★ロード」。
「Like or Love?(LikeとLove、どっち?)」と問いかけ、気持ちを確かめ合ったラストシーン。原作とは二人の位置が逆 出典: ダリオさん提供

目次

1980年代に人気を博した「きまぐれオレンジ★ロード」で知られた漫画家・まつもと泉さんの訃報は、日本だけでなく、海外のファンにも衝撃を与えました。「私たちイタリア人にとって、この漫画は特別なんです」と哀悼の意を表したツイッターの投稿が注目を集めました。投稿した人に話を聞きました。

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1万件以上の「いいね」

反響を呼んだのは、ダリオ・ロテッリさん(@dario_rotelli)のツイートです。

「今月の6日、きまぐれオレンジロードの漫画家、まつもと泉先生が亡くなりました。

私たちイタリア人にとって、この漫画は特別なんです。

初めてイタリアで出版されたラブコメディーで、とても愛される。

私も子供の頃から大ファンです。

色々な思いでありがとうございます!
ご冥福をお祈りします。」


主人公で超能力を持つ青年恭介と、ヒロインで不良美少女まどかが結ばれるラストシーンとともに投稿されたツイートには、「イタリアの方にとっても青春を刻んだ作品だったんですね」「イタリアでも愛されていると知ってうれしい」など反響が集まり、1万件以上の「いいね」がつきました。

「私の夏が終わった」

投稿したダリオさんに連絡をとると、イタリアのローマから、インタビューに答えてくれました。
ダリオさんはイタリアの出版社に勤務する漫画翻訳者でした。

留学や仕事のため通算2年、日本に暮らしていましたが、今年2月、新型コロナウイルスの影響でイタリアに帰国したばかりでした。

訃報を知ったのはイタリア時間で12日午後10時ごろ。たまに寄稿していた、アニメ専門のウェブメディアの編集長に「まつもと泉先生が亡くなった」と聞きました。

長く闘病をしていたことは知っていましたが、深い悲しみに襲われたというダリオさん。「僕の青春そのものでしたから」と振り返ります。

悲しみの中でダリオさんが書き上げたイタリア語の訃報も、イタリアのファンの間でも瞬時に広がり、「初めて買った漫画でした」「鮎川まどかはこれまでで最高の女性キャラクターの一人」「私の夏が終わった」などのコメントがつきました。

記事について紹介するツイート
記事について紹介するツイート 出典:ダリオさんのtwitter

買った日のことも鮮明に

イタリアでは漫画よりもアニメ版の放映で人気に火がつきました。

イタリアではアニメのタイトルも「ジョニー、ほとんど魔法だね」として知られました。

超能力を持つ主人公の春日恭介は、アメリカ風の名前「ジョニー」に。ヒロインの鮎川まどかは当時の人気歌手と同じ名前「サブリナ」。三角関係を演じる檜山ひかるは「ティネッタ」。

最初のアニメ放映時は、ダリオさんはまだ2歳でしたが、高校生になったとき、アニメが再放送されて、夢中になりました。「ちょうど、私が恭介たちと同じ世代になったときでした。思春期の若者の気持ちがとてもよく表されていた。誰もが、ヒロインの鮎川に夢中になりました」

幼い頃に読んだ漫画はディズニー漫画。中学生で、日本の漫画「ドラゴンボール」や「セーラームーン」にはまったというダリオさん。
恋愛に少し背伸びしたい時期、現れたのがオレンジロードでした。

そこに描かれている若者たちの生活は、ロック音楽を聴いたり、映画を観たり。
欧米の若者にも通じる世界でした。

80年代の漫画でしたが、「描かれていた少年少女の感情は時代を経ても古くならない。私たちと同じで、わくわくドキドキしました」。

キオスクで漫画を買った日のこと。友達と一緒に読んだこと。「なんで俺には鮎川みたいなセクシーな彼女がいないんだろう」と思ったこと。
「全部、鮮明に覚えています」

ダリオさんが繰り返し読んでいるイタリア語版の「きまぐれオレンジ★ロード」。「Like or Love?(LikeとLove、どっち?)」と問いかけ、気持ちを確かめ合ったラストシーン。日本の漫画が右から左に読むのに対し、反対にするため、イタリアでは当時は絵も反転させていたとのこと。原作とは、恭介とまどかの位置が逆です=ダリオさん提供
ダリオさんが繰り返し読んでいるイタリア語版の「きまぐれオレンジ★ロード」。
「Like or Love?(LikeとLove、どっち?)」と問いかけ、気持ちを確かめ合ったラストシーン。日本の漫画が右から左に読むのに対し、反対にするため、イタリアでは当時は絵も反転させていたとのこと。原作とは、恭介とまどかの位置が逆です=ダリオさん提供

夏は『思い出の季節』へ

ツイッターで一緒に投稿したラストシーンは、今も大切に持っているイタリア語版の漫画を、数年前に読み返したときに、写したものでした。

「今でも夏が来ると、オレンジロードを読みたくなるんです」

それはラストシーンに添えられたまつもと泉さんの言葉が印象的だったからだといいます。

「たとえれば夏 いくら年月が流れても きっとぼくらはこの『季節』を忘れないだろう(中略)それは単に過ぎゆく季節ではなく ともに過ごした永遠の夏の時代」

ダリオさんは「夏は大人になっても、毎年巡ってきます。夏とともに、あの青春を思い出すことができる。夏は『思い出の季節』なんです」と話します。

「きまぐれオレンジ★ロード」のイタリア語版を持つダリオさん。「このカバーが特に好きです」という=ダリオさん提供
「きまぐれオレンジ★ロード」のイタリア語版を持つダリオさん。「このカバーが特に好きです」という=ダリオさん提供

高校時代、オレンジロードや、あだち充さんの野球漫画「タッチ」に夢中になったダリオさんは、大学で日本語や東洋文化を専攻。留学を経て、夢だった「漫画の翻訳者」になりました。

漫画の翻訳には、日本語の知識だけではなく、シーンに描かれる日本の流行や方言、ギャグなど、さまざまな文化への理解が必要になります。「それが、私にとっては面白いチャレンジなんです」とダリオさん。

働いている出版社は、社長も日本の昭和の漫画が大好きだといいます。
今は、漫画家多田かおるさんの80年代の作品「愛してナイト」を翻訳しています。

「まだまだイタリアでは知られていない、日本で愛されてきた作品がたくさんあります。翻訳して素晴らしい作品を紹介していけたらと思っています」

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